【富士宮市】苔の住む秘境の地・西沢川が流れる天子ヶ岳登山道への林道沿いに鎮座する『白山神社』
田貫湖から南へ、県道184号線が県道414号富士富士宮線と交差する道路を西へまっすぐに進むと、富士宮市と芝川町を隔てる天子ヶ岳登山道へつづく林道へ差し掛かります。
林道を数キロ進んだ先の左手に、自然と融合した、この世のものとは思えない外観の『白山神社』が鎮座していました。
道路沿いから階段で下った場所に鳥居が、社殿はむしろ道よりも小高くなった場所に鎮座し、神域を囲むような形で西沢川が流れ、鳥の鳴声、風が葉を揺らす音、西沢川のせせらぎだけが、耳に響きます。
階段を下り、鳥居を見上げると、神額には『白山大権現』と記されていました。
神仏習合の信仰である修験道では、日本の神と仏教の仏(如来・菩薩・明王)がともに祀られることがあり、権現(神仏が仮の姿で現れた神)などと神格が表現されることがあります。
神仏分離による権現号廃止がありましたが、ここでは神額にしっかりと『白山大権現』と記されていました。秘境の地ともいえる場所に鎮座しているが故、権現号廃止を免れたのかもしれません。
鳥居をくぐり、西沢川に沿うようにして参道を歩きます。
社殿には急な階段になっており、階段を登り終えたと同時に、社殿の朱色の扉が目の前に現れます。
社殿の神額にも『白山大権現』と記されていました。
『白山大権現』は、『佐折 白山神社』と称されているようで、霊峰白山(石川県)を崇める山岳信仰の神社であり、『白山神社』は全国に3千社ほど分布しているそうです。
市内には『佐折 白山神社』の他に、沼久保の船場に『白山さん』、上稲子『白山神社』がありますが、市内で法人登記されている神社は、ここ『佐折 白山神社(村社)』のみです。
由緒を調べてみましたが、参考になる書物は見つかりませんでした。
富士山(静岡県・山梨県)・立山(富山県)・白山(石川県)は日本三霊山と呼ばれ山岳信仰が盛んな地域でした。
江戸時代、この三山を巡る旅を『三禅定』と呼び、東海地方の人々が盛んに行っていました。(令和5年1月22月、富山県・石川県・静岡県は『日本三霊山』を活用した地域振興の連携・協力協定を締結しています)
手取川、九頭竜川、長良川、庄川というたくさんの大きな川の水源となっているため、水への感謝が山そのものを神体とする山岳信仰となった『白山信仰』。
天子山塊のふもとには富士山からの湧水、そして神域の横を流れる美しい西沢川への感謝から、この場所に『白山大権現』を勧請したのではないかと想像を膨らませていました。
『白山神社』を過ぎ、西沢川に架かる橋を渡ると、舗装が割れていたり、未舗装の悪路になりますので、車で先へ進むことはお勧めできません。
この先は天子ヶ岳のハイキングコースになっているようです。
『佐折 白山神社』は心が洗われるような神秘的な、山懐に抱かれた秘境の神社でした。
佐折 白山神社:富士宮市佐折字小澤195