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ジョニー・デップの裁判でアンバー・ハードがついた嘘が発覚。コスメ会社が告発

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 ジョニー・デップとアンバー・ハードの名誉毀損裁判で、ハードがついた嘘がバレた。嘘を発見したのは、ミラニ・コスメティックスというビューティブランドだ。

 この裁判で、デップは、ハードに対してはもちろん、女性に対して暴力をふるったことは一度もないと述べている。ハードの主張は逆。彼女は、2016年5月、デップのDVを理由にデップに対する接近禁止命令を申請しており、顔にあざがある写真を公開していた。

 しかし、ふたりが住んでいたL.A.ダウンタウンのペントハウスに勤める人などからは、ちょうどその頃にノーメイクのハードを見たが顔にあざはなかったなどという証言が出ている。それを意識してのことだろう、ハードの弁護士はこの裁判の冒頭陳述で、丸い容器の中に4色のコンシーラーがセットになった商品を高々と掲げて、「これは、ジョニー・デップと一緒だった頃、アンバーが必ずバッグに入れていたものです」と陪審員に語ったのである。

あざを隠すのに使っていたというコスメを陪審員に見せるハードの弁護士(CourtTV)
あざを隠すのに使っていたというコスメを陪審員に見せるハードの弁護士(CourtTV)

「彼女は女優さんです。ノーメイクで外出したりすると思いますか?あざや傷がある顔を人に見せたりすると思いますか?彼女はこれを使っていたのです。彼女はこれを使うのがとても上手になりました。違った色をどうやって混ぜるかについては証言で本人が語ってくれると思いますが、状態によって混ぜ方を変えて隠すのです。それに、アンバーは、寝室を出る時は必ずファンデーションをつけていました」とも弁護士は述べた。  

 弁護士は、商品の名前を具体的に出してはいない。だが、この裁判はCourtTVがライブ配信をしており、多くの人がこの状況を見ていた。そして、それが自分たちの商品だと気づくと、ミラニ・コスメティックスは、「それはありえない」という事実をTikTokへの動画投稿で伝えたのだ。

 彼らによる短い動画は、裁判で座っているハードの顔でスタート。そこには「一緒にいる間、ずっとバッグに入れていた」というキャプションがついている。次に画面は、弁護士が見せた物と明らかに同じ商品である、ミラニ・コスメティックスの「All-in-One Correcting Kit」に移り、最後に「2017年にデビュー」という文字が出ているウェブ画面で終わる。この投稿にはまた「お答えしましょう。私たちの記録によると、Correcting Kitが発売されたのは2017年です!」というメッセージがついていた。

 もっと正確にいうと、この商品が発売されたのは2017年12月である。ハードがあざのある顔で接近禁止命令を申請しに行った時から1年半以上も後のことだ。

 この告発は、当然のことながらデップのファンを興奮させた。ソーシャルメディアには「私はジョニーに勝ってほしい。だから、ミラニ・コスメティックス、ありがとう」「ミラニ・コスメティックスが、アンバーがまたもや嘘をついたことを証明してくれた」などと、このブランドを絶賛するコメントが寄せられている。ハードが今もロレアルのアンバサダーを務めていることから、「ロレアルの代わりにどのコスメを使おうか考えている人、ミラニがおすすめです」「私が100%支持するコスメブランドはディオールとミラニ。私が100%ボイコットするのはロレアル」というようなコメントも見受けられた。

 ハードへのDV疑惑が浮上してからもデップを香水の広告に使い続けているディオールは、デップのファンから絶大な指示を受けている。ミラニもこの一件で急速に知名度とファンを増やしたのは確実だ。

「自分はDVの被害者だった」とデップが証言

 ハードが証言する番になった時、デップの弁護士がこの件についてどう訊問するかが注目される。一方、デップは、現地時間今週月曜、4日間にわたる証言を終えた。最終日の証言で、自分はDVの被害者だったのだとデップがきっぱり述べたのは印象的だった。

 この発言は、デップの弁護士が法廷で再生した会話の録音を受けてのもの。この録音の中で、ハードは「みんなに言いなさいよ。世界に言いなさい。『僕、ジョニー・デップはDVの被害者です』って。誰が信じると思う?」とデップに言っている。そこで弁護士が、「あなたはそれに対してどう言いたいですか?」と聞くと、デップは「イエス。そうです」と答えたのだ。その瞬間、ハードは非常に苦い表情を見せた。

 デップの弁護士が再生した別の録音音声では、デップがハードに公に向けて一緒に手紙を書こうと提案している。世間から注目を浴びず、自分たちで問題を解決しますと宣言するべきだと、ハードを説き伏せようとしたのだ。デップは「DVについても僕らは(世間に向けて)語らないといけない。君はなぜあんなこと(デップにDVを受けていると世間に語ったこと)をしたんだ?」と言ったのだが、それに対しハードは「あなたがそうさせたのよ」と泣き声で答えている。

 この裁判は、ふたりの離婚が成立して2年近く経つ2018年12月、ハードが「Washington Post」にDVの被害者として書いた意見記事をめぐるもの。記事の中で名指しこそされていないが、加害者がデップを指すことは誰の目にも明らかで、デップは名誉を毀損されたとしてハードを訴訟し、ハードも彼を逆訴訟した。

 デップは、彼の代表作である「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズを降板させられたのはこの記事が原因だと主張している。だが、ハード側は、デップの評判はその前から悪く、この記事は直接関係ないとはねつけている。「パイレーツ〜」を降ろされた心境について、デップは「あのシリーズは僕が築き上げたもの。あの役には僕自身がたくさん入っている。セリフの書き直しもよくやった。(ディズニーとは)長い関係を培ってきたのに、『なぜ、突然?』と思った」と、証言台で語っている。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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