マー君は謝る必要なし
アメリカのスポーツブログ・ポータルの『SB Nation』に"Masahiro Tanaka apologizes to Yankees fans for injury" (田中将大は故障をヤンキース・ファンに謝罪した)という記事が掲載された。
その記事にはある野球ライターの「信じられない」というツウィートも紹介されている。
日本では故障で離脱した選手が会見で謝罪するのは一般的なので、「謝ったことが記事になる」ことのほうが驚きかもしれない。
日本では謝ることは人間関係の潤滑剤だ。「とりあえず謝っておく」ということは、逆に自らを安全な場所に避難させることでもある。したがって、われわれも日常生活において自らの行動に非があると認識していなくてもとりあえず「申し訳ありません」とコメントすることはよくある。
しかし、容易に謝罪しない文化をもつ欧米においては、日本式のアプローチは損害賠償のリスクを背負いかねない行為だ。また、スポーツにおいては負傷は付きものであり、全力でプレーした結果の故障は「そもそも謝罪すべき対象」とはされていない。それどころか、謝ったりすると「全力でプレーすることや準備を怠ったのか」と捉えられかねない。したがって、田中の一件にしてもアメリカの多くのファンは違和感を持っているはずだ。
今回、上記の記事を書いた記者は、「まず謝る」日本の文化の特性を理解しているようで、松井秀喜や松坂大輔が故障をファンに謝罪した前例を紹介していた。
本件を通じ、マー君も日米のファンも異文化レッスンを受けたことになるが、願わくば田中の周囲を固める通訳さんやコーディネーターらの「チーム・マー君」が会見の前に「この場合は謝っていけない」ことを教えてあげてほしいと思う。無用な誤解を招き不利益を被るのを回避するためだ。