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大河ドラマ『光る君へ』段田安則演じる「陰謀家」藤原兼家が恐怖した話

濱田浩一郎歴史家・作家

大河ドラマ「光る君へ」において、藤原兼家は俳優の段田安則さんが演じています。兼家は、藤原道隆・道兼・道長という3人兄弟の父です。ドラマでは、円融天皇に毒を盛ることを道兼に命じるなど様々な策謀を用いて、藤原家の隆盛を図ろうとする兼家。冷血な陰謀家といったところですが、史実においては不遇の時代もありました。ドラマでは描かれていませんが、次兄・藤原兼通との対立により、昇進を止められてしまうこともあったのです。

『大鏡』(平安時代後期成立の歴史物語)には、兄・兼通が飛ぶ鳥を落とす勢いの頃の兼家の逸話が掲載されています。兼家は兄に追い詰められて、悲観していた頃のことです。ある人が次のような夢を見たといいます。それは、兼通の邸から夥しい数の矢が東方に飛んでいくというものでした。飛び去った矢は、悉く、兼家の邸(東三条殿)に落下したとのこと。この夢の話を聞いた者が、その内容を兼家に伝えると、兼家は大層怖がったそうです。犬猿の仲である実兄の邸から矢が飛来するとの夢ですので、縁起の悪いものに違いないと感じたのでしょう。不安に思った兼家は、夢解き(夢の解釈)を専門家に尋ねます。するとその夢解師は「この夢は吉夢にございます。天下がこの御殿に移るということでございます」と意外な回答をしました。確かに、何れ兼家は復権し、兼家の家系は、子の道長の時代に全盛を迎えることになります。その事を見通した夢解師の予言と取ることもできるでしょうが、後付けの創作というのが妥当なところでしょう。

歴史家・作家

1983年生まれ、兵庫県相生市出身。皇學館大学文学部卒業、皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員、姫路日ノ本短期大学講師、姫路獨協大学講師を歴任。『播磨赤松一族』(KADOKAWA)、『北条義時』『仇討ちはいかに禁止されたか?』『明徳の乱』(星海社)、『家康クライシスー天下人の危機回避術ー』(ワニブックス)ほか著書多数

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