原油相場急落に怯えるカナダドル相場
国際原油相場が急落する中、外国為替市場ではそれと歩調を合わせて急落している通貨がある。それがカナダドル相場である。
カナダドル/円相場は、10~11月にかけて1カナダドル=91~93円水準の狭いレンジを推移していたが、12月17日には86.70円まで急落し、2012年12月28日以来となる約3年ぶりの安値を更新している。原油相場が1バレル=40ドル水準で底を打ったとの見方がカナダドル相場を下支えしていたが、12月の原油相場が35ドル水準まで急落する中、原油価格に対する弱気派が改めてカナダドル相場に対する売り圧力を強めている結果である。
カナダはオイルサンドで有名なように輸出の3割前後をエネルギー関連商品が占めているエネルギー大国であり、原油価格の下落はカナダドル相場に対して強力な向かい風になる。一方で、原油安はカナダの最大の貿易相手国である米経済を支援するために一概にネガティブ材料とばかりは言い切れないが、カナダドルとWTI原油価格との間には強い相関関係が認められ、12月は円安圧力が一服していることもあり、カナダドル/円相場は強力な下押し圧力に晒されている。
更に市場関係者が恐怖しているのは、カナダ中央銀行がマイナス金利導入に踏み切るのではないかとの警戒感である。カナダ銀行(中央銀行)のポロズ総裁は12月8日の講演において、同行が推計する政策金利の事実上の下限は「マイナス0.50%程度」であることを明らかにしている。2009年以降は0.25%が下限評価とされていたが、エネルギーや金属価格の値下がりがカナダ経済に及ぼす影響が拡大した場合には、「負のショックに対する政策余地があること」を示している。現在のカナダの政策金利は0.50%であるため、これは追加利上げの余地がマーケットが従来想定していた0.25%ではなく、1.00%存在することを意味する。すなわち、利下げの余地が大きく開かれたのである。
同総裁は、あくまでも「こうした政策を始めるつもりだというサインと受け止めてはいけない」として、直ちに追加利上げに踏み切る考えはないことを強調している。ただ、15日には米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げサイクル入りには追従すべきではないことを明らかにしており、カナダさえもマイナス金利の世界に足を踏み入れるかもしれないとの懸念が、今後も対米ドルを中心にカナダドル相場の上値を圧迫している。