エネルギーショックを受けた世界的な長期金利の上昇
ロシアのプーチン大統領は天然ガスの輸出量を増やす可能性を示唆し、世界のエネルギー市場安定化を支援する用意を表明した。
欧州の天然ガスの指標価格となる「オランダTTF」は5日に、初めて1メガワット時当たり100ユーロを突破した。6日には155ユーロまで上げ、過去最高値を連日で大きく更新した。
再生可能エネルギーによる発電を進めていたドイツなどで風力発電の目先の稼働率が鈍る見込みだと報じられたが、主要調達先であるロシアからの供給停滞懸念が続いていることも天然ガスの価格急騰の背景にある。もちろん投機的な買い仕掛けも入っていたようである。
プーチン大統領の発言を受けて、利益確定売りが入るなどかなり荒れた動きとなっていた。
フィナンシャル・タイムズは米戦略石油備蓄放出の可能性を報じた。こちらは原油価格の上昇を抑えようとの動きにもみえる。
原油先物価格は天然ガス高騰を受けて代替需要が増加するとの観測が強まったこともあってWTI先物は節目の78ドル近辺を抜けてきている。
中国やインドでの石炭へのニーズの強まりもあり、天然ガスや原油、石炭といったエネルギー価格が急騰し、金融市場では国債市場にも動揺が走り、エネルギー・ショックといった様相となっている。
6日に米10年債利回りは一時1.57%に上昇した。米長期金利の上昇トレンドは、今年3月あたりに1.7%台に乗せたところでいったん終了したかにみえた。しかしその後、8月に一時1.2%を割れたあたりから切り返し、あらためて1.7%をうかがうような動きとなりつつある。
ドイツの10年債利回りも一時マイナス0.15%近辺に上昇し、こちらは直近の高値のマイナス0.10%をうかがうような動きとなっている。
日本の10年債利回りも6日に0.080%に上昇した。こちらは6月7日以来の水準となる。
エネルギー価格の上昇は物価の上昇圧力となる。このためFRBは予定通り、11月のFOMCでテーパリングを決定することが予想される。
イングランド銀行も正常化を進めることが予想され、正常化に慎重なECBもすでに実質的なテーパリングを開始しており、その動きを加速させることもありうるか。
日銀については少なくとも金利の正常化には距離を置いている。今後は国債増発なども意識され、さらなる国債利回りの上昇も予想される。しかし、その際には上昇を抑制するような動きに出ることも予想される。