北朝鮮の女囚28人が「陸の孤島」で強いられた残酷体験
ロイター通信によると、中国の国連代表部報道官は14日、国連安全保障理事会で17日に予定されている北朝鮮の人権状況を協議する公開会合について、「対立と敵対心を激化させるだけだ」として反対を表明した。
予想された動きだが、安保理で拒否権を持つ常任理事国の中国も、会合の開催を単独で止める権限は持っていない。
北朝鮮は世界で最も閉鎖的な国家と言えるが、その内部で起きる人権侵害について、国際NGOなどは様々な方法で監視を続けている。
米国の人権団体「北朝鮮人権委員会」(HRNK)のグレッグ・スカラチュー事務総長は、中朝国境地域の咸鏡北道(ハムギョンブクト)にある全巨里(チョンゴリ)教化所の過去数十年に渡る衛星写真を分析。その結果、女性収容施設が拡張されていることが判明した。
北朝鮮の拘禁施設は、強制労働、拷問、劣悪な環境で、国際社会の激しい批判を浴びている。とりわけ、女性虐待が日常化している実態は、元収容者や関係者の告発により明らかになっている。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
教化所(刑務所)の受刑者は、金正恩体制が思い通りにできる都合の良い存在であり、意のままに酷使している。
国営の朝鮮中央通信は2020年7月、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の金野(クミャ)郡に、数千ヘクタールの農地に水を供給する灌漑施設が完成したと報じた。同通信は「道内の活動家と道民の献身的努力によって」建設されたとしたが、現地のデイリーNK内部情報筋によれば、工事に動員されたのは28人の女性を含む受刑者たちだった。
現場では、人権侵害が横行した。上層部から工事の出来の悪さを指摘された作業隊長は、ただでさえ少ない受刑者の食事を、トウモロコシ飯一杯から一さじに減らしたうえで激しい体罰を加えた。受刑者は次々に倒れたが、誰も抗議もできず、「この悪夢はいつさめるのか」と囁き合うしかなかったという。
北朝鮮はただでさえ交通インフラが未整備で、都市部から地方へ行くのも一苦労だが、刑務所はだいたい「陸の孤島」のような場所にある。内部の食糧事情と衛生環境は劣悪で、家族の差し入れがなければ、受刑者のほとんどは生き延びることさえできない。
そんな状況でトウモロコシ飯を一さじに減らすということは、死に追いやるのとまったく同義だ。
また、女性受刑者の中でも特にひどい扱いを受けるのが中国で摘発され、強制送還された脱北者たちだ。そういう意味で、国連安保理で北朝鮮の人権状況が協議されるというのは、中国にとって他人事ではないのだ。