9割近くは「安保は日本の平和と安全に役立つ」と考えている
日本の戦後における外交・政治・軍事さらには経済の面で大きな役割を果たした条約の一つに「日米安全保障条約」がある。その条約に関して内閣府が2023年3月に発表した自衛隊・防衛問題に関する定期世論調査(※)によると、89.7%の人が日本の平和と安全に役立っていると答えていることが明らかになった。役立っていないとの否定的意見を持つ人は9.1%にとどまっている。
「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」、通常は「日米安全保障条約」「日米安保」と呼ばれる日米間の条約は、両国の同盟関係の根幹となる条約として知られている。その条約について、「日本の」平和と安全に役立っているか否かを5段階評価で聞いたところ、「役立っている」「どちらかといえば役立っている」を合わせた肯定派は89.7%を占める結果となった。逆に否定派(「どちらかといえば役立っていない」「役立っていない」の合計)は9.1%に過ぎない。
属性別に見ると、女性の否定感、高齢層の留保感(「分からない・無回答」の値の高さ)がやや強いように見受けられる。軍事的な話には拒否反応を示しやすい属性でもあることから、この動きは当然かもしれない。男性に限れば5割近くが「役立っている」の回答を示している。この類の設問でありがちな、若年層あるいは高齢層における拒否感の強さといったものは見られない。
経年推移を見ると、湾岸戦争時に大きな動き、具体的には否定派の増加・肯定派の減少が確認できるが、それ以外はおおよそ肯定派の増加が継続している。否定派は大きな動きを見せず、ほぼ横ばいのまま推移している。
2012年の調査結果では肯定派がはじめて8割を超えた。2015年ではさらに増加を示し、その時点における過去最高の82.9%に達した。この動きは見方を変えると「分からない・無回答」、あるいは判断留保の人の割合が減ってきたことを意味する。時間の経過とともに安保の意味合いが浸透し、はっきりと判断をする、特に肯定する人が増えてきたと考えるのが妥当ではある。
直近の2022年では前回調査から否定派が減り、肯定派が大きく増えている。結果として肯定派は過去最高の89.7%を示した。公開値だけでは具体的思惑を断じることはできないが、おそらくはロシアによるウクライナへの侵略戦争と、それに連動する形で生じている日本周辺での軍事的緊張が、日米安全保障条約の役立ち感を覚えさせたのではないだろうか。
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※自衛隊・防衛問題に関する定期世論調査
2022年11月17日から12月25日にかけて、層化二段無作為抽出法によって選ばれた18歳以上の日本国内に在住する日本国籍を持つ人に対し、郵送法で行われたもので、標本数は3000人、有効回答数は1602人。有効回答者の男女構成比は757対845。年齢階層別構成比は18~29歳が170人、30代が162人、40代が240人、50代が276人、60代が306人、70歳以上が448人。
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