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韓国時代劇『オクニョ 運命の女(ひと)』をより楽しむために知っておきたい史実と人物

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真提供=FA photos)

毎週日曜23時から、NHK総合テレビで放送されている韓国時代劇『オクニョ 運命の女(ひと)』。第1回、第2回の放送では、主人公オクニョの誕生から少女期が描かれていた。

同作品は、『宮廷女官チャングムの誓い』や『トンイ』といった日本でも知られる名作時代劇を生み出した巨匠イ・ビョンフン監督の作品だけに、韓国の歴史や時代背景を知らなくても十分に楽しめる。

が、史実を知っておけばさらに深くドラマを味わうことができるのも事実だろう。

オクニョが生まれた典獄署(チョノクソ)とは

例えば、主人公オクニョが生まれ育った場所で、『オクニョ 運命の女(ひと)』の重要な舞台となっている典獄署(チョノクソ)だ。

そこは朝鮮王朝時代に実際に存在した「監獄」で、囚人を拘束したり、裁判によって決まった刑を執行したりした場所だ。当時は「死刑」でさえ、30日以内に判決が下りて刑が執行されてしまったという。

(参考記事:オクニョが生まれ育った「典獄署(チョノクソ)」とは、一体どんなところなのか

そんな歴史背景を知っていると、ドラマに出てくる囚人たちにも感情移入しやすくなったりはしないだろうか。

それは登場人物に対しても同じだろう。

実在した歴史人物はドラマより個性的!?

主人公のオクニョをはじめ『オクニョ 運命の女(ひと)』には架空の人物が多く登場するが、なかには実在した歴史人物もいる。

例えば第1話と第2話で主人公オクニョよりも存在感を発揮していたユン・ウォニョンだ。劇中では俳優チョン・ジュノが演じていた朝廷の権力者 ユン・ウォニョンは、実在した人物である。

史実によると、生年不詳ながら、家柄はまずまず。役人の家に生まれ、実の姉は1517年に朝鮮王朝第11代王・中宗(チュンジョン)の第3王妃となっている。

ユン・ウォニョン自身は1533年に科挙に合格して主に史官(原稿などを書く官職)を務めていたが、どちらかというと平凡な官僚だったそうだが、そんなうだつの上がらない彼を一躍、出世街道へと走らせたのも姉だった。

中宗の第3王妃だった姉は、1534年にのちに朝鮮王朝第13代王となる明宗(ミョンジョン)を出産。それを機にユン・ウォニョンは、実兄であるユン・ウォンロ(尹元老)とともに権力を握りはじめ、姉の息子を王位につかせようと画策した。

(参考記事:“女帝”の弟としてやりたい放題!! 『オクニョ』に登場する尹元衡(ユン・ウォニョン)とは

実際、明宗が王位につくと、朝廷におけるユン・ウォニョンの権力は相当なものだったらしい。

ドラマでもユン・ウォニョンは権力者としての顔を随所で見せていたが、実際にもそうだったのだ。付け加えると、劇中でオクニョがユン・ウォニョンの運勢を語るシーンも意味深で、そこにこのドラマの重要なポイントが隠されている。

そんなユン・ウォニョンの大きな後ろ盾となったのが、前述した姉であり王母となった文定大妃(ムンジョンテビ)だった。

史実によると、文定大妃は1501年生まれ。前述した通り、1517年には中宗の第3王妃となり、1534年にはのちに第13代王となる明宗を産んでいる。日本でも大ヒットしたドラマ『宮廷女官チャングムの誓い』では文定王后として登場し、思慮深い王妃のような場面も多かった気がするが、史実では相当な悪女だ。

(参考記事:文定大妃とは誰なのか? 『オクニョ 運命の女(ひと)』の鍵を握る“悪女”の実像とは)

というのも、中宗には第2王妃が生んだ長男がおり、その長男が王世子として王位継承者となってそれが第12代王・仁宗(インジョン)となるが、仁宗は在位8か月で崩御。突然の死は毒殺説が有力で、それを裏で画策していたのはわが子を王にしたかった文定大妃だったという説があるのだ。

そして、文定大妃の手先のひとりだったのが、ドラマ『オクニョ』でも登場するチョン・ナンジョンである。

第1話の冒頭で看守に啖呵を切る妓生の女将で、第2話ではユン・ウォニョンの側室であることを嘆く女性だ。

宮殿から差し入れられた駝酪(牛乳のこと)を湯船に入れて入浴してしまうシーンや、オクニョがユン・ウォニョンの自宅に呼ばれて運勢を見る女性と言えば、ドラマをちら見した方々も思い出すだろう。実は彼女も実在する人物なのである。

“朝鮮3大悪女”のひとりも登場

史実のチョン・ナンジョンは“朝鮮3大悪女”のひとりに数えられる人物で、ユン・ウォニョンとともに文定大妃を後ろ楯にして、数々の悪行に手を染めていった。

もともとの身分は奴婢(ぬひ)という最下層だったが、朝廷の高官ユン・ウォニョンの妻にまで上り詰めた女性。数々の悪行に手を染めた彼女の最期は壮絶で、ドラマ以上にドラマチックといえるかもしれない。

(参考記事:悪行に手を染め最下層の身分から高官の正妻に…鄭蘭貞(チョン・ナンジョン)の生涯

他にも、13歳で即位した時の王・明宗(ミョンジョン)など、個性的な歴史人物が登場する『オクニョ 運命の女(ひと)』。本日放映される第3話では、どんな出来事が起こるのだろうか。

少しでも実際の歴史や人物像を知っていれば、放送がますます楽しみになるはずだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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