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NY金11日:続落、ドル急伸で年初来安値更新が続く

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

COMEX金4月限 前日比-9.50ドル安

始値 1,161.10ドル

高値 1,164.30ドル

安値 1,146.50ドル

終値 1,150.60ドル

為替市場でドル高傾向が持続する中、ドル建て金相場は続落した。

アジア・欧州タイムは1,160ドル台前半で下げ渋ったが、ニューヨークタイム入りと前後して売り圧力が一段と強まり、一気に1,150ドルの節目を下抜いている。その後は短期的な目標達成感からショートカバー(買い戻し)が下値を支えるも、1,150ドル台前半から中盤まで戻すのに精一杯であり、安値圏での取引が続いている。

ギリシャ債務問題を巡る再協議が始まっているが、現段階では特に新しい動きなどは伝わっておらず、債務不安のリスクプレミアム加算を進めるような動きは見られない。逆に、欧州中央銀行(ECB)の量的緩和で域内国債利回りに低下圧力が強まる中、ユーロは対ドルでのダウントレンドを維持し、ユーロ安(ドル高)圧力が、ドル建て金相場の上値を圧迫するフレームが続いている。ユーロ/ドルは、1ユーロ=1.055ドル水準まで値下がりしており、現在のユーロ安・ドル高ペースが維持されると、月内にも1ユーロ=1ドルのパリティ(等価)が実現する可能性さえある。ドルインデックスも99.73ポイントまで上昇しており、100ポイントの大台が目前に迫っている。ややドル高ペースには過熱感も強いが、米国と他国の金融政策スタンスの違いは際立っており、「ドル高→ドル建て金相場下落」のフローに修正を迫るのは容易なことではない。

既に金上場投資信託(ETF)市場でも換金売り圧力が強くなっている一方、アジア現物需要は投機売りを吸収できるレベルに到達していない。1,150ドルの節目もあっさりと下抜く中、来週17~18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けて、昨年安値(1,130.40ドル)を試すリスクが高くなっている。

目先の反発シナリオは、1)FOMC前のポジション調整、2)ギリシャ債務不安の蒸し返し、3)急激なドル高に伴う金融市場の混乱、4)現物需要の拡大などが考えられ、これらの動向次第では一時的に反発するリスクはある。ただ、ドル建て金相場下落の基調判断に修正を迫るような動きに発展しないのであれば、なお戻り売り優勢の地合が続こう。ドル相場の水準などと比較すると、現行価格に下げ過ぎ感は乏しく、寧ろ依然として割高な値位置と評価している。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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