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金正恩「整形手術」医師2人を処刑…平壌で囁かれる噂

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
17日の中央追悼大会での金正恩氏(朝鮮中央テレビ)

 韓国紙・東亜日報記者で、脱北者出身のチュ・ソンハ氏が自身のYouTubeチャンネルで、北朝鮮の金正恩総書記が、同国の高名な美容整形外科医2人を処刑させたとの脱北者証言を紹介している。

 北朝鮮では、密かに流入する韓流ドラマなどの影響で、美容整形手術を行う人が増えていると言われていたが、金正恩氏はなぜ、医師らを銃殺させたのか。この出来事を巡っては平壌でも、ある種の「噂」が囁かれていたという。

 チュ氏のYouTubeチャンネルに出演して証言を行ったのは、2019年11月に北朝鮮を脱出した脱北男性のチャン・ヒョク氏。理科大学を卒業したインテリで、故国での職業経験も豊富だという。

 チャン氏によれば、医師らが銃殺されたのは2018年のことだ。当時、住んでいた地域の人民班(町内会)から回覧板のような形で、「医師の〇〇〇、〇〇〇らから被害を受けた者は申告せよ」との指示が回ってきた。チャン氏はそれを見て、「彼らの『罪状』を束ねて、処刑の口実にするのだな」と察知した。

 同氏によれば、そうして告発された医師は5人で、うち2人が銃殺となり、ほかの3人は教化所(刑務所)か管理所(政治犯収容所)に送られたもようだという。

 気になるのは、金正恩氏が医師らを銃殺させた理由だ。当時、平壌市民の間では「王族の手術に失敗したのではないか」との噂が囁かれたという。

(参考記事:【写真】機関銃でズタズタに…金正日氏に「口封じ」で殺された美人女優の悲劇

「王族」とはほかでもない、金正恩ファミリーのことだ。つまり、金正恩氏や妹の金与正氏、李雪主夫人や、彼らに連なる「身内」の誰かと関わる整形手術で、ミスを犯したのではないかということだ。

 もっとも、これは庶民による推測のようで、確かな情報が根拠としてあったわけではないようだ。

 実は当時、北朝鮮当局は美容整形を「資本主義の影響」と見て、問題視していたフシがある。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の同年11月の報道によれば、それまでは平壌の一部の女性の間で流行していた美容整形が、しだいに全国に拡散。当局は「腐って病んだ資本主義の退廃的な文化を持ち込み、わが国の社会を蝕む行為」だと非難し、厳しい取り締まりを予告していたという。

 美容整形が流行していたと言っても、誰もが気軽に受けられるわけではなく、そのような「ぜいたく」ができるのは一部の富裕層に限られる。なし崩し的な市場経済化により、貧富の格差拡大が進む中、それを象徴するような美容整形の流行を、当局は放置できなかったのかもしれない。

 とはいえ、こうした分析もまた、推測の域を出ない。金正恩氏の行動の裏には、まったく異なる事情があった可能性も排除できない。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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