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「僕 結婚しないんじゃなくて、今はできないんです」ハイクラス独身男性20人の本音

大宮冬洋フリーライター

TBSのドラマ『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』を毎回録画して熱心に見ている。中谷美紀が演じる主人公のみやびは、39歳の開業医。高学歴、高収入(1500万円という設定)、容姿端麗だが長いこと恋人がいない。いざ結婚をしようと活動を始めると、見当違いな言動ばかりをしてしまう。「最強の恋愛弱者」みやびに業を煮やした知人の十倉(藤木直人)は彼女に「スパルタ恋愛指南」を行う。

この指南が面白くて実践的なのだ。演技と演出はコミカルで温かみがある。だから、深刻になり過ぎない。「婚活」に悩む女性にとっては、大笑いながら恋愛ノウハウを学ぶことができる稀有なドラマだと思う。

筆者は、楽天オーネットとともに、みやびが32歳ぐらいまでに狙うべきだった独身男性たちにインタビュー調査を続けている(連載はこちら)。すなわち、20代半ば~30代後半までのハイクラス男性である。「ハイクラス」とはあくまで婚活市場におけるもので、大企業の正社員もしくは公務員・医者・弁護士などの難関国家資格の取得者で、安定的に稼いでおり、コミュニケーション能力も高い男性を指す。

本日公開予定の20人目(国家公務員)を含めて、ほぼ全員が有名大学もしくは大学院の卒業者で、平均年収は800万円を超える。平均値を押し上げている外資系IT企業のエンジニアと商売上手の弁護士、商社マン、勤務医を除いても約640万なので、稼いでいるアラサー女性にとっても「合格点」の男性たちと言えるだろう。彼らは匿名とはいえ無償のインタビューに快く応じてくれた。遊び心もあって気配りができる感じの良い男性であることが多い。

結婚相談所に登録すれば女性会員からのオファーが殺到するような男性たちなのだが、恋人がいる人はちょうど半数の10人に過ぎない。大学を卒業以来、誰とも付き合っていないという男性もいる。恋人がいる場合も結婚にはなかなか踏み切れない。取材をしてから半年後ぐらいに近況を聞くと、「あのときの彼女とは別れました」と報告されることもある。

インタビューでは、彼らの生活と仕事の現状を聞き取ったうえで、「結婚願望はあるのか」「どんなときにどのような相手ならば結婚したいと思うのか」などの質問をぶつけている。「将来的にも結婚するつもりはない」と答えた男性は皆無だったのは予想通りで、結婚後は共働きを希望する人が大半だったのは現代的だと感じた。女性のキャリアも尊重するからこそ、地方転勤や海外留学で遠距離恋愛になる際に「結婚して僕について来てほしい」とは切り出せずに別れてしまったりする。

「いずれは結婚したい。でも、仕事がひたすら忙しい。時間があればもっと勉強したい。転職をする可能性もある。趣味も手放したくない。だから今は結婚できない。妙齢の女性とお付き合いして長く待たせるわけにはいかない」

このように話す男性が多いのが印象的だ。しかし、女性としては座して待っているわけにはいかない。筆者にはドラマの十倉のようなスパルタ恋愛指南はとてもできないが、キーワードを2つ抽出するとすれば「安心感」と「危機感」が必要だと思う。

まずは安心感。高学歴・高収入の男性の多くは着実で保守的だ。生活や仕事のレベルが下がる要素を無意識のうちに回避する傾向が強い。だからこそ、業界や会社、学校、家庭環境などが共通する高学歴・高収入の女性を結婚相手に選ぶことが多い。

ナンパや合コンで出会った見ず知らずの美女と付き合うこともあるが、その相手と結婚して家族になることは考えていない。選良意識があるというよりも、「生活観や仕事観が違う過ぎる人と結婚したら今まで積み上げて来たものが崩壊してしまう」という恐れがあるのだろう。慎重かつ向上心も強い彼らには、「結婚しても生活はあまり変わらない。むしろ、より良くなるかもしれない」という安心感を伴う見通しが必須なのだ。

次に危機感。出産年齢を意識する女性に比べると、アラサーの男性は危機感が薄い。「他に優先したいことがあるので今すぐの結婚は無理。でも、5年後ぐらいには素敵な人と出会って幸せな家庭を築けるだろう」とぼんやりと考えている。大規模な自然災害を経験する、近親者が大病を患う、自分が明らかに老化する、などの大きなショックがない限りは身軽な独身生活をそのまま続けようとするのだ。

では、アラサー独身女性としてはどう攻めるべきか。

安心感に関しては、彼らと同じような学歴や職歴がない場合にも可能性はある。学校や会社というスペックは異なったとしても、生活や仕事に対する姿勢と実績で彼らの共感と尊敬を勝ち取ることはできるからだ。親きょうだいの人柄や関係性も重要だ。ポイントは「結婚しても生活はあまり変わらない。むしろ、より良くなるかもしれない」という安心感を持たせることだと覚えておいてほしい。

危機感を演出するのは難しい。「結婚してくれないなら別れる」と切り出したら、「じゃあ、仕方ないね」と去っていく確率は低くない。そのリスクは負うしかない。ただし、言い方は重要だ。前述の言い方だと「あなたとは恋愛ではなく結婚がしたい。結婚しないなら付き合っている意味はない」という響きを持ってしまい、男性のプライドを傷つけて自信と意欲を失わせかねない。

「あなたと一緒にいると安らぐし、これからはもっと楽しくなる予感がする。大好きだよ。でも、私は今年中には婚約したい。あなたが今は結婚ができないと言うなら、本当に残念だけどお別れするしかないね。今までありがとう」

しばらく付き合って「この男性となら」と思えるのであれば、このような趣旨の言葉を冷静に伝えよう。別れてしまうリスクはもちろん残るが、これに勝る危機感の演出は筆者には思いつかない。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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