新聞を読まない理由をさぐる
・新聞を読まない人の読まない理由のトップは「テレビやインターネットなど他の情報(源)で十分だから」。73.7%の人が該当。
・「新聞を取っていない」「新聞は高い・お金がかかる」などが新聞を読まない理由としては続く。
・18歳から60代までは「テレビやインターネットなど他の情報(源)で十分だから」との意見が過半数。
情報取得が可能なメディアの多様化による相対的な優先順位の低下、配信する情報の信頼性における問題、購入機会の減少など複数の環境的・内部的要因により、紙媒体の新聞は少しずつその購読率・閲読率を低下させつつある。それでは具体的に、新聞を読んでいない人はいかなる理由で読まないのだろうか。新聞通信調査会が2018年1月に発表した「メディアに関する世論調査」(※)の結果から確認する。
今調査対象母集団において頻度は問わず、朝刊・夕刊まで含めた新聞を読んでいる人は68.9%。さらに無回答者をのぞくと31.0%が新聞を読んでいない計算になる。その新聞非閲読者に、なぜ新聞を読まないかに関して尋ねたところ、直近の2017年度では「テレビやインターネットなど他の情報(源)で十分だから」とする意見がもっとも多く、73.7%に達することとなった。
次いで多いのはそもそも論として「新聞を取っていない」で44.6%。もちろん自宅で新聞を定期購読契約していなくても、通勤や通学中に購入したり、職場や学校、図書館などで読む機会は得られるが、元々読みたいとの気持ちがさほど無く、積極的に行動して読む気が起きないといったところか(「新聞を読みたい」との気持ちが強いものであれば、新聞を購読しているはず)。
次いで「新聞は高い・お金がかかる」が入っているが、元々新聞は有料で購読するものであることを考えると、自分が支払ってもよいと考えている対価以上の価格である、読みたい気持ちはあるが支払う金額分ほどの価値は見いだせ無いなどが、具体的な理由だろう。
単純比較できる期間内で経年推移を見ると、唯一漸増しているように見えるのが「テレビやインターネットなど他の情報で十分」(ここ1、2年はやや減少したが)。代替されうるメディアの有益性が漸次増加し、新聞離れが進んでいると読むことができる。
もっとも、例えば「新聞を読む習慣が無い」ので「新聞を取っていない」、「新聞は高い・お金がかかる」から「新聞を取っていない」、元々「新聞を取っていない」ので「新聞を読む習慣が無い」など、複数の項目が重なって新聞非閲読者になっている可能性はある。例えば「テレビやインターネットなど他の情報で十分」な情報は取得できるので、新聞から得られる情報に価値を見いだせず、相対的に「新聞は高い・お金がかかる」と判断せざるを得ない。また、テレビやネットで時間を取られて「新聞を読む時間が無い」ので「新聞を取っていない」から新聞を読まない、といったパターンの人も多数いるに違いない。この連動性の問題は、複数回答形式の結果でも実態を見極めることは不可能。
回答項目のうち上位回答率を示したものについて、直近年度分に関して属性別で仕切り分けした結果が次のグラフ。
未成年は自分で新聞を買う機会があまり無く、世帯単位で定期購読している、保護者が持ち帰った新聞を読む機会が多いからか、「新聞は高い・お金がかかる」との回答はほとんど無い。しかし20代以降は自分が世帯主になる場合も多々あることから、コストを理由に挙げる人が多くなる。「テレビやインターネットなど他の情報で十分」の回答率の動向もほぼコストの理由に連動しており、インターネットなどの他メディアからの情報との比較による相対的な立ち位置の低下に伴うコストパフォーマンスの低下が、新聞離れを引き起こしたものと考えられる。
他方、「新聞を取っていない」人の回答率は年とともに漸増し、60代で58.0%にも達する。元々新聞を取っていない、取らなくなった理由は「新聞は高い・お金がかかる」「テレビやインターネットなど他の情報で十分」など多彩なものだったのだろうが、回答時点ではすでにその理由自身は小さなものとなり、新聞を取っていないという状況そのものが当たり前になったため、読む価値すら見いだせなくなったのだろう(新聞を定期購読していなくても、新聞を読む機会はあることに注意。「取っていない」とは基本として「定期購読をしていない」を意味する)。
現時点では新聞を閲読しない人のうち、60代までは主にテレビやインターネットの情報で十分で新聞を読む必要が無いとする人が過半数を占めている。20代から60代以下に限れば7割を超えている。今後さらにインターネットを利用する人が増えるに連れて、テレビやインターネットの情報で十分だから、紙媒体の新聞を取らない人も増えていくと考えられよう。
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※メディアに関する世論調査
直近分となる第10回は2017年11月2日から11月21日にかけて住民基本台帳からの層化二段無作為抽出法によって抽出された18歳以上の男女個人5000人に対して、専門調査員による訪問留置法によって行われたもので、有効回答数は3169人。有効回答者の属性は男性1526人・女性1643人、18~19歳63人・20代274人・30代422人・40代567人・50代504人・60代601人・70代以上738人。過去の調査もほぼ同じ条件で行われている。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。