Yahoo!ニュース

カウントダウンに入った!? 5度目の核実験と初の核ミサイルの発射実験

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
核弾頭(?)と「KN-08」

朝鮮半島情勢は予想とおり、危険な展開に入りつつある。

今朝の朝鮮中央通信の報道によると、金正恩第一書記は昨日、「核攻撃能力の信頼性を高めるため早い時期に核弾頭爆発実験と核弾頭装着が可能な弾道ロケット試験発射を断行する」と宣言したようだ。

「過去20年間で最強」の国連制裁と史上最大規模の米韓合同軍事演習に北朝鮮もまたミサイル発射と核実験をエスカレートさせることで対抗する構えだ。

順番からすれば、核実験が先になるだろう。早ければ、演習期間中の3月31日から世界の主要国首脳らを集めてワシントンで開催される核安全サミットに合わせて5度目の核実験を断行するかもしれない。

金第一書記が国家の最高機密でもあり、軍の秘密兵器でもある核とミサイルのほぼ全容を形振り構わずさらけ出し始めているのは何度「口撃」しても韓国や米国など国際社会が北朝鮮の脅しに屈しない、北朝鮮からすれば「本気度」を認めないことへの焦り、いらつきが見え隠れしているようだ。

北朝鮮は2月23日の最高司令部初の「重大声明」を皮切りに、政府声明(3月4日)、外務省声明(3月4日)、国防委員会声明(3月7日)、人民軍総参謀部声明(3月12日)とありとあらゆる声明を出して、米韓及び国連を牽制、警告してきた。それも、韓国に向けては「同族には核を使用しない」と、また国際社会には「核保有しても、先制使用はしない」とのこれまでの主張を翻し、朝鮮半島有事の際の核使用、それも初めて核による先制攻撃をちらつかせてきた。

北朝鮮は一連の「声明」が決してハッタリでないことを示すため金第一書記自らが口火を切り、さらに音頭を取って核・ミサイル機密の公開に踏み切ったのだろう。ここが勝負ところとみて、一か八かの賭けに打って出たのかもしれない。

実際に金第一書記は国連決議が採択されたその日(3月3日)のうちに「NK-09」(300mm新型大口径放射砲)の発射実験に立ち会っている。日本海に向け発射された「NK-09」は射程200kmで京畿道平澤の米軍基地だけでなく、全羅北道群山の米軍基地、陸・海・空軍の本部のある忠清南道の鶏龍台まで射程圏に入る。

単距離砲である放射砲の発射は今回が初めてでなく、目新しくはないが、米韓の関心を引いたのは金第一書記が「国家防衛のため実戦配置した核弾頭を任意の瞬間、発射できるよう常に準備せよ」と物騒な発言をしたことだ。北朝鮮が核弾頭の実戦配備に言及したのは後にも先にもこれが初めだったからである。

ところが、米国防総省も韓国国防部も「北朝鮮は核脅威を誇張しているだけ」「核弾頭の小型化にはまだいたってない」と冷ややかな反応を示すや怒り心頭したのか、9日に核兵器研究所を訪れ核弾頭らしき銀色の球体を公開した。それも米本土を標的にしたICBM(大陸間弾道ミサイル)「KN-08」と一緒に公開した。あたかも、核弾頭が「KN-08」に装着されているかのような絵らしきものまで映し出してみせた。

金第一書記は工場視察の際「敵らを核武力で完全に制圧する我々式の多様な主体の核兵器をもっと多く生産せよ」と訓示したものの意に反して、球体は核弾頭ではなく、模擬もしくは張りぼて、あるいは「まだ模型の段階」と冷笑されると、翌10日には実際に単距離弾道ミサイル「スッカドC」を2基発射し、発射訓練は「目標地域の設定された高度で核弾頭を爆発させる射撃方法で行われた」と胸を張ってみせた。

これが事実ならば、核弾頭を装着したミサイルを試験発射し、目標物上空で核弾頭が爆発させる方式の訓練が行われたことになる。発射に立ち会った金第一書記はその場で「新たに研究製作された核弾頭の威力判定のため核爆弾実験を今後も行うよう指示していたが、それが冒頭の「早い時期に核弾頭爆発実験と核弾頭装着が可能な弾道ロケット試験発射を断行せよ」となった。

北朝鮮の核小型化については様々な見方がなされているが、米国は最初の核実験から7年目で、ロシアは6年目で小型化に成功している。北朝鮮が2006年の最初の核実験から10年が経過しているところをみると、すでに手にしたとしても何ら不思議ではない、

「スカッドC」の発射が核弾頭搭載用の実験ならば、今度は、中長距離ミサイルに装着しての実験ということになる。

韓国を標的にした射程200kmの300mm砲に続いて、射程500kmのスカッドミサイルが発射されたわけだから、順番から行けば、今度は日本に向けられた射程1000kmの「ノドン」、グアムを標的にした射程4000kmの「ムスダン」、そして米本土向けの射程1万km以上の「KN-08」あるいは潜水艦型発射弾道ミサイルの発射ということになる。

その理由は、最高司令部の重大声明で第一次攻撃が青瓦台(大統領府)と韓国の主要施設、そして第二次攻撃先としての「太平洋上の米軍基地と米本土」と核ミサイルの攻撃目標に定めているからだ。

ノドンにせよ、ムスダンにせよ、あるいは「KN-08」にせよ、日本列島に向けて、太平洋に向かって飛んで来る。それも北朝鮮が主張する平和目的のための「人工衛星」ではなく、それが模擬であれ「核弾頭」が搭載されたミサイルである。米国が挑発とみなすのは必至だ。

3年前の朝鮮半島の危機では4月4日に北朝鮮が「ムスダン」を日本海に面した基地に配備した際にはケリー国務長官が「北朝鮮が誤判して発射すれば、大変なことになる」と警告していた。その前例からして、米国が果たして何もしないで、傍観しているだろうか?今行っている米韓合同軍事演習はまさにそのための訓練である。

核実験にせよ、中長距離弾道ミサイルにせよ、金第一書記がボタンを押す日が近づけば朝鮮半島の緊張は最高潮に達するだろう。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

「辺真一のマル秘レポート」

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

テレビ、ラジオ、新聞、雑誌ではなかなか語ることのできない日本を取り巻く国際情勢、特に日中、日露、日韓、日朝関係を軸とするアジア情勢、さらには朝鮮半島の動向に関する知られざる情報を提供し、かつ日本の安全、平和の観点から論じます。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

辺真一の最近の記事