日航機と海保庁機の衝突炎上事故で、中国人が乗務員の冷静な避難誘導以上に感動した「あること」
1月2日、羽田空港で日本航空機(516便)と海上保安庁の航空機が衝突、炎上した事故で、日航機から乗客乗員379人が全員無事に脱出できたことは、英BBCなどをはじめ海外メディアで「奇跡の18分」「すばらしい」と称賛されているが、中国でも「まるで教科書のような緊急避難」というフレーズがSNSで拡散され、感動の輪が広がっている。
奇跡の脱出劇は、多くのメディアでも報道されているように、客室乗務員(CA)の冷静で的確な避難誘導があったからこそだ。中国でも「日本人はふだんから避難訓練をしっかりやっていて、疎かにしていない。いざというときに原則をしっかり守り、スムーズに誘導できたのは、紛れもなく日頃の地道な訓練の成果だ」というCAへの称賛がある。
だが、複数の中国人の知人に話を聞いてみると、それ以上に「あること」に感動したという声があった。
日本人の「素質」に感動
都内在住のある中国人は見事な脱出劇をニュースで見て感動し、自然と涙がこぼれたという。
「やはり日本人の“素質”(民度、素養などの意味)はすばらしいと改めて感じました。乗客が撮影した短い動画などを見ると、子どもが『早く出してください』と大声を出したり、赤ちゃんが泣いたりしている以外、怒鳴っている人などはほとんどいませんでした。実際、機内にいた人の談話などを記事で読むと、多くの人が冷静にCAの指示に従っていたようです。
これは中国ではとても考えられないこと。もし中国で同じような事故が起きたらどうだっただろうかと考えると、空恐ろしいです。中国ではふだんでも、機内でCAのいうことに耳を傾けず、足を前の座席の上に平気で乗せたり、音を出してアイパッドで映画などを見たりしている人がいます。
緊急事態が発生したら、CAを罵倒するだけでなく、殴ったり蹴ったり暴力をふるう人もいるでしょう。もしそうなったら、大混乱になり、CAの声もかき消されてしまうのではないかと思いました」
CAのプロ意識以上に感動したこと
北京に住む別の中国人もこう語る。
「CAが取った冷静な避難誘導は称賛されるべきもので、日本人にとっての当たり前は、海外では当たり前とはいえないものだ、とつくづく思いました。
とくに、慌てて不用意に脱出口を開けず、冷静に安全な脱出口を見極めたり、機長が最後まで逃げ遅れた乗客がいないか確認してから、いちばん最後に脱出したというエピソードには感動しました。日本人の仕事に対するプロ意識には頭が下がりました。
しかし、それ以上に、自分が感動したのは、乗客一人ひとりが取った行動です。乗客がCAの話をよく聞き、『自分は金持ちだから先に脱出させろ』とか、他人を押しのけて自分は何としても最初に脱出しよう、などという自分勝手な行動は取らなかったことに感動しました。
中国でお金があれば、ファーストクラスやビジネスクラスに乗れますし、高級ホテルのスイートルームにも泊まれます。でも今回のような緊急事態や、たとえばビル火災などがあったとき、周囲の人々がどういう行動を取るかが、自分の生死も分けると思います。
なぜなら、自分ひとりだけでは絶対に脱出できないから。つまり、緊急時にはそこでたまたま一緒になった人々の行動、集団の心理、国民性が大きく影響すると思うのです。たとえすばらしいCAがいたとしても、大多数の人がそれに従わず、勝手なことを言ったら、自分だって助かりません。その点で、日本人はすばらしい。
いざというとき、自分は日本にいたらきっと助かると思いましたね。今回、能登地震など日本で次々と不幸な出来事が起こっていますが、ぜひがんばってほしいと遠くから祈っています」