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元BIGBANGのV.Iの”棄却”でも収まらぬ波紋。韓国芸能界の「悪夢」はいつまで続くのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
元BIGBANGのV.I(写真:ロイター/アフロ)

韓国芸能界の衝撃が収まらない。韓国や日本はもちろん、世界で人気を博したBIGBANGの元メンバー、V.Iの逮捕状が棄却された。

性売買斡旋、不法映像物撮影と流布、横領、食品衛生法違反などの容疑を受けていたV.Iは5月14日、拘束前令状実質審査(被疑者尋問)を受けた。審査後に補縄に縛られた状態で留置場に移動したが、結局のところ逮捕されることはなかった。

V.Iは逮捕状が棄却されると、一日も経たないうちに体育館で運動を楽しんだという。そんな態度に韓国国民は非難の声を上げており、この問題はまだまだ続きそうだ。

(参考記事:元BIGBANGのV.Iが“余裕の笑み”…逮捕状棄却後すぐに趣味の運動を楽しむ

韓国芸能界を震撼させた“V.Iスキャンダル”

振り返れば“V.Iスキャンダル”に包まれたこれまでの期間は、韓国芸能界にとって「悪夢の3カ月間」だったといえるだろう。

そもそも事の発端は、V.Iが経営に関わっていたクラブ「バーニングサン」で暴力事件が発生したことだ。去年の11月のその事件をきっかけに、バーニングサンで性的暴行や麻薬販売が行われているとの疑惑が浮上。今年2月に入るとクラブに関係するV.Iにも、投資家たちへの“性接待”疑惑が降りかかった。

V.Iと所属事務所は当初、疑惑を否定していたが、被疑者として警察に立件されたことで、V.Iは「私はここまでのようです」と芸能界の引退を宣言。それでもスキャンダルは収まるどころか、広がっていく一方だった。

皮肉なことに、V.Iの華麗な人脈が仇となり、次々と芋づる式に“仲間たち”の悪行が暴かれていったのだ。

“仲間たち”が次々と拘束、立件される

最も代表的なのは、歌手チョン・ジュニョンだろう。彼は女性との性交渉を盗撮した動画を仲間内で共有していた。現在はすでに容疑を認めている彼だが、その驚愕の素顔は衝撃的だった。

他にも元FTISLANDチェ・ジョンフンが拘束され、ロイ・キムやエディ・キムといった芸能人らが次々と立件された。スキャンダルの余波が「どこまで広がっていくのか」という不安の声が出たほどだ。

そんななかで、今度はパク・ユチョンの薬物疑惑が浮上。韓国芸能界は新たなスキャンダルに見舞われることになるが、V.Iとパク・ユチョンの捜査の進捗は対照的でもあった。

パク・ユチョンと比較し、捜査当局にも疑惑が

パク・ユチョンは拘束され、麻薬使用を認めているが、疑惑が浮上してから拘束されるまでの期間がV.Iに比べて非常に短かったのだ。

その理由について、スポーツソウルの取材に応じた関係者は「パク・ユチョンの麻薬使用疑惑は、身体押収捜索令状などを通じて早くに結果を示すことができる一方で、V.Iは関与疑惑が多い割には、性売買斡旋などは決定的な証拠を見つけることが難しい」と話していたそうだが、事件を捜査する警察当局に対する疑惑が生まれるほどだった。

(参考記事:JYJユチョンにだけ“速戦即決”で進む警察の捜査…「V.Iから関心をそらすため?」

そうした中でパク・ユチョンが薬物使用を認め、世間の目がふたたびV.Iに注がれるようになり、韓国芸能界全体を揺るがす特大スキャンダルの“火付け役”が、いよいよ逮捕されるかと思われたが、最終的に逮捕状は棄却された。

この結果に世論は納得しておらず、現在、大統領府の国民請願では、「逮捕状を棄却した判事の解任を要求」する声も上がっており、当分その余波は収まりそうにない。

逮捕状が棄却された翌日、バーニングサンでの問題を最初に提起した人物が逆にセクハラと暴行、業務妨害などの疑いで起訴され検察に送致されるなど、新たな波紋も呼んでいる。

さらに言えば、パク・ユチョンの元恋人で日本でも“ミルク姫”の別名で有名になったファン・ハナがバーニングサンに出入りしていたことも明らかになり、韓国の追跡報道番組『それが知りたい』は芸能人の名が書かれた「ファン・ハナリスト」なるものが存在する可能性があるとも報じている。

V.Iはこのまま軍に入隊する?

そんな中で注目されているのが、今後の展開だ。6月中にV.Iが入隊するとの予想が出ているのだ。

もともとV.Iは今年3月に入隊する予定だったが、議論が巻き起こると、自ら入隊の延期を申請。そして3カ月の延長が認められて現在に至っている。

警察もその延期期間中に捜査を終わらせるという立場で捜査を続けていたが、今回逮捕状が棄却されたことで、V.Iがそのまま6月にも入隊する可能性が高まっているというのだ。これについて一部からは、「軍隊に“逃避”する気だ」との怒りの声も上がっている。

いずれにしても、韓国芸能界を揺るがす特大スキャンダルにおいて、最も重要な人物とされるV.Iが逮捕を免れたことで、今後の展開はさらに予想しづらくなった。

はたして、このまま事態が一気に収束に向かうのか、それとも今後新たな事実が明らかにされるのか。もう少し様子を見る必要がありそうだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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