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芸歴37年。劇場でトリを取り続ける「ショウショウ」が示すプロの流儀

中西正男芸能記者
「ショウショウ」の羽田昇平さん(左)と羽田昇司さん

芸歴37年を数えるお笑いコンビ「ショウショウ」の羽田昇平さん(56)、羽田昇司さん(52)。モノマネを軸にした漫才でどこの舞台でも必ず爆笑をとり、劇場出番のトリを守り続けています。年々賞レースのチャンピオンが誕生する中、確固たる地位を確立する。そのプロの流儀を尋ねました。

「THE SECOND」出場

昇司:今年で芸歴が37年目。考えたら、長いことやってますね。今年の(結成16年以上の漫才賞レース)「THE SECOND」に出場したんですけど、出場者で一番芸歴が長いのが「ザ・ぼんち」師匠。その次が僕らで(笑)。そう考えると、長くやってきたんやなぁと改めて噛みしめました。

また、22日に大阪で「ザ・ぼんち」師匠と二組でのライブ「龍虎」もさせてもらうことになりましたし、新たな一歩として「THE SECOND」に出た意味も感じています。

我々は「М-1グランプリ」予選の司会をやってきたので、勝負の大変さは間近で見てきたつもりやったんです。50歳を超えて、またそこに自分たちが入っていくことに逡巡もあったんですけど、熱血マネジャーの後押しもあって出ました。

昇平:去年も「出てください」とマネジャーから丁寧にお願いされたんですけど、それ以上に僕が丁寧にお断りしまして(笑)。

というのも、漫才の舞台には日々出ていますけど、それとまた戦う漫才の筋肉は違う。僕は不器用ですし、そこにすぐには対応できないと思ったのでお断りしたんです。ただ、1年の準備期間をもらって、もう断るに断れない状況になったので、今年は出場させてもらいました。

昇司:それでもというかね、1年でも競技用漫才の筋肉を作るのは難しいので、普段やっている漫才をところどころ競技仕様に変更する。そんな感じで出場しました。それくらい、劇場でお客さんに楽しんでいただく漫才と、競う漫才は違いますしね。

ただ、実際に出てみて、発見もたくさんありました。こんなオッサンが出ていってもお客さんは温かかったし、普段とは違うところに刺激を受けた感覚もありましたし、種類の違う心地よさを感じることもできました。

昇平:でも、また来年も出るかどうかは分かりませんけどね。僕のスペックがパソコンで言うたら、Windows98くらいなので(笑)、対応が本当に難しくて。

変わらぬ目標。そのために

昇司:「THE SECOND」もたくさん刺激を受けた場ではあったんですけど、昔から今に至るまで僕らの目標が「寄席に出続けること」なんです。そのために何をすればいいのか。そこはこれまでもこれからも休むことなく考えていかないといけないと思っています。

今は全国規模の賞レースもたくさんあるし、それぞれのチャンピオンが毎年誕生するわけです。チャンピオンだけやなく、そこで印象を残したコンビも出てくるので、年間10組くらいは賞レースきっかけに勢いのあるコンビが生まれてくる。それが10年続くと、100組ほど勢いのある若手が出てくることにもなりますからね。

その中で、どうやって劇場に出続けるのか。こんなんね、あんまり声高に言うことではないんでしょうけど、いろいろ考えてはいます。

今はありがたいことに東京・ルミネtheよしもととかに出してもらう時には、たいがいトリを務めさせてもらうんですけど、相方も僕も早くから劇場に入って若い人たちのネタを見るようにしています。

今出てきた若い人たちはどんなものを売っているのか。それがどうお客さんにウケているのか。それを見た上でそのエッセンスを自分たちにも適宜入れてもいます。

「妖怪人間ベム」の主題歌のネタとか、もう30年以上前からやっているネタを今もやっていますし、口調にしても、今の芸人さんからしたらかなり演芸口調というか、芸人口調というか、そういう部分が強いのも僕らのスタイルやとは思います。

そこを大幅に変えると、僕らの意味がなくなってしまう。ただ、何も変えないと、今のお客さんからしたら「口に合わない」となってしまうんじゃないか。そう考えて、提示しているメニューはずっと同じなんですけど、そのレシピを少しずつ時代に合わせて変えているというか、そういうことは心掛けているつもりです。

昇平:あと、僕はついついネタの中で要らんことを言ったりするクセもありまして。それがうまいことハマることもあるのかもしれませんけど、ネタの邪魔をしてしまうこともあります。

出番が終わってから昇司から指摘されるんですけど、何がアカンかったのか。それが分からないと直しようもないし、これは昔からですけど、舞台袖に録音の機械を置いておいて終わってからそれを繰り返し聞くようにはしています。今は携帯電話でも簡単に録音ができますけど、まだテープレコーダーの時代からずっと続けてはいますね。

昇司:あと、賞レースを見ていても誰が優勝するかは気になりますね(笑)。劇場映えするようなコンビが優勝したら、リアルな話、脅威になるとも思いますし、まず見るのは優勝コンビの所属事務所ですね。

もちろん、同じ事務所として吉本興業のコンビに頑張ってもらいたいんですけど、吉本のコンビが優勝したら同じ劇場に出ることにもなりますしね(笑)。ま、もちろん、頑張ってほしい気持ちが何よりなんですけど。

昇平:いやらしい話やなぁ(笑)。

昇司:ネタでこだわっていることですか?これはね、しっかりあるんです。若手の頃に、それこそ「ザ・ぼんち」の里見まさと師匠からうかがったことがネタ作りの核になっています。

あるんですけど、これはね、秘伝のタレのレシピみたいなもんで、自分たちの中にとどめておきたいと思います(笑)。

昇平:もう一つ、いやらしい話やなぁ(笑)。

昇司:ただね、結局は自分たちがどれだけお客さんに喜んでいただけるかですから。そこだけはブレることなく、これからも続けていきたいと思っています。

(撮影・中西正男)

■ショウショウ

1967年7月23日生まれで山口県出身の羽田昇平(はねだしょうへい、本名・粟山健二)と71年9月10日生まれで兵庫県出身の羽田昇司(はねだしょうじ、本名・一色孝紀)が87年に「羽田昇司・昇平」を結成。昇平は「二葉由紀子・羽田たか志」の弟子。昇平は「由紀子・たか志」の実子。95年に「ショウショウ」に改名する。互いにモノマネを得意にし、モノマネを軸にした漫才を確立。オール巨人、柳葉敏郎、小泉純一郎ら、その後あらゆるモノマネタレントがレパートリーにしているネタに早くから着目し、芸人仲間からも一目置かれている。2005年に拠点を大阪から東京に移す。フジテレビ「とんねるずのみなさんのおかげでした」内のコーナー「博士と助手~細かすぎて伝わらないモノマネ選手権~」などに出演。6月22日に大阪・心斎橋PARCO 14F SPACE14でライブ「ザ・ぼんち」とのネタライブ「龍虎」を開催する。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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