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ウクライナ軍、ロシア軍の12個レンズ搭載の監視ドローン「Kartograf」撃破:レアで米国でも報道

佐藤仁学術研究員・著述家
「Kartograf」(ウクライナ軍提供)

米国Newsweekも報道、珍しいロシア軍の監視ドローン

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。

ウクライナ軍では2022年2月24日にロシア軍に侵攻されてから殺害したロシア軍の兵士の数、破壊した戦車、戦闘機など兵器の数をほぼ毎日公表している。ウクライナ軍では破壊したドローンのなかで、監視・偵察ドローンと攻撃ドローンの内訳は明らかにしていないが、9月7日までに破壊したドローンは880機を超えている。

ロシア軍は主にロシア製の偵察ドローン「Orlan-10」で上空からウクライナの監視・偵察を行っている。またロシア製の攻撃ドローン「KUB-BLA」や「ZALA KYB」で攻撃を行っている。

そして2022年9月にはロシア製の監視・偵察ドローン「Kartograf」がウクライナ軍によって破壊された。ロシア軍が「Orlan-10」以外の監視ドローンを使用しているのは珍しいが、最近ではロシア軍の監視・偵察ドローン「ZALA 421-16Е2」がウクライナ軍によって破壊されていた。ウクライナ軍によると両機ともにめったに見られないロシア軍の監視ドローン。「Kartograf」は12個のレンズを搭載している。

今回、ロシア軍のめったに見られない監視ドローン「Kartograf」が撃破されたこともニュースバリューがあるため、ウクライナのメディアだけでなく米国メディアNewsweekでも「Rare Russian Drone 'Kartograf' Shot Down by Ukrainian Forces(珍しいロシア軍ドローン)」というタイトルで取り上げて報じていた。

ロシア軍が頻繁に使用している監視ドローン「Orlan-10」は日常的にウクライナ軍によって撃破されているので、このように欧米の大手メディアでニュースになることはもはやない。

ウクライナ軍では迎撃して破壊したロシア軍の偵察ドローン「Orlan-10」や攻撃ドローン「KUB-BLA」の残骸の写真や地対空ミサイルを発射して上空で撃破する動画を投稿して世界中にアピールしている。

▼爆破されたロシア軍の監視ドローン「Kartograf」

監視ドローンは検知したらすぐに爆破へ

上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破する、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。爆弾などを搭載していない小型の監視・偵察ドローンならばジャミングで機能停止させる"ソフトキル"で迎撃できるが、中型から大型の攻撃ドローンの場合は対空機関砲や重機関銃のような"ハードキル"で上空で爆破するのが効果的である。

地対空ミサイルシステムや防空ミサイルのような大型システムで監視ドローンを攻撃して爆破させるのはコストもかかるし、大げさかと思うかもしれない。しかし監視ドローンこそ検知したらすぐに破壊しておく必要がある。監視ドローンで敵を検知したらすぐに敵陣をめがけてミサイルを大量に撃ち込んでくる。監視ドローンとミサイルはセットで、上空の監視ドローンは敵からの襲撃の兆候である。「Kartograf」のように12個のレンズを搭載した監視ドローンはあらゆる角度から精度の高い写真、動画を撮影することから発見したらすぐに機能停止させるか、徹底的に爆破した方がよい。また部品を回収されて再利用されないためにも徹底的に破壊することができる"ハードキル"の方が効果的である。

▼爆破されたロシア軍の監視ドローン「ZALA 421-16Е2」

▼日常的に爆破されているロシア軍の監視ドローン「Orlan-10」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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