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ニュージーランドでプレーする侍たち

阿佐智ベースボールジャーナリスト
オークランド・トゥアタラでプレーする日本人投手たち

 昨日、ニュージーランドのウィンターリーグ球団、オークランド・トゥアタラでプレーする元ヤクルトの村中投手の記事を配信したが、このチームには彼の他、4人の投手が所属している。ニュージーランドと言えば、かつてナショナルチームの監督を清水直行(元ロッテ)氏が務めていたこともあり、日本球界と縁が深い。球団初年度の昨シーズンは、清水氏の古巣、千葉ロッテから3人の選手が参加していたが、今年は球団の方針の変化もあって派遣先がプエルトリコのウィンターリーグに変わった。そのためか、オークランド球団は、日本人選手を求め、とくに手薄な投手陣を5人も日本人で補強したのだ。

村中投手(前ヤクルト)
村中投手(前ヤクルト)

 彼らの中で、NPB経験者は2人。村中と、現在ドジャースとマイナー契約を結んでいる北方悠誠投手だ。かつてはその剛球で「超高校級」と騒がれドラフト1位でDeNAに入団したが、制球難からその才能を開花させることができず、ソフトバンクの育成選手を経て日本の独立リーグへ転身、独立リーグ4球団目の栃木ゴールデンブレーブスでようやく課題の制球難を克服すると、その速球にメジャーが目をつけ、昨年6月にドジャースに移籍した。ドジャースでは、ルーキー級で13試合に登板、さらなる実戦の場を求めてオークランドへやってきた。

北方投手(ドジャース傘下)
北方投手(ドジャース傘下)

 そして2人の独立リーガー。

 高橋康二投手は昨シーズンをルートインBCリーグの福井ミラクルエレファンツでプレーした。独立リーグでのキャリアは3年で、以前所属していたオセアン滋賀ユナイテッドのトレーナーのつてで冬の修業の場を求めてやってきたという。滋賀出身で福井工業大学時代は毎年全日本大学選手権を経験している。残念ながら、シーズン序盤で登板した試合で打ち込まれたせいで、現在はロースターを外れているが、チームには帯同している。多くの選手は、ロースターを外れると、無給となるのだが、高橋投手はよほど期待されているのか、待遇はそのままらしい。オークランドは現在地区首位でプレーオフ進出の可能性が高いが、インポート(外国人選手)の割合が高い分、ポストシーズンになると抜ける選手が多いのが優勝へ向けてのネックとなる。最後までシーズンを全うしてくれる高橋のような存在はシーズン終盤に向けての秘密兵器となることだろう。

高橋投手(福井ワイルドラプターズ)
高橋投手(福井ワイルドラプターズ)

 取材2日目の試合に先発したのは、四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグスでプレーしていた道原順也投手だ。地元国立大学の高知大出身という変わり種で、148キロの速球をひっさげ、独立リーグの門を叩いた。その素材の良さは、昨夏、ルーキーながらリーグの北米遠征メンバーに選ばれ、さらにはNPBチームとの対戦の場であるフェニックスリーグのメンバーに選ばれたことからもわかる。

道原投手(高知ファイティングドッグス)。後方は元ソフトバンクのD.J.カラスココーチ
道原投手(高知ファイティングドッグス)。後方は元ソフトバンクのD.J.カラスココーチ

 さらなる変わり種は、奥本涼太投手だ。高校野球の名門、広島の広陵高校でプレーしていたが、高卒後ニュージーランドに渡り、現在は日系企業でセールスマンをしている。野球はクラブチームで続けていたのだが、オークランド球団立ち上げに際して、そのクラブチーム経由で、「左のリリーフが欲しい」という話が舞い込み、昨シーズンから参加している。本業があるので、ホームゲームのみの登録だが、チーム練習には仕事の後参加しているという。

「日本やアメリカのプロの選手と一緒にできるなんてことはないですから。せっかくのチャンスですし」

 とサラリーマンとの「二刀流」のプロ野球選手生活を送っている。

奥本投手
奥本投手

 3日の試合だが、先発した道原は立ち上がりから快刀乱麻のピッチング。3回までひとりのランナーも出さなかったのだが、4回に安打を許すと、この回ワイルドピッチとホームランで2失点。味方が序盤に大量点を取ったこともあり、5回のマウンドにも登ったのだが、1アウト後、下位打線につかまり、残念ながら降板となった。

3日の試合で先発した道原
3日の試合で先発した道原

「D.J.カラスコ(元ソフトバンク)コーチから言われた通りでした。ストレートは走っている。長いイニングを投げたければ、最初は7、8割で投げろって言われたんですけど、それができませんでした」

 そしてこの試合、最後にマウンドに登ったのは北方だった。この日のどの投手よりも威力のある速球を観客に見せつけた北方だったが、先頭打者をエラーで出塁させると、ホームランを浴び、2奪三振も3失点。終わってみれば9対8の辛勝だった。

この試合を締めた北方
この試合を締めた北方

 

 それでも北方は、「結果は気にしていません。自分の課題を試すためにここでプレーしていますから」と前向きなコメントを残してくれた。

(写真はすべて筆者撮影)

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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