【PC遠隔操作事件】写真はiPhoneで撮られていた!
「真犯人」からメディアなどに送られたメールは、全部で4通あるが、そのうち2通目の「自殺予告メール」に添付されていた写真は、iPhone3GSで撮影されていた。弁護人によれば、起訴されている片山祐輔氏が所持していたのは、富士通製のスマートフォンで、これまでiPhoneは使ったことがない、という。
写真はどうやって撮ったのか
このメールが発信されたのは、昨年11月13日午後11時54分に発信された。次のような短い本文に、kubitsuri_rope.jpgというファイル名で右にある写真が添付されていた。
〈ミスしました。ゲームは私の負けのようです。
捕まるのが厭なので今から首吊り自殺します。
楽しいゲームでした。
さようなら。また来世ーーー〉
警視庁捜査分析センターが解析したところ、Exif情報から、撮影機種はiPhone3GSでiOSバージョン3.1.2もしくは3.1以前のものとみられる、という。
片山氏が、当時iPhoneを所持していたという証拠は、今のところ出ていないようだ。だとすると、なぜ彼がこのメールを送ったとすれば、別人に撮影を頼むか、誰かからiPhoneを借りて撮影したことになるが、それについても証拠も、現時点では出ていない、とのこと。
8月22日に行われた第4回公判前整理手続きで、弁護側がこの点を追及したが、検察側は回答を避けた、という。
神奈川新聞はどうやって入手?
この写真には、11月13日付の神奈川新聞が写っていた。「真犯人」は、4通目の「延長戦メール」にも、1月4日付神奈川新聞の上に猫に取り付けたのと同じSDカード付きのピンクの首輪を載せた写真を添付している。
弁護側は、8月2日付書面で、片山氏がいつ、どこで、この神奈川新聞を入手したと主張するのか、釈明を求めたが、検察側からの回答はない。特に、昨年11月13日は平日(火曜日)で、日中は片山氏は派遣先で仕事をしており、同紙の入手は非常に困難だ、と弁護側は主張している。
12月1日「頃」とは?
この書面では、全部で26項目の求釈明を行ったが、検察側が回答したのは2点のみ。そのうち1点は、雲取山の山頂にUSBメモリーを埋めた時期についての問いで、これに対し検察側は「平成24 年12 月1 日頃」と答えた。片山氏は、以前から12月1日に山に登ったことは述べているが、麓の駐車場の写真に片山氏の車が写っていたことなどから、それが裏付けられた、という。しかし、検察側がなぜ「12月1日」と断定せず、「頃」をつけたのか。
公判前整理手続きにおいて、弁護人が「12月1日以外に埋めた可能性もあるのか」と問いただすと、検察側は「そうだ」と答えたという。だが、他の日に片山氏が登った証拠が出されているわけではなく、なぜ、検察側が時期をあいまいにしたのか、よく分からない。
弁護人は、「検察側が立証できているのは、片山さんがこの日に山に登ったことだけ。片山さんが写っている登山客の写真が証拠で出ているが、手にスコップなどを持っている様子もないし、山頂には他にも人がいて、三角点を掘ってUSBメモリを埋めるような不審なことをすれば目立つはずだ」と主張している。
警察が今年5月16日にUSBメモリを発見した時には、三角点の所を19センチ掘ったところから見つかった、という。素手で、これだけの深さを掘るのは、そう簡単ではないのではないか。
ちなみに、USBメモリを埋めた場所をす写真を添付した「謹賀新年メール」には、「10月から仕込んでおいたのをようやくお披露目です」とあり、先に紹介した「ラストメッセージ」では、「紅葉のはじめの頃に行ったので快適でした」と書いている。検察側の「12月1日頃」が、この時期も含む、ということはないだろうが…。
「ラストメッセージ」はなぜ伏せられていたのか
ところでこの「ラストメッセージ」について、検察官は第4回公判前整理手続で、「ラストメッセージをマスコミに配布したのか?」「それを判断したのは誰か?」などと詰問。「開示証拠の目的外使用だ」と論難した、という。
この「ラストメッセージ」は、「真犯人」が作成した文章の中で、最も長文で情報量が多く、この事件や犯人について考える手がかりがたくさん含まれており、むしろ警察の方から公表し、国民に情報提供を呼びかけるべきだった。現に、警察はウェッブサイトやフェイスブックを使って、「犯行声明メール」や「自殺予告メール」などを公表し、情報提供を呼びかけていた。なのに、なぜ、最も情報量が豊富な「ラストメッセージ」を隠していたのか。むしろ、そちらが問われなければならないのではないか。
検察側は以前、佐藤博史弁護士に対し、懲戒請求をちらつかせて「目的外使用」を牽制したことがある、という。大阪では、すでに公判で取り調べられ、無罪判決の拠り所の一つとなったDVDをNHKに提供した弁護士が懲戒請求されているほか、再審無罪が確定した布川事件、再審請求中の袴田事件などでも証拠開示の際に、弁護側に「目的外使用」を強く牽制した。
本来は、関係者、とりわけ被害者のプライヴァシーが流出したり、名誉毀損につながることがないように作られた法律の条文を、検察側は被告人(あるいは再審請求人)に有利な証拠や検察の捜査の問題が明らかになる証拠が、人々に知られることを妨害するために使っている。
国民の「知る権利」を制約する行為でもあり、今後の検察の対応には注視が必要だ。