レオナルド、イグアイン、マルディーニ…「偉大で美しいミランが生まれつつある」?
ミランのサポーターは、これほど短期間でワクワクできるようになるとは思わなかっただろう。
アメリカのヘッジファンド「エリオット」が“チャイナミラン”から経営権を取得したのは、7月上旬のこと。ヨーロッパリーグ(EL)出場権をはく奪され、先行き不透明感に包まれていた。
◆朗報続きの1カ月
それから1カ月でムードは一変した。資金力が確かなエリオットが中期経営を確約し、まずはスポーツ仲裁裁判所に提訴が認められ、EL出場権を取り戻す。さらに、パオロ・スカローニが会長となり、レオナルドが復帰。「ミラニスタによるミラン」というコンセプトのもと、立て直しが進んでいく。
敏腕ディレクターはすぐにファンを沸かせた。古巣ユヴェントスへの復帰を望んだレオナルド・ボヌッチを放出。代わりに王者からゴンサロ・イグアインを獲得し、補強必須ポジションにビッグネームを加えると、同時にマッティア・カルダーラというイタリア期待の若手も手に入れた。
8月に入ってもビッグニュースが続く。パオロ・マルディーニの9年ぶりのクラブ復帰だ。盟友レオナルドの尽力で、これまでバルバラ・ベルルスコーニや“チャイナミラン”が口説き落とせなかったレジェンドの復帰があっさりと決まった。
◆バンディエーラの影響力
引退以降、現場から遠ざかっていたマルディーニだけに、経験不足は否めない。具体的な役割もまだ明確でなく、どれだけ貢献できるようになるかは未知数だ。だが、現在のサッカー界でほとんど見られなくなった「バンディエーラ(旗頭)」は、その存在だけで大きな影響を及ぼすに違いない。
マリオ・スコンチェルティ記者は、『コッリエレ・デッラ・セーラ』で「マルディーニはシンボルの永遠性を代表する存在だ。財政や結果をも上回る高さで舞う。マルディーニがいる、このアイデンティティーの中に、全ミランが戻ってくる」と記している。
かつてマルディーニから腕章を引き継いだマッシモ・アンブロジーニは、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』で、初めて会ったときに「生まれもってのカリスマ性を感じた」と、その存在感を強調した。
「彼がいるだけで、ベストを尽くそうという刺激になった。パオロが特別な理由はシンプルで、それは彼だから。サッカーの能力だけでなく、常に基準点だった。真面目でプロフェッショナル、競争心にあふれ、常にベストでいることを望んだ」
アンブロジーニは、自らの経験から「マルディーニがいれば守られていると感じる。素晴らしい気分だ」と、ミランの選手たちが恩恵を受けるのは確かと太鼓判を押している。
◆警鐘を鳴らしつつも高まる期待
もちろん、サッカー界は結果がすべてだ。「勝利をもたらすのがOBだろうが、歴史と無関係の者だろうが、結局は細部でしかない」(『レプッブリカ』にてファブリツィオ・ボッカ記者)という声もある。
期待感から浮かれてはいけないと、警鐘を鳴らす者もいる。クリスティアーノ・ルイウ記者は『Calciomercato.com』で「道のりはまだ長い」「実際、チームはまだ(チャンピオンズリーグ出場権を得られる)4位に値しない」と指摘した。
だが、ルイウ記者は「ようやく有能な真のミラニスタたちがいることから生じる楽観」があるともつけ加えている。
アンドレア・ディ・カーロ記者も、『ガゼッタ』で、イグアインに続く戦力を加えられれば「ミランは本当に成功へ続く道を取り戻したと言える」とコメント。「そしてマルディーニほどその道をよく知る者はいない」と続けた。
◆復活への土台は築かれた?
マルディーニの就任会見で、レオナルドは同胞カカーの復帰の可能性にも言及した。先のことは分からない。ただ、ミラニスタの高揚感がしばらく収まらないことは確かだ。
アントニオ・ヴィティエッロ記者は、『Milannews』で「偉大で美しいミランが生まれつつあると言える。見事な復活への土台が築かれた」と記している。
「さらなる補強が必要なのは事実だ。だが、勝ち始めるためには、堅実な経営陣と国際レベルのフロントから出発することも同じく重要だ。どのチームにもルールは同じであり、強いクラブだけが、時間をかけて成功を収めてきたのである」
ミランは周囲の期待に応え、復活の一年にすることができるのか。先のことは誰にも分からない。
ただ、公式サイトにある「組織図」のページを開いたとき、真っ先に画面に映し出される顔ぶれを目にすれば、ミランのサポーターでなくともワクワクするのではないだろうか。