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NY原油3日:地政学的リスクの高まりを受けて反発

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

NYMEX原油4月限 前日比0.93ドル高

始値 49.80ドル

高値 50.78ドル

安値 49.45ドル

終値 50.52ドル

地政学的リスクの高まりを受けて、反発した。

リビアにおいて同国国内でISILに同調すると見られるイスラム過激派が石油ターミナルを攻撃したとの報を受けて、投機買いが膨らんだ。既にリビアでは生産トラブルが続いているため、これによって実際の産油量が更に大きく落ち込む訳ではない。ただ、ISILの影響がイラク・シリアからリビアにも波及していけば、中東地区全体の政情不安につながる可能性もあるだけに、リスクプレミアムの加算が促されている。

加えて、本日はイスラエルのネタニヤフ首相が米議会で演説を行ったものの、イラン核開発問題に対する米国の姿勢に不満を示したことも、原油相場では不安視されている。イスラエルは米国がイランの核開発問題で外交交渉を続けていることに不満を示し、更なる強硬姿勢で核問題を封じ込める必要性を主張している。これは、イスラエルが単独で対イラン政策を展開するリスクが高まっていることを意味し、先行きに不安ムードが広がった。

もっとも、現実的に原油供給に何か大きなトラブルが発生している訳ではないこともあり、原油相場の反発力は限定された。米石油在庫統計の発表を控えていることもあり、最近のレンジ内でのリバウンドに留まっている。なお、引け後にAPIが発表した最新統計によると、原油在庫は前週比+290万バレルに留まり、市場予想+395万バレルを下回る増加幅に留まっている。

本日は地政学的リスク絡みの動きが相場を押し上げたが、現状ではリスクプレミアムの動きが本格化する可能性は低いと考えている。もちろん、サウジアラビアなどで大規模なテロ攻撃が発生すれば原油相場の急騰は必至だが、現時点ではそこまでの危機感は見られない。リビアに関しても、武装勢力の活動は従来から活発化しており、サプライズ感までは乏しい。原油相場急落を受けて需給バランスの歪みが解消に向かっているとの報告も増えているが、この時期から原油相場が反発してしまうと、需給均衡化をもたらすのに十分な生産調整が進まず、今後の反発力が限定されてしまうことになる。中長期的にはボトム圏に近づいているのは間違いないが、短期スパンでは依然として戻り売り対応の方に魅力を感じる。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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