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【神となった究極のウルトラマンは誰?】受け継がれる魂の絆!神秘の超人ウルトラマンノアの伝説とは?

二重作昌満博士(文学)/PhD(literature)

みなさま、こんにちは!

文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。

うだるような暑さが続きますが、皆さまいかがお過ごしですか?

さて、今回のテーマは「神話」です。

神話とは「天地の創造、人類の誕生、文化の起源、自然・社会現象などを部族・民族などの神々や英雄にかこつけて説く伝承的な説話」(広辞苑)とされています。

古来から語り継がれる伝承などの形で、現代を生きる私達の生活の中に浸透している「神話」ですが、世界各国では数多くの神話の世界が描かれました。

私は幼少期より日本とハワイの二国間で生活していたので、両国の文化の共通点や違いを体験する機会も度々でしたが、特にハワイの神話ではポリネシアの神様達が非常に人間臭く描かれており、畏敬の念を感じると共に親しみも感じたものです。

ポリネシアの戦いの神・クー。ポリネシアの四大神のひとりであり、日本人にとっては木彫りの人形等で知られている。彼の妻であるヒナ・ヘレは、男性の生殖能力や日の出の象徴とされる(ハワイ・ビショップ博物館)。
ポリネシアの戦いの神・クー。ポリネシアの四大神のひとりであり、日本人にとっては木彫りの人形等で知られている。彼の妻であるヒナ・ヘレは、男性の生殖能力や日の出の象徴とされる(ハワイ・ビショップ博物館)。

そんな神様達が織りなす「神話」の世界ですが、遠い昔から伝わる古典的なものだけではありません。特に、我が国が世界に誇る大衆文化であるアニメ・特撮ヒーロー番組の世界では、数多くの神様達の物語が展開され、現代の人々に親しまれていきました。

その中でも、数多くの神秘的な存在が登場したのが、日本を代表する特撮ヒーロー番組である「ウルトラマンシリーズ」。

当シリーズのヒーローであるウルトラマン達は「光の巨人」と呼ばれ、人々の平和を脅かす凶悪な怪獣や宇宙人達と激しい戦いを繰り広げました。

ウルトラマンひとり一人でも十分神様に近いのですが、そんな数あるウルトラマン達の中でも特に神様に近い、つまり「神の中の神」というべき存在がいました。

彼の名は、ウルトラマンノア。

はるか昔から宇宙を守ってきた存在であり、歴代ウルトラマン達の活躍を見守ってきた伝説の超人とされています。

ウルトラマンノアのデビューはテレビ番組や映画等の映像作品でなく、「テレビマガジン」等の児童誌における誌面展開。怪獣軍団に苦戦する歴代のウルトラマン達のピンチに颯爽と駆けつける神秘の巨人として描かれた。
ウルトラマンノアのデビューはテレビ番組や映画等の映像作品でなく、「テレビマガジン」等の児童誌における誌面展開。怪獣軍団に苦戦する歴代のウルトラマン達のピンチに颯爽と駆けつける神秘の巨人として描かれた。

彼のデビューはテレビ番組ではなく、なんと雑誌(誌面)展開。2004年に子ども達の前に初登場して人気者となった彼は、今年(2024年)誕生20周年を迎えました。

本記事では、そんな20年に渡るウルトラマンノアの活躍と魅力を少しだけ、掘り下げていきたいと思います。

※本記事は「私、アニメや特撮にくわしくないわ」という方にもご覧頂けますよう、可能な限り概要的にお話をしておりますので、ゆっくり肩の力を抜いて、気軽にお楽しみ頂けますと幸いです。

【栄光のウルトラマンシリーズの歴史】ウルトラマンの次なる進化を展開した「ULTRA N(エヌ) PROJECT」とは?

お話の本題に入る前に、少しだけウルトラマンシリーズについて解説をさせてください。ウルトラマンシリーズは、株式会社円谷プロダクション制作の特撮ヒーロー番組『ウルトラマン(1966)』(及び特撮怪獣番組『ウルトラQ(1966)』)を起点とする特撮シリーズです。

『ウルトラマン(1966)』に登場した初代ウルトラマン。陸海空から現れる怪獣達を相手にウルトラマンは戦い、最後は必殺光線・スペシウム光線で退治する。しかし時には罪のない怪獣をいたわる優しさもみせた。
『ウルトラマン(1966)』に登場した初代ウルトラマン。陸海空から現れる怪獣達を相手にウルトラマンは戦い、最後は必殺光線・スペシウム光線で退治する。しかし時には罪のない怪獣をいたわる優しさもみせた。

1966年に『ウルトラマン』が放送され、M78星雲「光の国」からやって来た身長40mの銀色の宇宙人が巨大な怪獣と戦い、最後は必殺光線(スペシウム光線)で怪獣を退治するという物語はたちまち子ども達の心を掴み、最高視聴率42.8%、平均視聴率36.8%を記録する大人気番組となりました。

平成初の国産ウルトラマンとして放送された『ウルトラマンティガ(1996)』。3000万年の眠りから目覚めた超古代の光の巨人、ウルトラマンティガの活躍を描く。その人気は国内のみならず、海外にも波及した。
平成初の国産ウルトラマンとして放送された『ウルトラマンティガ(1996)』。3000万年の眠りから目覚めた超古代の光の巨人、ウルトラマンティガの活躍を描く。その人気は国内のみならず、海外にも波及した。

大衆的な人気を博した『ウルトラマン(1966)』の放映終了後も、その次回作である『ウルトラセブン(1967)』、『ウルトラマンタロウ(1973)』、『ウルトラマンティガ(1996)』、『ウルトラマンコスモス(2004)』と世代を跨ぎながらシリーズが続いていき、現在は『ウルトラマンアーク(2024)』が好評放送中です。

2024年現在放送中のウルトラマンシリーズ最新作『ウルトラマンアーク』。怪獣災害が日常化した現代を舞台に、神秘の光の巨人「ウルトラマンアーク」が想像力を解き放ちながら、怪獣達に立ち向かう姿を描く。
2024年現在放送中のウルトラマンシリーズ最新作『ウルトラマンアーク』。怪獣災害が日常化した現代を舞台に、神秘の光の巨人「ウルトラマンアーク」が想像力を解き放ちながら、怪獣達に立ち向かう姿を描く。

そんな約60年に渡る長いウルトラマンシリーズの歴史の中で、極めて意欲的かつ異色の企画がありました。

その名は「ULTRA N PROJECT(ウルトラ N プロジェクト)」。

それは、1人のウルトラマンの物語をテレビ、映画、雑誌の3つのメディアを通じて連鎖的に描くという、多媒体を通じたウルトラマンシリーズの新たな試みでした。

そんな「ULTRA N PROJECT」で誕生したのは、本記事の主役であるウルトラマンノア。

神々しさを醸し出す白銀の体に、巨大な翼が目を惹く強烈なビジュアルは、たちまち子ども達の心を掴みました。登場から20年経過した今も、ウルトラマンノアは歴代のウルトラマン達を見守り続ける神秘的な超人として、その輝きと存在感を堅持し続けています。

いわば「神様」に近い存在であるウルトラマンノア。彼を輩出した「ULTRA N PROJECT」は、テレビ、映画、雑誌の3つのメディアを通じて、彼の進化が描かれました。

「ULTRA N PROJECT」とは、テレビ、映画、雑誌を通じてウルトラマンノアという1人のヒーローの進化を描いていた。媒体によって名前と姿は異なるが、全員同一人物であり、正に三位一体の存在である。
「ULTRA N PROJECT」とは、テレビ、映画、雑誌を通じてウルトラマンノアという1人のヒーローの進化を描いていた。媒体によって名前と姿は異なるが、全員同一人物であり、正に三位一体の存在である。

ここからは伝説の超人、ウルトラマンノアの物語を辿ってみたいと思います。

【ウルトラマンの模造品!?】ウルトラマンノアのライバル・ダークザギの登場から堕落まで

ウルトラマンシリーズの歴史の中で、今なお伝説的な存在として語り継がれるウルトラマンノア。先述したとおり彼のデビューは誌面展開ですが、その前に彼には知られざる「とある物語」がありました。

彼はなぜ人々の前にその姿を現わし、そしてどんな戦いを繰り広げてきたのでしょうー。

ことの発端は、はるか遠い宇宙の彼方にある「M80さそり座球状星団」の中にある、とある惑星でした。

その惑星で暮らす人々は高度な文明と発達した科学技術を持っていましたが、ある日、恐怖心を求めて人々を捕食する「スペースビースト」(怪物)の侵攻を受けるようになりました。人間を食い殺す物騒な怪物達を相手に、為す術のない人々。そんな人々の前に姿を現したのは、全能の超人・ウルトラマンノアでした。

生物を捕食することで、絶命する前にもたらされる「恐怖心」をエサとする異星獣「スペースビースト」。地球にも襲来し、人知れず人間達を捕食し、進化を続けていた(筆者撮影)。
生物を捕食することで、絶命する前にもたらされる「恐怖心」をエサとする異星獣「スペースビースト」。地球にも襲来し、人知れず人間達を捕食し、進化を続けていた(筆者撮影)。

ノアは人々に力を貸します。ノアはたくさんの人々(適能者)と一心同体となって戦いを続け、最後にはスペースビーストを一掃します。そして、力を使い続けたノアは眠りにつくことで、惑星に平和が戻ったのです。しかし例え星が救われても、人々の心はおぞましい怪物達の恐怖から逃れられませんでした。

そこで人々は、高度な文明と科学技術で、自分達の星を救ってくれたウルトラマンを模した巨人の創造に着手します。永久に自分達を守ってくれる守護神をつくろうとしたのです。

自分達を救ってくれたウルトラマンノアを模して、人々につくられた「ウルティノイド・ザギ」。人工神ともいえるザギは大きな力を与えられるが、歪んだ自我とノアへの対抗心に燃え、暴走してしまう(筆者撮影)。
自分達を救ってくれたウルトラマンノアを模して、人々につくられた「ウルティノイド・ザギ」。人工神ともいえるザギは大きな力を与えられるが、歪んだ自我とノアへの対抗心に燃え、暴走してしまう(筆者撮影)。

その守護神こそ、永遠の命を持つ人工の神、「ウルティノイド・ザギ(通称:ザギ)」でした。いわばウルトラマンノアの「模造品」であるザギは対ビースト用の最終兵器。彼の登場に呼応するように、再び出現するようになった怪物(スペースビースト)を一掃する大きな力を与えられたザギは、ゆらぐ未来を見通して思いました。「この宇宙に二度と苦しみが生まれないためには何を成せばいいのだろう。」、「永遠の平安とはなんだろう」・・・と。

人々によってつくられた人工の神・ダークザギは、再び現れたビーストと激しい戦いを繰り広げる。しかし歪んだ自我に目覚めたザギは、自分が強くなるために本来倒すべきはずのビーストを増殖させ、暴走する。
人々によってつくられた人工の神・ダークザギは、再び現れたビーストと激しい戦いを繰り広げる。しかし歪んだ自我に目覚めたザギは、自分が強くなるために本来倒すべきはずのビーストを増殖させ、暴走する。

ザギは考えた末、なんと「永遠の平和とは虚無である!」という過激な思想に行き着きます。生命が存在しなくなれば、苦しみも悲しみも消え失せると考え、宇宙そのものを無にしてしまおうとする悪魔になってしまったのです。

ザギは野獣のように星を破壊しまくり、炎上する街の中で声高らかに吠えます。人々は守護神をつくろうとした結果、破壊神をつくってしまったのです。そこで彼の創造主達は自らの惑星ごとダークザギを爆破しました。母星を失った人々は星を脱出して宇宙を彷徨い、地球へとやって来ます。地球へと行き着いた人々は、地球人達によって「来訪者」と呼ばれ、来訪者は「自分達の星を滅ぼしたザギが地球へやって来て、地球は滅亡する」ことを警告します。

ダークザギの誕生と、彼が地球にやって来るまでの物語は、映画『ULTRAMAN(2004)』のDVDに付属している小冊子の中で描かれた。前述してきたダークザギの物語は本冊子より抜粋したものである。
ダークザギの誕生と、彼が地球にやって来るまでの物語は、映画『ULTRAMAN(2004)』のDVDに付属している小冊子の中で描かれた。前述してきたダークザギの物語は本冊子より抜粋したものである。

その一方、ダークザギは死んでおらず健在でした。なんと星が爆発した衝撃(超新星爆発)で時空を超えてしまい、別の宇宙(パラレルワールド)に飛ばされてしまいます。その宇宙とは、ウルトラマンやウルトラセブンをはじめとする歴代のウルトラマン達が、平和のために悪い怪獣や宇宙人達と戦っていた世界。

しかしこの世界にやって来たのは、決して「悪魔」だけではありませんでしたー。

【ザギとバルタン星人が手を組んだ?】誌面展開『バトルオブドリームNOA』とは?

当章まで、ダークザギの誕生の物語についてお話してきました。ここからいよいよウルトラマンノアがデビューを飾った誌面展開『バトルオブドリームNOA』の物語に入っていきます。

『バトルオブドリームNOA』は講談社の『テレビマガジン』、小学館の『てれびくん』において毎月掲載された誌面展開。複数の絵本としても刊行され、歴代ウルトラマンを巻き込んだ知る者ぞ知る幻の戦いとなった。
『バトルオブドリームNOA』は講談社の『テレビマガジン』、小学館の『てれびくん』において毎月掲載された誌面展開。複数の絵本としても刊行され、歴代ウルトラマンを巻き込んだ知る者ぞ知る幻の戦いとなった。

来訪者が故郷の星を爆破した後、大爆発の影響で時空を超えたダークザギが行き着いた場所は、自分が大暴れした宇宙とは全く別の宇宙(パラレルワールド)。その宇宙では、ウルトラマンやウルトラセブン、ゾフィーを筆頭にたくさんのウルトラマン達が守っていました。

ダークザギは時空を超え、バルタン星人をはじめ怪獣軍団を率いて暴れ回る。初代ウルトラマンやセブン等、歴代のウルトラマン達が守る宇宙に出現する。ウルトラマン達は強大な力を持つザギに苦戦を強いられるが・・・
ダークザギは時空を超え、バルタン星人をはじめ怪獣軍団を率いて暴れ回る。初代ウルトラマンやセブン等、歴代のウルトラマン達が守る宇宙に出現する。ウルトラマン達は強大な力を持つザギに苦戦を強いられるが・・・

自分が元にいた宇宙へ帰る手段を知らないダークザギは、なんとバルタン星人をはじめとする悪い宇宙人達と手を組みます。ウルトラマン達を倒すために怪獣達を次々と復活させて、ウルトラマンやウルトラセブン、ゾフィー達を宇宙を舞台に苦しめますが、そこに駆けつけたのはダークザギを追って時空を超えてきたウルトラマンノアでした。来訪者の星で活躍し、しばしの眠りについていたノアは星が爆破された際に、ザギと共に時空を超えてウルトラマン達の世界にやって来ていたのです。

ダークザギを追ってやって来たノアは、激しい戦いを展開。数々の神秘的な力を駆使するノアでもダークザギには苦戦を強いられる。しかしノアは自らを消耗させる最後の大技を披露し、ザギを元いた宇宙へ戻した。
ダークザギを追ってやって来たノアは、激しい戦いを展開。数々の神秘的な力を駆使するノアでもダークザギには苦戦を強いられる。しかしノアは自らを消耗させる最後の大技を披露し、ザギを元いた宇宙へ戻した。

ノアは自分は大昔から全宇宙を守っていた存在であり、ウルトラマン達をずっと見守ってきたことを明かした上で、ついにダークザギを宇宙のブラックホールまで追い詰めることに成功します。

ノアは再会をウルトラマン達に約束し、ザギが吸い込まれたブラックホールへ向けて飛び立ち、ザギをブラックホールの向こうにある別の世界に閉じ込める大技「ノア・ザ・ファイナル」を使用します。こうしてノアはザギと共に、ブラックホールの中に姿を消していったのでした・・・。

【戦いの舞台は映画、テレビ番組へ!】望みはノアとの完全決着!ダークザギとウルトラマンノアの最終決戦の行方は?

ここまで上述してきた誌面展開『バトルオブドリームNOA』は、ウルトラマンノアが自らを犠牲にして、ダークザギをブラックホールに追放することで物語が完結します。その後、ダークザギとウルトラマンノアの決戦は映画とテレビを通じて描かれることになります。

ウルトラマンノアにより別の世界に飛ばされたダークザギー。

彼が行き着いたのは、なんと自分がかつて大暴れしていた宇宙でした。つまり、元にいた宇宙に戻ってきてしまったのです。

「自分はウルトラマンノアの模造品」。つまり、ウルトラマンノアさえ消してしまえば自分は唯一無二のウルトラマンになれる。ノアへのコンプレックスは、ザギを地球での更なる凶行へと導いた(筆者撮影)。
「自分はウルトラマンノアの模造品」。つまり、ウルトラマンノアさえ消してしまえば自分は唯一無二のウルトラマンになれる。ノアへのコンプレックスは、ザギを地球での更なる凶行へと導いた(筆者撮影)。

そこでザギは来訪者達の逃走先である地球へとやって来ます。その理由は大きく2つありました。1つ目は、ザギがウルトラマンノアが地球へやって来ることを予知していたこと、2つ目はザギ自身がノアの模造品であることを認識していたため、ノアを倒して自分が「唯一無二のウルトラマン」になろうとしていたからでした。この2つを総括するなら、ウルトラマンノアに対するコンプレックスから地球にやって来ていたといっても過言ではないと思います(そういう意味では、かなり人間臭いキャラクターですが・・・)。

さて、地球へ舞い降りたザギさん。身長50m、体重5万5千トンの巨体で地球に滞在するわけにはいきません(悪目立ちします)。そこで、歴代のウルトラマンが地球人と一心同体になって地球に長期間滞在したように、日本人科学者である男性(山岡一)に憑依します。山岡を名乗ったザギ、なんと殺人を犯してしまいます(山岡さんの師である西条波博士)。これにより山岡さんを名乗るわけにいかなくなったザギは、山岡時代に自分と接触した人間の記憶を全て消し去り、名前も戸籍も全てねつ造するという、かなり手の込んだ身分の詐称を実施します(もはや異次元レベルの詐欺行為です)。ザギは山岡に代わり、自分をという別人を演じながら、ウルトラマンノアの地球への到来を待ち続けていました。

山岡に代わり「石堀光彦」を名乗ったザギは、対スペースビースト特殊部隊「ナイトレイダー」に入隊し、隊員となってウルトラマンとビーストの戦いを裏で工作し、自らの野心のためにウルトラマンの強化を試みた。
山岡に代わり「石堀光彦」を名乗ったザギは、対スペースビースト特殊部隊「ナイトレイダー」に入隊し、隊員となってウルトラマンとビーストの戦いを裏で工作し、自らの野心のためにウルトラマンの強化を試みた。

ダークザギが地球へ身を潜めるようになって13年後。ザギの予測通りウルトラマンノアは怪物(ビースト)を追って地球へとやって来ます。しかし、ノアはかつてのザギとの戦いでエネルギーを使い果たしており、弱体化した姿(ウルトラマン・ザ・ネクスト)となっていました。

映画『ULTRAMAN(2004)』は、ビースト(ザ・ワン)を追って地球にやって来たノアが、「ザ・ネクスト」を名乗って自衛隊の二等空尉と一体化。親子の約束を守るために、命を賭けてザ・ワンと戦う物語。
映画『ULTRAMAN(2004)』は、ビースト(ザ・ワン)を追って地球にやって来たノアが、「ザ・ネクスト」を名乗って自衛隊の二等空尉と一体化。親子の約束を守るために、命を賭けてザ・ワンと戦う物語。

ビースト(ザ・ワン)を追ってやって来たノアは、地球の人々から警戒され、次なる脅威を意味する「ザ・ネクスト」という名で呼称される。感情の高ぶりと決意により灰色の姿から赤い姿へと変身し、ザ・ワンを撃破した
ビースト(ザ・ワン)を追ってやって来たノアは、地球の人々から警戒され、次なる脅威を意味する「ザ・ネクスト」という名で呼称される。感情の高ぶりと決意により灰色の姿から赤い姿へと変身し、ザ・ワンを撃破した

ノア(ザ・ネクスト)は命からがら怪物を倒しますが、またもエネルギーを使い果たしてしまいます。その後、ノアは次なる姿(ウルトラマンネクサス)となって地球の守りに就きますが、力や精神も不十分なネクサスは何度も怪物相手に苦戦を繰り返した上、取り逃がすこともしばしば。そんな本調子でないノアの動向を知ったザギは、次なる計画を思いつきます。

2004年10月2日から2005年6月25日まで『ウルトラマンネクサス(2004)』の物語は全37話が放送された。写真はバンダイビジュアルより発売されたDVD全10巻(筆者撮影)。
2004年10月2日から2005年6月25日まで『ウルトラマンネクサス(2004)』の物語は全37話が放送された。写真はバンダイビジュアルより発売されたDVD全10巻(筆者撮影)。

ウルトラマンネクサスは怪物(スペースビースト)と戦いながら、徐々に力が強化されていく。ネクサスは変身する人間(適能者)がリレー形式で変わっていくのが特徴であり、全37話の内、4人がネクサスに変身した。
ウルトラマンネクサスは怪物(スペースビースト)と戦いながら、徐々に力が強化されていく。ネクサスは変身する人間(適能者)がリレー形式で変わっていくのが特徴であり、全37話の内、4人がネクサスに変身した。

それは、「弱くなったノアを強化する」ことでした。

ザギが戦って勝ちたいのは、あくまでウルトラマンノア。ノアとの完全決着を望むザギにとって、にっくきノアの姿で倒さなければ意味はないのです。ザギは弱いウルトラマンネクサスがノアに戻るために、戦略的に彼を強化する策を講じます。

ウルトラマンネクサスは、いわばノアが弱体化した姿。それ故、ネクサスの当初の姿は幼体を意味するアンファンス(写真中央左)である。戦いを経てネクサスは赤、青と段階的に進化を重ね、ノアの姿へと戻っていった。
ウルトラマンネクサスは、いわばノアが弱体化した姿。それ故、ネクサスの当初の姿は幼体を意味するアンファンス(写真中央左)である。戦いを経てネクサスは赤、青と段階的に進化を重ね、ノアの姿へと戻っていった。

そのため、わざと怪物(スペースビースト)を強化したり、自分がウルトラマンノアを模して造られたことに倣い、自分でも悪いウルトラマン達をつくり、彼らを使役してウルトラマンネクサスをノアに戻すための地道な策を講じてきました。ザギが使役した悪いウルトラマン達も、殺された女性を利用して創作した者(ダークファウスト)、さらにその女性を殺害した人物が変身した者(ダークメフィスト)であったりと、正直えげつない背景から誕生した者達であり、ウルトラマンネクサスを苦しめていきました。

死んだ女性を人形のごとく操り誕生させたダークファウスト(右)、さらに女性を射殺した男性を利用し誕生させたダークメフィスト(左)。メフィストは最後は改心し、罪の償いのためにネクサスを援護し死亡した。
死んだ女性を人形のごとく操り誕生させたダークファウスト(右)、さらに女性を射殺した男性を利用し誕生させたダークメフィスト(左)。メフィストは最後は改心し、罪の償いのためにネクサスを援護し死亡した。

次々に展開される激しい戦いを乗り越え、ウルトラマンネクサスは強いウルトラマンへと成長していき、ザギが期待する戦闘レベルにまで達しました。この瞬間を待っていたとばかりに、今まで人間の姿で身を潜めていたダークザギは復活し、新宿の街で破壊の限りを尽くします。その前に立ち塞がったウルトラマンネクサス相手に戦いを挑むザギ。数々の苦しい戦いを経験してきたネクサスですが、強すぎるダークザギを相手に圧されます。しかし、その戦いを見守る新宿の人々の声援を受け、ネクサスはついに本来の姿であるウルトラマンノアへと姿を変えます。

新宿を舞台に繰り広げられるザギとネクサスの戦い。ネクサスは人々の声援を受けて、ついに本来の姿であるウルトラマンノアへと姿を変える。戦闘はノアのペースで進み、宇宙へ放り出されたザギは爆発四散する。
新宿を舞台に繰り広げられるザギとネクサスの戦い。ネクサスは人々の声援を受けて、ついに本来の姿であるウルトラマンノアへと姿を変える。戦闘はノアのペースで進み、宇宙へ放り出されたザギは爆発四散する。

この想定外の事態に驚いたザギ。しかしその反面、彼が戦いたかったのはノア。

ウルトラマンノアを倒して自分が唯一無二となるために戦いを挑みます。

・・・ところがノアは強すぎました。戦闘は圧倒的な強さであるウルトラマンノアのペースで進み、最後にザギは宇宙空間まで放り出されます。そして、ノアが放った必殺光線を受け、宇宙で雄叫びと共に爆発四散するのでした。

新宿で大勝利を収めたウルトラマンノアの神々しい姿を目に焼き付けた人々は、未来を「諦めない」気持ちと共に、新たな日常へと身を投じていったのでしたー。

雑誌、映画、テレビの順に描かれてきたダークザギとウルトラマンノアの戦いは、人々の声援で元の姿を取り戻したノアの勝利で決着がつきました。

「じゃあ、その後のウルトラマンシリーズではノアとザギの戦いは描かれないの?」

・・・という疑問も思い浮かぶかもしれません。今のところノアとザギは、テレビや映画にて再戦こそ果たしてはいませんが、大人気キャラクターとなった両者は、それぞれの新天地でその後の活躍が描かれており、日々進化を続けています。

ウルトラマンノアはその後のウルトラマンシリーズに度々登場し、後輩のヒーロー達に力を与えたり、叱咤激励するような厳しくも温かい目でウルトラマン達を見守り、戦い続けています。

ウルトラマンノアは、時にウルトラマンネクサスの姿となって後輩ヒーローのピンチに加勢してきたほか、激化するウルトラマンと他民族との対立に仲介して和平を推奨する等、以降も神秘の超人として描かれた。
ウルトラマンノアは、時にウルトラマンネクサスの姿となって後輩ヒーローのピンチに加勢してきたほか、激化するウルトラマンと他民族との対立に仲介して和平を推奨する等、以降も神秘の超人として描かれた。

ウルトラマンノアから大いなる力を分け与えられたのは、ウルトラセブンの息子・ウルトラマンゼロだった。ゼロは他のヒーローと共に新たな宇宙警備隊「ウルティメイトフォースゼロ」を結成し、宇宙の平和のために戦う
ウルトラマンノアから大いなる力を分け与えられたのは、ウルトラセブンの息子・ウルトラマンゼロだった。ゼロは他のヒーローと共に新たな宇宙警備隊「ウルティメイトフォースゼロ」を結成し、宇宙の平和のために戦う

一方でダークザギは、舞台や漫画作品にて活躍の場を移し、他の闇のウルトラマン達と共に「ダークネスヒールズ」を結成。新たなる戦いの道に身を投じています。

「ダークネスヒールズ」とは、一度はウルトラマン達に敗れて散っていった闇のヒーロー達が「とある計画」で復活し、不本意ながらも同じ方向を向く集団(チーム)となった存在。彼らの次なる戦いの地はどこかー。
「ダークネスヒールズ」とは、一度はウルトラマン達に敗れて散っていった闇のヒーロー達が「とある計画」で復活し、不本意ながらも同じ方向を向く集団(チーム)となった存在。彼らの次なる戦いの地はどこかー。

『ダークネスヒールズ(DARKNESS HEELS)』は惑星テリオで目を醒ました5人の悪のヒーロー達がチームを組み、宇宙の星々を舞台に共闘する物語が舞台や漫画作品を通じて描かれ、アニメ化も発表された。
『ダークネスヒールズ(DARKNESS HEELS)』は惑星テリオで目を醒ました5人の悪のヒーロー達がチームを組み、宇宙の星々を舞台に共闘する物語が舞台や漫画作品を通じて描かれ、アニメ化も発表された。

かつてウルトラマンノアが雑誌、映画、テレビといった様々なメディアを通じて進化を続けてきたように、現在もノアとザギはそれぞれ多種多様な新天地にて活躍を続けており、ますます彼らの魅力が深まりつつあります。

今年誕生20周年を迎えたウルトラマンノアとダークザギ。

いつか、両者が再び相まみえる日を心から願っています。

最後までご覧頂きまして、誠にありがとうございました。

(参考文献)
・小野浩一郎(エープロダクション)、『ウルトラマンノア シール101絵本』、株式会社講談社
・松井聡・中門努(てれびくん編集部)、『小学館のテレビ絵本 ウルトラマンノア』、小学館
・間宮尚彦、『ULTRAMAN “N”の全貌』、バンダイビジュアル株式会社
・椎名高志、『ウルトラマンネクサス』、株式会社小学館
・堤哲哉+EPY、『ウルトラヒーロー完全ガイド 1966-2012』、株式会社メディアックス
・鈴木洋一、『テレビマガジン特別編集エクストラ 講談社ヒットブックス ULTRAMAN NEXUS THE DUNAMIST』、株式会社講談社
・杉田篤彦、『ファンタスティックコレクション ウルトラマンネクサス NEXUSEED』、株式会社朝日ソノラマ
(映画『ULTRAMAN』、『ウルトラマンネクサス』を視聴するなら)
TSUBURAYA IMAGINATION(通称:ウルトラサブスク、外部リンク)
(ハワイ ビショップ博物館 Bishop Museum)
住所:1525 Bernice St, Honolulu, HI 96817
メール:claudette@bishopmuseum.org
電話番号:808-847-3511
URL:https://www.bishopmuseum.org/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E/(外部リンク)

博士(文学)/PhD(literature)

博士(文学)。日本の「特撮(特殊撮影)」作品を誘致資源とした観光「特撮ツーリズム」を提唱し、これまで包括的な研究を実施。国内の各学術学会や、海外を拠点とした国際会議へも精力的に参加。200を超える国内外の特撮・アニメ催事に参加してきた経験を生かし、国内学術会議や国際会議にて日本の特撮・アニメ作品を通じた観光研究を多数発表、数多くの賞を受賞する。国際会議の事務局メンバーのほか、講演、執筆、観光ツアーの企画等、多岐に渡り活動中。東海大学総合社会科学研究所・特任助教。

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