【敬語】自分の行動・ものごとに「お」「ご」をつけるのはおかしい?悩みがちな敬語の使い方について解説
この記事では正しいビジネス敬語について解説します。
今回のテーマは、自分の行為・ものごとなのに「お」「ご」をつけていいのか問題です。「いつもなにげなく『お電話します』とか『ご説明します』とか言っているけれど、これって正しい敬語なの?」と疑問に思ったことはありませんか?そんな人も、もう大丈夫!この記事を読めば、その疑問をスッキリ解消できるはず♪
<前提>
尊敬語では、
相手の行為・ものごと・状態に「お」「ご」を付ける
敬語のなかにも分類があり、大きく「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3種類に分けられることは多くの人がご存じの通り。
そして尊敬語のなかには、相手の動作やものごと、状態に「お」「ご」を付けることで、相手を立てる表現があります。たとえば、「お元気ですか?」「ご結婚おめでとうございます」「ご利用ください」などがそうですね。もし、自分側に関することなのに「私はお元気です」「私はご結婚しました」「私はご利用します」といったような表現をしたら違和感があるはず。だからこそ、「自分の行為・ものごとは、すべて『お』『ご』を付けたらNG?」「電話や説明をするのは自分なのに、『お電話』『ご説明』と言っていいの?」と悩む人がいるのではないでしょうか。
<結論>
向かう先に立てるべき相手がいれば
「お(ご)~します」は正しい敬語
しかし結論から言いますと、目上の人に対して「お電話します」「ご説明します」と言うのは正しい敬語です。そのため、明日からも使ってOK!
では、なぜ正しい敬語といえるのか。それは、ここでの「電話」「説明」は、自分の行為であるものの、行為の向かう先に相手(敬意を表す対象)が存在するからです。
文化庁が発表した「敬語の指針」によると、謙譲語は下記2つに分けることができます。
謙譲語Ⅰー「伺う・申し上げる」型
自分側から相手側又は第三者に向かう行為・ものごとなどについて、その向かう先の人物を立てて述べるもの。
謙譲語Ⅱ (丁重語)ー「参る・申す」型
自分側の行為・ものごとなどを、話や文章の相手に対して丁重に述べるもの。
ー「敬語の指針」より引用
「お電話します」「ご説明します」は、(敬意を表す対象である)誰かに対しての「電話」「説明」について述べていますよね。これらの表現は、謙譲語Ⅰ(「お」「ご」を使うことで向かう先の相手を立てる)に分類されるため、正しい敬語といえるのです。
一方、さきほどの「私はお元気です」「私はご結婚しました」「私はご利用します」は向かう先がありません。だからこそ「お」「ご」を付けると、自分に尊敬語を使っているようなおかしな表現になってしまうのです。
<まとめ>
自分側の行為・ものごとであっても向かう先に敬意を表すべき相手がいれば「お」「ご」を付けてOK!
<例:目上の人との電話のやりとりの場合>
〇「お電話いただきありがとうございます」
⇒相手からの電話なので、尊敬語で「お」を付けている
〇「明日、私からお電話いたします」
⇒自分から相手に向かっての電話なので、謙譲語Ⅰで「お」を付けている
一見、同じ「お電話」ですが、「お電話いただき~」は尊敬語、「お電話いたします」は謙譲語を使っていることになります。この違いを理解しておきましょう!
<補足>
名詞についても同じ考え方でOK
~美化語についても知っておこう~
今まで主に「お(ご)~する」の形(行為)について述べてきましたが、ものごと(名詞)についても考え方は同様です。自分側のものごとであっても、向かう先に相手がいれば「お」「ご」を付けます。
<例A>
〇「お返事が遅くなって申し訳ございません」
〇「弊社からご提案がございます」
×「私たちのお荷物をこの部屋に置いてもいいですか?」
×「私のご住所をお伝えします」
しかし、美化語としてであれば、自分側のものごとに「お」「ご」を付けてOK。
美化語とは敬語のなかの丁寧語の一種で、ものごとを美化して述べるもの(「敬語の指針」より)。たとえば「お酒」「お料理」などですね。この「お」は、<例A>の「お返事」などとは違い、所有者や向かう先を立てるための「お」ではありません。
美化語は、誰かに敬意を表すためのものではなく、使うことでその場にふさわしい丁寧な印象を与えるためのもの。そのため、広い意味では敬語(丁寧語)の一種とされています。場合にもよりますが、目上の人に対しては、付けないとむしろ違和感があるもの・乱暴な印象になるものには「お」を付けて話したほうがベターだと覚えておきましょう。
<例B>
×「私の酒はどこですか? 」
○「私のお酒はどこですか?」
×「先生、腹が減りましたね」
〇「先生、お腹が減りましたね」
※「お酒」は「酒」の、「お腹」は「腹」の美化語
どういう美化語なら自分のものごとに使ってOKかというと、人によって感じ方も違うため区別するのは難しいといえます。とはいえ、<例A>の「お荷物」「ご住所」などのように、付けなくても一般的に違和感がないとされるものごとに「お」「ご」を付けるのは避けた方がよいでしょう。自分側のものごと(たとえば自分の所有物など)に使うと、「美化語を使っている丁寧な人」ではなく「自分に尊敬語を使っている人」に見えてしまうのです。
<まとめ>
名詞についても動詞と同様の考え方でOK!
=「自分側のものごとである(行為者、所有者が自分側)」かつ「向かう先に立てるべき相手がいない」場合に「お」「ご」を付けるのはNG
⇒しかし上記の場合でも、美化語は使用OK
※美化語は敬語(丁寧語)の一種。使うことで場にふさわしい言い回しになることも!
いかがでしたか?
今回の記事では、敬意を表す相手に対してのものであれば、たとえ自分側の言動やものごとであっても「お」「ご」を付けてOKということをお伝えしました。もし迷ったら、「これは向かう先に相手がいるかしら?」と考えてみるといいですよ◎
<参考>