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ガザからの最新報告

土井敏邦ジャーナリスト

イスラエルでの仕事を求め殺到する住民(撮影・ガザ住民)
イスラエルでの仕事を求め殺到する住民(撮影・ガザ住民)

 今年5月のイスラエルによる「ガザ攻撃」から5ヵ月、ガザは今、どうなっているのか。

 ガザ在住のジャーナリストが10月7日、以下の現状報告を送ってきた。

 「前回のガザ攻撃で住居を失ったホームレスの住民は今なお状況は変わらず、苦しんでいます。『再建プロセス』はいまだ始まっていないからです。冬が間もなくやってきますが、彼らにはまだ家がないのです。

 ハマスの「軍事的な冒険」と腐敗に、住民は以前に増して苛立っています。前回のガザ攻撃は人々の精神状態をいっそう悪化させました。「2014年のガザ攻撃(注・死者約2300人、負傷者約11000人、家破壊約18000軒)よりもさらに壊滅的」と言う人もいます。

 貧困率はさらに増加しています。何千人という若者がガザ脱出を試みています。

 250万人のガザ住民のうち新型コロナウイルスの予防ワクチンを受けられた人の数は現在、35万人だけです。何週間も前から感染の新たな波が押し寄せています。病院では毎日、新型コロナウイルスによる死者が登録されています。

イスラエルでの仕事を求め殺到する住民(撮影・ガザ住民)
イスラエルでの仕事を求め殺到する住民(撮影・ガザ住民)

 全ての住民が経済状態がよくなることを渇望しています。ほとんどの住民には仕事がないのです。

 2日前、イスラエル政府が2500人のガザ住民にイスラエルでの出稼ぎを認めると発表しました。その2500人の枠に応募するために多くの人々が殺到しました。その痛々しい写真を見れば、ガザの住民どれほど地獄のような状況の中で生きているか想像できると思います」

ジャーナリスト

1953年、佐賀県生まれ。1985年より30数年、断続的にパレスチナ・イスラエルの現地取材。2009年4月、ドキュメンタリー映像シリーズ『届かぬ声―パレスチナ・占領と生きる人びと』全4部作を完成、その4部の『沈黙を破る』は、2009年11月、第9回石橋湛山記念・早稲田ジャーナリズム大賞。2016年に『ガザに生きる』(全5部作)で大同生命地域研究特別賞を受賞。主な書著に『アメリカのユダヤ人』(岩波新書)、『「和平合意」とパレスチナ』(朝日選書)、『パレスチナの声、イスラエルの声』『沈黙を破る』(以上、岩波書店)など多数。

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