癌についての質問にAIが答える時代!医師とチャットボットの回答を比較調査
今回は、癌に関する質問に対する医師とAIチャットボットの回答を比較した興味深い研究について、皮膚科の視点からお話ししたいと思います。
近年、医療分野でもAIの活用が急速に進んでいます。特に、皮膚がんの診断においては、AIが医師の診断精度を上回ったという研究結果も報告されています。そんな中、癌に関する患者の質問に、AIチャットボットがどのように答えるのか、医師の回答と比べてどうなのか、という点に注目が集まっています。
【癌に関する質問への医師とAIの回答を比較】
今回取り上げる研究では、オンラインフォーラムに投稿された200の癌関連の質問に対し、3つのAIチャットボット(GPT-3.5、GPT-4、Claude AI)と6人の腫瘍専門医が回答。その回答の質、共感性、読みやすさを比較評価しました。
その結果、最も高評価だったClaude AIの回答は、質(3.56対3.00)、共感性(3.62対2.43)、読みやすさ(3.79対3.07)のすべてにおいて、医師の回答を上回りました。また、Flesch-Kincaid Grade Level(FKGL)で測定した読みやすさは、医師の回答(10.11)とClaude AI(10.31)で同等でしたが、GPT-3.5(12.33)とGPT-4(11.32)は医師より低い結果となりました。
チャットボットの共感性の高さは、臨床現場でのチャットボットの活用の可能性を示唆しています。例えば、チャットボットが共感的な回答テンプレートを作成し、医師がそれを医学的に正確になるよう編集する、といった活用法が期待されます。
【皮膚がん診断へのAI活用の可能性】
皮膚科の視点から見ると、皮膚がんの早期発見・診断へのAI活用は大きな可能性を秘めています。実際、AIを用いた皮膚がん診断システムが医師の診断精度を上回ったという研究結果もあります。AIによる画像解析と、チャットボットによる患者とのコミュニケーションを組み合わせることで、より効率的で正確な診断が可能になるかもしれません。
皮膚がんは、早期発見・治療が非常に重要です。しかし、自覚症状が乏しいことも多く、専門医の診断を受けるタイミングを逃してしまうケースもあります。そこで、AIチャットボットを活用し、患者さんが気軽に皮膚の症状や不安を相談できる環境を整備することが、早期発見につながる可能性があります。チャットボットが患者さんの質問に答え、必要に応じて専門医の診察を勧めることで、適切なタイミングでの医療介入が期待できます。
【医療現場へのAI導入における課題】
一方で、AIを医療現場に導入する際には、いくつかの課題もあります。まず、AIの判断の根拠や限界を明確にし、医師による監督の下で使用する必要があります。また、プライバシーやセキュリティへの配慮、AIへの過度な依存を避けることも重要です。
医療データの取り扱いには細心の注意が必要です。患者さんの個人情報を保護しつつ、AIの学習に必要なデータを収集・活用するための体制づくりが求められます。さらに、AIの判断をブラックボックス化せず、その根拠を明確に説明できるようにすることも重要な課題の一つです。
医師とAIチャットボットが協力し、それぞれの得意分野を生かしながら患者さんをサポートしていく。そんな未来の医療の姿が見えてきたようです。癌や皮膚がんなど、患者さんの不安や疑問に寄り添い、最適な医療を提供していくために、AIという新しい"仲間"と手を携えていきたいと思います。
<参考文献>
1. Chen D, Parsa R, Hope A, et al. Physician and Artificial Intelligence Chatbot Responses to Cancer Questions From Social Media. JAMA Oncol. Published online May 16, 2024. doi:10.1001/jamaoncol.2024.0836