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MLB界の闇? 10年前から指摘されていたピート・ローズ氏のコルクバット使用疑惑

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
再びコルクバット使用疑惑が浮上したピート・ローズ氏(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【カナダ紙が報じたローズ氏のコルクバット使用疑惑】

 5月5日のことだが、カナダの『モントリオール・ガゼット』紙が、元エキスポスのグランド整備担当者の証言を受け、1984年に同チームに在籍していたピート・ローズ氏が違法のコルクバットを常用していたと報じられ、日本でも大きなニュースになった。

 ローズ氏といえば、通算安打4256本のMLB記録を保持する伝説的な選手で、日米合算で4367安打を記録しているイチロー選手と度々比較される人物として、日本でもお馴染みの存在といえる。

 またローズ氏は、レッズ監督時代に野球賭博に関与していたことが発覚し、1989年にMLB界から永久追放処分を受けるなど、常にダーティーなイメージがつきまとう人物でもあった。

 今回の報道で、日本のメディアからローズ氏の通算記録を疑問視する声が上がっているようだ。

【10年前にも指摘されていたコルクバット使用】

 ただローズ氏のコルクバット使用疑惑が飛び出したのは、今回が初めてではない。すでに10年前にスポーツ専門サイトの『DEADSPIN』が、1985年のレッズ時代にローズ氏が使用していたバットのX線検査を行い、内部にコルクらしくものが見つかったと報じているのだ。

 当時もかなりセンセーショナルに報じられたので、ご記憶の方も多いはずだ。

この報道を受け、ローズ氏はコルクバットの使用を全面的に否定しているが、またこうして新たな疑惑が報じられたことで、ますます信憑性が高まったことは間違いない。

【コルクバットはMLB界の闇部分】

 確かにローズ氏のコルクバット使用が真実ならば、彼が残した記録を疑問視する声が上がるのも当然だろう。

 だが事実として理解しなければいけないことは、10年前にも大きな騒ぎになりながら,今もローズ氏の記録はMLBの公認記録として残り続けていることだ。

 それはステロイドなどの禁止薬物使用を疑われたバリー・ボンズ氏、マーク・マグワイア氏らの記録が今もMLB記録として残っているのと変わりはない。

 コルクバットもローズ氏だけが使用していたのなら糾弾されるべきものなのだが、実はコルクバットも禁止薬物同様にMLBの闇部分なのだ。

【使用確認が難しいコルクバット】

 コルクバットはあくまでバットの内部にコルクを仕込んだものなので、外見上はまったく他のバットと見分けがつかない。ローズ氏も現役引退した今になって、使用疑惑が取り沙汰されているほどだ。

 つまりそれは、実際のところローズ氏以外にもコルクバットを使用していた選手がいたのかを正確に確認できないということになる。だがその一方で、MLBではコルクバット使用が明るみに出たケースが度々起こっている。

 こちらもご記憶の方がおられると思うが、ステロイド時代といわれる1990年代から2000年代前半にかけて、4人の選手がコルクバット使用で処分を受けている。

 ●アルバート・ベル(インディアンズ):1994年にコルクバット使用が発覚し、7試合の出場停止処分を受ける。

 ●クリス・セイボー(レッズ):1996年にコルクバット使用が発覚し、7試合の出場停止処分とチームに2万5000ドルの罰金が課せられる。本人はチームメイトから借りたバットだと釈明。

 ●ウイルトン・ゲレロ(ドジャース):1997年にコルクバット使用が発覚し、8試合の出場停止処分を受ける。

 ●サミー・ソーサ(カブス):2003年にコルクバット使用が発覚し、8試合の出場停止処分を受ける。打撃練習で使用していたバットを誤って公式戦で使用したと説明。

 これら4選手はすべて試合中にバットが割れ、その中にコルクが入っているのが確認されたため処分を受けたものだ。逆に言えば、バットが割れなければ、彼らのコルクバット使用も発覚していなかったし、その後彼らがコルクバットを使用したかどうかも、確認することはできない。

 今後ローズ氏の疑惑がどこまで追求されるのかは分からない、ただコルクバットがMLB界で単純な問題ではないということだけは確かだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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