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日銀は次回会合でYCC修正はしたくない模様だが

久保田博幸金融アナリスト
(写真:イメージマート)

 日銀の野口審議委員は12日の記者会見で、長期金利は先週に0.8%まで上昇していたが、「1%という上限にはまだ余裕がある」と指摘した。

 次回の金融政策決定会合の開催は10月30、31日に予定されている。それまでに1%に達する可能性は薄いかもしれないが、余裕と言う言葉が使えるほど乖離はない。

 米国の金利上昇に連動したものであり、米金利動向を含めて「もう少し見極めが必要だ」との考えを示した。これは米金利はピークアウトするかもしれないという希望的観測が入っている。米長期金利は再び5%を目指すとの見方も根強いことも確かなのだが。

 野口審議委員はイールドカーブコントロール(YCC)政策について「何か慌てて再度調整が必要とは、現在のところはみていない」と語った。

 これが日銀執行部の見方なのかもしれない。

 ただし、野口審議委員は7月のYCC柔軟化については、講演で「金融緩和の縮小を意味するものではない」と主張した上で、「先手を打って柔軟化していかないと維持が困難になるという性質を持つ」と説明した。

 すでに1%に接近しつつあるなか、先手を打って柔軟化しておかないと、「最悪の場合にはイールドカーブコントロール自体が維持できなくなる可能性もある」(野口審議委員)ということになりかねないのではなかろうか。

 ここまで物価が上昇しているなかにあって、金融緩和の縮小、つまりは正常化すら認めたくない日銀。この背景には政府の意向も見え隠れしているようだ。

 その矛盾がいまのところ顕在化してはいない。しかし、顕在化してからでは対処すらできなくなる懸念もある。経済物価の状況に合わせて、さらに今後のリスクも考慮して、少なくとも金融政策の柔軟性は取り戻しておくべきであろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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