開発途上国への支援姿勢は「現状維持」が約半数
・開発途上国への開発協力は現状維持を望む人が過半数。
・開発協力を減らすべきだとの意見は2003~2004年ぐらいまで増加。以後は減少。
・年齢階層別では大よそ年上ほど消極姿勢。
日本が新興国などに行っている資金協力や技術協力などの開発協力による支援の姿勢は、今後どのような姿勢で臨むべきなのか。国民の意思を内閣府の「外交に関する世論調査」(※)から確認する。
日本も含めた先進諸国などは開発途上国(新興国)に対し、資金協力(借款、無償援助)や技術協力などの開発協力を行っている。多種多様な影響などを考慮した上で、日本では今後これらの開発協力に関してどのような方針で臨むべきかを4択、具体的には「(現状以上に)積極的に進めるべきだ」「現在程度でよい」「(協力は進めるべきだが規模は現状より)なるべく少なくすべきだ」「やめるべきだ」から1つ、回答者の考えにもっとも近いものを選んでもらったところ、最多回答率を得たのは「現状維持」だった。50.1%と過半数の人がこの選択肢に同意を示している。
あくまでも今件設問上の開発協力の対象は「開発途上国」が前提であり、自前で宇宙にロケットを打ち上げる技術・経済力を持ち、さらに他国へ積極的な資金援助や軍事力の示威行使を行う国は対象外と見なすとの判断をするのが当然で、その上で対象国の情勢を分析し、結局は国毎にケースバイケースで決める必要がある。それを前提とし、全般的な戦略としては、「現状程度」を最良とする考えが支配的なようだ。この考えは多少の上下を繰り返しながらも、中長期的に増えつつある。
一方、「積極的にすべき」「なるべく少なくすべき」との意見は、直近ではそれそれ32.4%・10.3%。歴史的な経緯をたどると、いわゆるバブル崩壊あたりから積極派が漸減し、消極派はそれ以前から漸増していた。その結果、今世紀に入り互いの立ち位置が一時逆になったのは興味深い。
しかしそれも2003年から2004年を転機に、再び積極派の増加、消極派の減少の動きを見せ、現在に至っている。各国、特に近隣諸国における積極的な対外支援が伝えられるようになり、海外市場で日本企業の入札が失敗する事例が報じられ、国際的な日本の立ち位置が低下する気配を見せ始めたのが遠因だろう。
なお属性別に回答動向を見ると、直近分では男性、若年層で積極的協力を求める声が大きい一方で、消極姿勢や停止を求める声は年上ほど回答率が上がる傾向が見受けられる。ただし50代ではイレギュラー的な形で積極的姿勢が強くなるのが目に留まる。
高齢層ほど積極姿勢が見られなくなるのは、日本国内の限られたリソースをどこに配すべきかとの観点で、他の社会保障関連の調査結果同様、将来を見据えるか、自分の手元に残すかなどの判断の違いが表れた結果だと考えれば、道理が通る傾向ではある。
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※外交に関する世論調査
直近分は2017年10月26日から11月5日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を有する人の中から層化2段無作為抽出法によって選ばれた人に対し、調査員による個別面接聴取法によって行われたもので、有効回答数は1803人。男女比は839対964、年齢階層別構成比は10代39人・20代129人・30代200人・40代308人・50代249人・60代402人・70代以上476人。過去も類似の方法で実施されている。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。