台風21号 なぜ10月に超大型?
台風21号は強風域が半径950キロ「超大型」の台風だ。10月なのに、なぜ「超大型」なのか?最近の研究で「海洋貯熱量」が台風の発達に関係していることがわかってきた。
急発達した台風21号
表紙の雲画像は21日正午の台風21号です。雲は円形を保ち、中心に大きな眼があります。眼の取り巻く雲を「壁雲」といい、この雲が発達していればいるほど、勢力の強い台風です。台風21号の壁雲はとても濃密で、非常に発達していることがうかがえます。また、中心気圧は20日から21日にかけて、24時間で40ヘクトパスカル低下し、急激に発達しました。
「超大型」は全体の約4パーセント
台風21号のもうひとつの特徴は「超大型」であること。台風の大きさは風速15メートル以上の強風域の大きさで決まり、最大級の「超大型」は半径800キロ以上です。台風の右側と左側では風の強さに差があり、左右対称な強風域ではないことが多いです。たとえば、2011年台風6号(超大型)の強風域は南側1200キロ、北側650キロでした。台風にはいろいろと個性があります。
これまで超大型の台風はどのくらいあったのでしょう?1977年以降の台風で調べてみると、全体に占める割合は約4パーセントと非常に少ないことがわかりました。
なぜ10月なのに台風は発達したのでしょう?
答えは海の水温にあります。
こちらは日本近海の海面水温の図(10月20日)です。沖縄の南では水温が29度もあり、平年と比べ1度から2度高くなっています。高気圧に覆われて、晴天が長く続いたことが原因です。
さらに、最近は台風の発達に海面水温だけでなく、海の中の水温が深く関係していることがわかってきました。
台風の強い風により、海水が大きくかき回され、海の中の冷たい水が湧き上がってきます。すると、これまで暖かかった海面は冷えてしまい、台風の発達にブレーキがかかります。台風は一般に海面水温が26度以下の海域に進むと発達が止まります。
でも、海の中まで水温が高ければ、多少かき回されても海面は冷えません。海面から水温が26度になる深さまでの熱量を「海洋貯熱量」といい、台風の強度予報に生かす研究が進められています。
実際、台風21号が北上している海域の水深50メートルの水温は28度くらい、10月といっても海では台風が発達しやすい条件がそろっているのです。
【参考資料】
小出直久,和田章義,檜垣将和,2016:台風強度予報作業における海洋貯熱量情報の活用,平成27年度予報技術研修テキスト,気象庁予報部,137-159.
気象庁ホームページ:海面水温に関する診断表、データ