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異次元の戦いを続けるヤンキースは2001年マリナーズのシーズン最多勝記録を塗り替えることができるか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
6月16日のレイズ戦にリゾ選手の決勝本塁打でサヨナラ勝ちしたヤンキースの選手たち(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【今も異次元レベルの戦いを続けるヤンキース】

 オールスター・ブレイクが1ヶ月後に迫る中、シーズン前半戦を締めくくるこの時期になって再びヤンキースが勢いづいている。

 現地時間の6月14日から始まったア・リーグ東地区3位のレイズとの3連戦を全勝で制し、連勝を7に伸ばしている。また6月に入ってからは8日のツインズ戦に敗れただけで、着実に勝利を積み重ねているのだ。

 17日から同地区2位のブルージェイズとの3連戦を控えているが、このカードも勝ち越すようなことになると、完全に独走態勢を固めてしまうことになりそうだ。

 元々同地区は強豪チームばかりで、熾烈な首位争いを展開することで有名だ。現在もオリオールズ以外の4チームすべてが勝率5割を超えている状況だが、その中でヤンキースは明らかに突出した存在になっている。

 それだけ今シーズンのヤンキースは、異次元レベルの戦いを続けているということだ。

【ほとんど連敗しないのが強さの秘訣?】

 ただシーズン開幕から盤石なスタートを切れたわけではない。開幕シリーズでレッドソックスに2勝1敗で勝ち越した後、続くブルージェイズ、オリオールズの3連戦でいずれも負け越しているのだ。

 勢いに乗り始めたのは、4月22日のガーディアンズ戦での勝利から始まった11連勝からではないだろうか。それからは5月21~22日のホワイトソックス3連戦、5月27~29日のレオズ3連戦以外、14のカードで勝ち越している。

 エンジェルスがチーム記録を塗り替える14連敗を喫し、一気に地区首位争いから転落してしまったが、やはり連敗はチームの勢いを削いでしまうものだ。しかし今シーズンのヤンキースは2連敗が2回、3連敗が1回に止まり、ほとんど連敗していない。

 それが好調さを維持できている秘訣でもあるのだろう。

【投攻守すべてでMLBトップクラスの選手層】

 実は今シーズンのヤンキースは、まったく弱点が見つからないのだ。投攻守すべてにおいてMLBトップクラスにある。

 まず打撃陣は、アーロン・ジャッジ選手を中心に本塁打を量産し、現時点でチーム本塁打数は101本でMLB1位にランク。打率(.246)こそ同12位に止まっているが、得点(315)、出塁率(.355)、長打率(.435)の主要部門で、すべて同4位以内にランクしている。

 打撃陣以上に素晴らしいのが投手陣だ。チーム防護率が2.78で同1位だけでなく、投手の安定感を示すWHIP(1.05)と被打率(.214)でも同1位か1位タイにランクしている。間違いなくここまでMLB随一の投手陣といっていいだろう。

 しかも現在は絶対的クローザーのアロルディス・チャップマン投手が負傷離脱しているにもかかわらず、中継ぎ陣だけの防御率を見ても2.83で同2位にランクしている。まさに選手層の厚さも盤石だということだ。

 さらに守備においても、ヤンキースの失策数は26で、パドレス(23)、マリナーズ(24)に次ぐ少なさだ。穴らしい穴が見当たらないのだ。

【2001年のマリナーズを超えられる?】

 ここまで異次元レベルの戦いを続ける中、そろそろ米メディアの中で囁かれ始めてきたのが、今シーズンのヤンキースが果たして何勝するのかだ。それと同時に、MLBに移籍したばかりのイチロー選手が所属していた2001年のマリナーズが樹立した、116勝というMLBシーズン最多勝記録を塗り替えることができるかだ。

 ちなみにヤンキースは現在63試合を消化し、47勝16敗で貯金31となっているが、2001年のマリナーズは63試合終了時点で49勝14敗と、ヤンキースより2勝上回っている。それでも今シーズンのヤンキースが、当時のマリナーズに匹敵する快進撃を続けていることは間違いない。

 2001年のマリナーズは、9月11日にニューヨークとワシントンDCを襲う同時多発テロ事件が起こり、シーズンが一時中断されるアクシデントがあったせいか、再開後にシーズン初の4連敗を喫するなど、シーズン後半戦(.707)は前半戦(.724)より勝率をやや落としている。

 新型コロナウイルスもとりあえず沈静化し、シーズンが中断されるような不測の事態が起こらないことを祈りつつ、ヤンキースはどこまで現在の好調を維持していくのか注目したいところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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