女子高生の買春で逮捕の男、次回渡すからと約束の3万円を払わず 詐欺になる?
SNSで知り合った16歳の女子高生に3万円を渡すと約束し、札幌のホテルで性交等に及んだとして、34歳の男が逮捕された。次回会ったときに2回分渡すと言って別れたものの会わず、支払わなかったという。
買売春は違法
男の逮捕容疑は児童買春罪だ。実際に現金を渡さなくても、渡す約束をした上で性交等に及べばアウトだからだ。男は1月29日に逮捕され、相手が18歳未満だと分かっていたと供述して容疑を認めているという。
事件は昨年11月のできごとだが、SNSの捜査で発覚したというから、警察がサイバーパトロールの過程で女子高生の書き込みを発見し、直接接触する「サイバー補導」を行い、男との関係を把握したということだろう。警察は余罪の捜査も進めているという。
では、男が当初から代金を支払うつもりなどなかった場合、次回渡すと嘘をついて3万円の支払いを免れたことになるから、財産上不法な利益を得たということで、詐欺罪に問えるだろうか。
まず、民事的な話だが、「援助交際」といった呼び方をしていても、その実態は売春防止法が禁止する買売春にほかならない。買売春そのものは処罰の対象外だが、違法であることは確かだ。
そうすると、性交等の対価として現金を支払うという買売春契約は公序良俗に反する無効なものだから、買売春の代金に関して法的な権利義務が発生することはない。踏み倒されたら泣き寝入りするほかないし、逆にいったん支払えば「不法原因給付」になるので返せとは言えなくなる。
刑罰による保護に値するか
こうした民事上の法的関係を前提とすると、女性には売春代を請求する権利などないのだから、刑事罰による保護にも値せず、男に詐欺罪は成立しないということになりそうだ。1952年に札幌高裁もそう判断している。
ところが、民事で保護される利益と刑事で保護される利益とを別のものととらえ、売春代は詐欺罪の対象になるという考え方も有力だ。1955年の名古屋高裁が示した見解であり、次のような理由を挙げている。
・契約が無効か否かということと、刑事上の責任の有無とは本質が異なる。
・詐欺罪のように他人の財産権の侵害を本質とする犯罪が処罰されるのは、単に被害者の財産権の保護にあるのではなく、違法な手段による行為に社会秩序を乱す危険があると認められるからである。
・社会秩序を乱す点においては、売春の際に行われた欺罔手段でも通常の取引におけるものと何ら異なることはない。
この問題については、まだ最高裁の判例がない。しかし、逆に売春をする意思がないのに、これらがあるかのように装って男から金を得たというケースについては、先ほどの名古屋高裁と同様の理由から福岡高裁が詐欺罪の成立を認め、最高裁も1958年にこれを正当であると判断している。
その意味で、買売春であっても計画的な代金の踏み倒しがあれば詐欺罪に問えると考えられるが、実際に立件される可能性は低いだろう。買売春を正当化することになりかねないし、金額も低く、それこそ今回のようなケースだと児童買春罪や青少年保護育成条例違反で処罰できるからだ。(了)