大河ドラマ『光る君へ』段田安則演じる「陰謀家」藤原兼家が恐怖した話
大河ドラマ「光る君へ」において、藤原兼家は俳優の段田安則さんが演じています。兼家は、藤原道隆・道兼・道長という3人兄弟の父です。ドラマでは、円融天皇に毒を盛ることを道兼に命じるなど様々な策謀を用いて、藤原家の隆盛を図ろうとする兼家。冷血な陰謀家といったところですが、史実においては不遇の時代もありました。ドラマでは描かれていませんが、次兄・藤原兼通との対立により、昇進を止められてしまうこともあったのです。
『大鏡』(平安時代後期成立の歴史物語)には、兄・兼通が飛ぶ鳥を落とす勢いの頃の兼家の逸話が掲載されています。兼家は兄に追い詰められて、悲観していた頃のことです。ある人が次のような夢を見たといいます。それは、兼通の邸から夥しい数の矢が東方に飛んでいくというものでした。飛び去った矢は、悉く、兼家の邸(東三条殿)に落下したとのこと。この夢の話を聞いた者が、その内容を兼家に伝えると、兼家は大層怖がったそうです。犬猿の仲である実兄の邸から矢が飛来するとの夢ですので、縁起の悪いものに違いないと感じたのでしょう。不安に思った兼家は、夢解き(夢の解釈)を専門家に尋ねます。するとその夢解師は「この夢は吉夢にございます。天下がこの御殿に移るということでございます」と意外な回答をしました。確かに、何れ兼家は復権し、兼家の家系は、子の道長の時代に全盛を迎えることになります。その事を見通した夢解師の予言と取ることもできるでしょうが、後付けの創作というのが妥当なところでしょう。