バイデン大統領、イスラエルのドローン迎撃システム「アイアンビーム」「アイアンドーム」視察・協力強化へ
米国・イスラエル共通の敵イランからの攻撃ドローン・ミサイルに対抗
米国のバイデン大統領が2022年7月にイスラエルを初めて訪問。専用機がベングリオン国際空港に到着後に、空港に設置されたイスラエル製のドローン迎撃システムの「アイアンビーム」や「アイアンドーム」などをイスラエルの国防大臣らの案内で視察した。
イスラエルが開発しているドローン迎撃システムの「アイアンビーム」や「アイアンドーム」が想定しているのはイランからの攻撃ドローンである。アメリカとイスラエルの共通の敵はイランであり、イランは攻撃ドローンの開発に注力しておりイスラエルまで飛行可能な軍事ドローンも開発している。またイラン政府がロシア軍に対してウクライナ紛争で使用するためのドローン数百台を提供する可能性があると米国の国家安全保障担当大統領補佐官のジェイク・サリバン氏は語っていた。
▼イスラエルで「アイアンビーム」(左)と「アイアンドローン」(右)を視察するバイデン大統領
イスラエル首相「アイアンビームなら1発500円で襲撃できます」
イスラエル国防省は2022年4月に、上空からの攻撃ドローンやロケット弾にレーザーを使用して防衛する防空システム「アイアンビーム(Iron Beam)」の試験を行い上空のミサイルと攻撃ドローンをレーザービームで撃墜することに成功した。撃墜に成功した動画も公開している。
イスラエルのベネット首相も自身のツイッターで「イスラエルはついに新たな『アイアンビーム』のテストに成功しました。これは世界初のエネルギーを元にした兵器システムで上空のミサイルや攻撃ドローンを1回の発射につき3.5ドル(約500円)で撃墜できます。SF(サイエンス・フィクション)のように聞こえますが、リアルです」と語っていた。
イスラエル軍は2021年にレーザービームによる実証実験も行い、1キロメートル先の上空の攻撃ドローンを撃墜していた。現在は1キロ先の上空のドローンを撃墜できるが、イスラエル軍は将来には100キロワットのレーザーで20キロ先の上空の攻撃ドローンも撃墜することができるようになる。
▼イスラエルの防空システム「アイアンビーム(Iron Beam)」
ハマスからのロケット弾を迎撃した「アイアンドーム」
またイスラエル軍には「アイアンドーム」と呼ばれるミサイル迎撃システムが既に存在しており、2021年5月10日から約3000発のハマスからのロケット弾や攻撃ドローンの9割を迎撃していたと報じられていた。実戦においてもアイアンドームの精度の高さを見せつけていた。アイアンドームは地上にいる人たちや建物への攻撃を回避させダメージを最小化させることが目的。アイアンドームは上空のロケット弾やドローンをレーダーが察知すると、地上からミサイルが発射されて、地上の標的が攻撃されて大惨事になる前に、敵のロケット弾や攻撃ドローンを上空で爆破させる。アイアンビームはアイアンドームよりも低コストで開発、運用ができる。
2021年のイスラエルとハマスの紛争では空爆による空中戦が続けられ、地上にいる市民は恐怖だった。ロケット弾だけでなく、「Kamikaze Drone(神風ドローン)」、「Suicide Drone(自爆型ドローン)」、「Kamikaze Strike(神風ストライク)」とも呼ばれている攻撃ドローンも多く使われている。これは標的を認識すると標的にドローンが突っ込んでいき、標的を爆破し殺傷力もある。2020年に勃発したアゼルバイジャンとアルメニアの係争地ナゴルノカラバフをめぐる軍事衝突でもトルコやイスラエルの攻撃ドローンが紛争に活用されていた。現在のロシアとウクライナの紛争でも多くの攻撃ドローンが活用されている。トルコの軍事ドローン「バイラクタル TB2」をはじめ、アメリカやイギリスからも多くの攻撃ドローンがウクライナ軍に提供されて、ロシア軍の侵攻阻止に貢献している。攻撃ドローンの大群が上空から地上に突っ込んできて攻撃をしてくることは大きな脅威であり、標的である敵陣に与える心理的影響と破壊力も甚大である。
また、ドローンは製造コストも高くないので、大国でなくとも大量に購入が可能であり、攻撃側は人間の軍人が傷つくリスクは低減されるので有益で、これからも様々な紛争で活用されてしまうだろう。そのため、上空からのロケット弾や攻撃ドローンからの防衛は国家の安全保障だけでなく、自国民の人間の安全保障においても不可欠である。米国とイスラエルだけでなく全世界共通の安全保障である。
▼イスラエルのドローン迎撃システム「アイアンドーム」
▼ベネット首相のツイッター