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米コーンの作付面積、1週間で韓国の国土面積を上回る

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

昨年のシカゴ穀物市場では、トウモロコシと大豆がともに過去最高値を更新するなど、歴史的な高騰相場が実現した。メディアでも大きく報じられたので記憶している方も多いと思われるが、米穀倉地帯が半世紀振りとも言われる大規模な干ばつ被害に見舞われたことで、最近の遺伝子組み換え技術を以ってしても凶作を回避できなかったためだ。

市場関係者が重視するイールド(単位面積当たりの収穫量、単収)を例にとると、トウモロコシのイールドは2011/12年度の1エーカー=147.2Bu(トウモロコシの1Bu=約24.5キログラム)から12/13年度には123.4Buまで16%低下し、1995/96年度以来で最低を記録している。生育期がトウモロコシよりも遅れる関係で天候障害のショックが相対的に小さかった大豆でも、12/13年度のイールドは前年度の41.9Bu(大豆の1Bu=約27.2キログラム)から39.6Buまで5%の低下を迫られ、こちらは03/04年度以来で最低となっている。

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では、今年の米穀倉地帯は現在どのような環境にあるのだろうか。

今年も例年同様に4月中旬からトウモロコシの作付けが開始されたが、スタートダッシュに関しては、失敗としか形容のできない状態になった。冬場の段階では、昨年の干ばつで疲弊した土壌水分不足の影響が解消されていないことが警戒されていた。しかし実際に作付け期を迎えてみると、季節はずれの寒波に伴う凍結被害に加え、豪雨でミズーリ川流域を中心に洪水被害が発生したことで、作付けが殆どできない状況に陥ったためだ。

米農務省(USDA)が毎週月曜日に発表している「クロップ・プログレス」によると、作付け進捗率は4月14日2%、21日4%、28日5%など、事実上は殆ど作付けが進んでいない。過去5年平均だと、4月28日時点の作付け進捗率は31%であり、概ね2週間程度の遅れが生じたと考えると分かり易い。特に、アイオワ州、イリノイ州、ネブラスカ州といった主要産地では4月末に漸く作付けに着手し始めることができたか否かというレベルであり、最悪の場合には予定されていた作付面積を確保することができず、時間的に作付けに余裕がある大豆への「作替え」といった展開も想定され始めていた。

■米農家の経営効率はサプライズ

しかし、5月に入ると漸く穀倉地帯の天候も安定し始め、作付け進捗率も5月5日12%、12日28%とこれまでの遅れを取り戻し始めた。ただ、例年であれば5月12日時点の作付け進捗率は既に65%に達している所であり、この時点でもトウモロコシの作付けを無事に消化できるのか、予定されていた面積を確保したとしても、通常のイールドを実現できるのかが疑問視されていた。

こうした不安が渦巻く中で、こうした厳しい作付け環境が一変していることが確認されたのが、5月20日に発表された最新の作付け進捗率だった。同統計では、5月19日時点の作付け進捗率が、前週の28%から71%まで、一気に43%も急伸していたことが確認されたのである。過去5年のデータによると、1週間での作付け進捗率上昇は最大でも31%であり、現在の米農家がここまでの作付け能力を獲得していたことは多くの市場関係者にとっても意外だっただろう。

1週間で43%と言っても分かりづらいかもしれないが、これは4,200万エーカー(1エーカー=約4,047平方メートル)に相当する農地で一斉に作付けが行われたことを意味し、韓国の全国土面積の1.6~1.7倍で作付けが行われたのと同じ状況である。米農家経営が大規模化して効率性の追求に成功していることが強く窺える数値である。

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これによって、月末までに予定されていた作付面積を確保する目途が立った形であり、トウモロコシ需給は改めて過去最大の作付面積と向き合う必要性が高まっている。昨年は過去最高の作付け面積を確保したものの、記録的な異常気象を背景に逆に減産を迫られるという想定外の事態に追い込まれたことで、在庫の取り崩しを迫られた。今年は、改めて過去最高の面積を確保して1995/96年度以来の低在庫環境を改善できるかを試すステージを迎えることになる。2年越しの挑戦が、まさにこれから本番を迎えようとしている。

トウモロコシの「作付け→発芽」ステージはよろつきながらも何とか消化した形であり、これからホット・アンド・ドライ(高温・乾燥)という最大のリスクイベントを迎える夏にかけて、イールドの落ち込みを回避できるのかが試されることになる。今後数ヶ月の気象環境は、今年のトウモロコシ価格を決定付けることになろう。

マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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