東京都議会議員選挙・最新議席予測 現場からみた終盤情勢と衆院選への影響を考える
6月25日告示、7月4日投開票の東京都議会議員選挙が始まりました。都民ファーストの会の劣勢が伝えられる中、22日には小池百合子東京都知事が過度の疲労により静養が必要になったと発表され、入院。27日には、入院を継続して数日間程度公務を外れるとの追加発表もあり、「百合子不在」での選挙戦も今日29日で折り返しを迎えます。
筆者は、独自の取材ならびに現場でのヒアリングをもとに情勢分析を行っていますが、告示後の各陣営の動きなども反映させた最新の党派別獲得議席予測を行いました。
告示後の情勢をもとにした最新獲得議席予測
各種情勢調査ならびに現場取材などの情報をもとに筆者が予測した議席数は上記図表の通りで、都民ファーストの会が12、自民党が47、公明党が20、共産党が21、立憲民主党が21、日本維新の会が1、東京・生活者ネットワークが3、国民民主党が0、れいわ新選組が0、古い政党から国民を守る党が0、無所属・諸派が2となりました。
都民ファーストの会は現有議席を大きく減らす可能性が極めて高くなっています。定数1〜2の選挙区では非常に厳しい結果となることが想定されるほか、定数の多い選挙区においても都民ファーストの会の候補者が複数いる場合は共倒れの可能性もあるなど、議席の大幅減は避けられない見通しです。一方、「都民ファーストの会」設立以前から現職都議であった議席や、特にこの4年間で政治活動を拡大していたことで話題の一部議員の議席は守られる見込みです。
一方、自民党は議席を大幅に増やし、都議会第一党となる見込みが強くなっています。前回は複数候補を擁立し共倒れとなった選挙区についても、今回は概ね議席獲得となるでしょう。ただし、一部の選挙区においては引き続き複数候補の擁立によって票が分散し、片方の候補者が当落線上という状況もあるほか、定数1の選挙区においても議席奪還が厳しいとみられる選挙区がいくつかあります。
公明党は、現有議席から議席が減る可能性が出てきました。既に党機関紙の公明新聞では、豊島区と中野区を最重点選挙区として取り扱うなど、危機感をあらわにしています。衆院選直前という時期柄もあり、特に衆院選前哨戦と位置づけられたことにより与野党対決の構図となっていて、かつ都民ファーストの会の候補者も十分に強い選挙区では、公明党候補者が厳しい選挙を強いられています。過去3回の都議選でいずれも現有23議席を死守してきた公明党にとっては正念場です。
共産党は現有議席から上積みを狙える状況となってきました。立憲民主党との野党共闘が概ね東京全域で構築できたことにより、選挙区調整によって議席が増える傾向といえるでしょう。また、前回都議選では都民ファーストの会の爆発的人気により、共産党候補者が煽りを受けて次点となるケースもありましたが、今回は票が散る傾向になることも強みとなっています。
立憲民主党も大幅に議席を増やす勢いです。特に、共産党との野党共闘により候補者調整が行われた選挙区においては与野党それぞれの候補者が議席を分かち合うケースも多く見られます。特に「衆院選前哨戦」と位置づけて野党共闘の実質的体制の構築が完成している選挙区においては、与党候補者を上回る票が出る可能性もあります。
日本維新の会は、現有1議席の維持となる見込みです。党所属国会議員による応援は増えているものの、全国的知名度のある吉村大阪府知事や松井大阪市長はコロナ禍の影響もあり東京入りを控えている様子です。擁立候補者も多くないことから、定数の多い選挙区で現有議席を確保する見込みです。
地域政党の東京・生活者ネットワークは、議席を増やす勢いです。今回の都議選では候補者を3人擁立していますが、立憲民主党との推薦関係もあり、いずれの選挙区でも堅調な動きとなっています。
国民民主党は、今回の都議選では厳しい戦いを強いられそうです。今回の東京都議選では、候補者を4人しか擁立できなかったほか、都議選告示直前には、衆院東京ブロックで出馬予定だった山尾志桜里衆院議員の出馬取りやめ・政界引退が報じられました。
れいわ新選組も候補者を3人擁立しましたが、いずれも厳しい選挙戦となっています。知名度の高い山本太郎代表による街頭演説も、コロナ禍で従来ほどの効果を発揮できておらず、衆院選に向けての東京の素地固めとなるかどうかは未知数です。
古い政党から国民を守る党(28日付で「嵐の党」に名称変更)も、都議選に複数人の候補者を擁立していますが、厳しい選挙戦となっています。
そのほか、諸派・無所属で複数の候補者が立候補をしていますが、ここまで述べてきた政党による推薦を得た無所属候補が複数、当選圏内と見込まれています。
衆院選への影響は
上記に述べたように、東京都議会議員選挙は議席の構図が大きく変わる可能性が高まっています。自民・公明で都議会過半数を獲得できるかどうかが焦点となりますが、都議会過半数を獲得できれば、小池百合子東京都知事は都政運営において自公と協調路線を共にする可能性が高いと言われており、今後の都政運営にも注目が集まります。
さらに、この東京都議選は、秋までには行われる衆院選の前哨戦と位置づけられていることにも注意が必要です。国政政党を持たない都民ファーストの会が与野党の衆院選前哨戦の中で埋没しつつありますが、衆院選が「政権選択選挙」と呼ばれるように、(自民対立憲もしくは共産という)与野党対立構図がこの東京都議選の選挙区でも数多く見られました。自民党が議席としては躍進する勢いではありますが、野党側も一定の議席増が見込まれます。特に、衆院小選挙区で与野党が激戦となっている東京18区の武蔵野市、小金井市は定数1を与野党候補者が激戦と言われているなど、衆院選への影響が必至です。
自民党にとってはこの議席増を武器に、衆院選に向けてさらに選挙戦を加速することが想定されます。野党側は野党共闘が一定の成果を収められれば、この野党共闘の枠組みを衆院選に転用するための動きを加速することになるでしょう。日本維新の会や国民民主党、れいわ新選組は衆院東京ブロックでの議席獲得に向けて、活動方針を転換することも想定されます。
いずれにせよ、衆院選への影響が避けられない東京都議会議員選挙も投開票日まであと5日。激戦となっている注目選挙区を中心に目が離せません。