タイガー・ウッズ「すべてがグッドだ」。タイガー・フィーバーに沸き返る米国、待たれる初日のティオフ
マスターズ開幕前日の4月6日(水曜)、オーガスタ・ナショナルではタイガー・ウッズが最終決断を明言する瞬間が待たれていた。
昨年2月の交通事故で右足に重傷を負ったウッズは、すでにオーガスタ・ナショナルで練習ラウンドを重ねているが、依然として、木曜からの試合で戦えるかどうかを「試している」状況にある。
5日(火曜)の会見で「今のところ、プレーできると感じている」と語ったウッズの言葉は、ブレーキングニュースとなって全米、いや世界を駆け巡った。しかし、それでもウッズが木曜日の初日の朝にティオフすることが確定したわけではなく、「今のところ」という言葉を2度繰り返したウッズは「明日あと9ホール回る」と付け加えた。
最終決断は、そのあと――そんな「条件付き」だったため、米メディアはウッズが決意を語る瞬間を6日の水曜日も待ち続けていた。
だが、米国のゴルフファンは、すでにタイガーのマスターズ出場を心から信じ、優勝を期待して沸き返っている。SNSも、まさに「お祭り」状態だ。
NHL(ナショナル・ホッケー・リーグ)所属のプロアイスホッケーチーム、ワシントン・キャピタルズの選手たちがリンク入りするところを狙って、「マスターズで誰が勝つと思いますか?」という質問をぶつける場面の動画がSNSで紹介されていた。
マイクを向けられた選手たちは「タイガー!」「タイガーだと思う」「タイガー・ウッズだ!」という具合。
時折り、「スコッティ・シェフラー」「ジャスティン・トーマス」の名前も挙がるあたり、彼らはゴルフが大好きで、マスターズ出場選手の顔ぶれや情報、巷の優勝予想をよく知っていることが伺える。
そんな彼らの大半が「ウッズ出場」はすでに決まったものと受け止め、「ウッズ優勝」に期待を膨らませていた。
その様子は、米国のファン、いや世界中のファンのウッズ・フィーバーの凝縮版のように感じられた。
そんな中、ウッズ本人は、4日(月曜)と同様、6日(水曜)もフレッド・カプルス、ジャスティン・トーマスとともにオーガスタ・ナショナルの後半の9ホールを回り、最終調整を行なった。
下り傾斜を歩く際、少しだけ足を引きずるようにして歩いていたウッズ。12番(パー3)ではティショットを池に落とし、15番(パー5)ではセカンドショットを大きく右に曲げたりもしたのだが、練習ラウンドだからこそ「試している」とも考えられる。
1992年マスターズ覇者のカプルスには、激しい腰痛に悩まされ、成績が下降していった悔しい過去がある。コルセットを付けたまま、このマスターズを何度も戦い、苦痛で顔を歪めることが、かつては何度も続いた。そういう経験の持ち主だからこそ、まだ回復していない右足で挑もうとしている今のウッズのことが、よくわかる。だからこそ、カプルスはウッズに多大なる敬意を抱いている。
「やっぱりタイガーはタイガーだ。僕は35歳で腰を痛め、試合に出ても、『ただプレーするだけ』になってしまった。でもタイガーは違う。すでに何度も勝っているけど、それでも彼は『ただプレーするだけ』にはせず、戦おうとしている。そして今、タイガーの準備は完了したと言っていいと僕は思う。タイガーが右足に痛みを感じながらプレーしていることは僕にも伝わってくる。でも彼はオーガスタの戦い方を知っている」
かつての米国のビッグスター、カプルスから太鼓判を押されたウッズは、最終18番でフェアウエイを捉えると、第2打をピン2.5メートルに付け、マスターズ開幕前の練習ラウンドをバーディーで締め括った。
練習グリーンでパット練習も終えたウッズは、待ち受けていた米メディアに向かって、こんな一言を口にした。
「すべてグッドだ」
7日(木曜)の初日の朝、ウッズがティオフする可能性は、限りなく高まり、ファンの期待と興奮は青天井だ。
世界が待っているのは、もはやウッズの「明言」の瞬間ではなく、彼がティオフする瞬間、そして勝利に向かって邁進する熱い戦いだ。
その瞬間、その戦いは、「きっと」間もなくやってくる。