「味仙」の台湾ラーメンが昔よりメッチャ辛くなっているのはなぜか? ラーメンライターが解説!
「味仙」。
名古屋エリアのご当地ラーメンである「台湾ラーメン」の元祖として知られるお店だ。
「台湾ラーメン」は台湾ミンチをのせたニンニクの効いた辛いラーメンのこと。
醤油ベースのスープに唐辛子でダイレクトな辛味を付け、ニラやミンチでかなりジャンクに仕上げた一杯だ。東海地方を中心に広がってきたご当地ラーメンだが、今では東京や大阪の大都市圏でも提供するお店が増えてきている。今ではカップ麺なども発売されていて、全国に知られるラーメンだ。
「味仙 今池本店」の会長で台湾出身の郭明優さんが1970年代に台湾の麺料理「担仔麺(タンツーメン)」を元にアレンジした賄い料理がルーツとされる。
実は台湾に実際にあるメニューではなく、郭会長が台湾をイメージして作ったオリジナルな一杯だ。郭会長は昨年3月29日に82歳で亡くなり、多くの「味仙」ファンは涙した。
「台湾ラーメン」のブレイクは80年代に訪れた第一次激辛ブームがきっかけだ。
1984年に湖池屋から発売された「カラムーチョ」が大ブレイクし、メキシカンをヒントに考案された旨辛なスナック菓子で多くの激辛ファンを生んだ。
その後、時代に合わせて激辛ブームは訪れており、「味仙」の台湾ラーメンもその人気を不動のものにしている。
「味仙」は名古屋エリアにいくつかお店があるが、お店ごとに味やメニュー構成が微妙に違う。実は「味仙」は郭5兄弟がそれぞれのエリアで独立して運営しているお店だからである。
かつて名古屋で中華料理店「万福」を営んでいた郭宗仁さん、郭汪蘭さんの子供たち5兄弟が各地でそれぞれ開業し、台湾ラーメンなどの基本メニューはあるものの、味付けはそれぞれの個性に任せているのである。
故・明優さんの開いた今池本店が台湾ラーメンの元祖として知られるが、それぞれの「味仙」にファンがいるのも面白い。
「味仙」の台湾ラーメンは店ごとに味が違うだけでなく、時代に合わせてどんどん味が変化していると感じる。
筆者も「味仙」は好きで、名古屋に出張に行くたびによく訪れているのだが、2021年に今池本店に行った時、台湾ラーメンがあまりに辛くなっていて驚いた。今池本店は夜のみの営業で、お酒を飲んだ後に訪れる人も多いお店だが、深夜に食べても目が覚めるレベルの辛さだった。
真っ直ぐな辛さで味も濃い「矢場味仙」
そして、先日久しぶりに矢場町にある「矢場味仙」を訪れた。
「矢場味仙」は郭5兄弟の長女・黎華さんの営むお店で、1981年創業。
開店前から行列のできる超人気店。250席の大箱だが、入り口で店員さんに席番号を告げられ、そこに座る。
1人一本ずつ紹興酒の空き瓶に入ったお水が置いてある。
ここで久々食べた台湾ラーメンも恐ろしく辛かった。真っ直ぐな辛さで味も濃いめ、ニンニクも挽肉も粗め。全部が強めの「味仙」だ。
「矢場味仙」は昔からどのメニューも辛めで濃いめの味つけが特徴だったが、それにしても辛かった。辛さの秘密は岐阜県中津川の唐辛子「あじめこしょう」だ。
今池本店も昔より辛くなっている気がするが、それより辛い気がした。店内は唐辛子とニンニクを炒めた煙でむせ返るようで、筆者を含めクシャミをこらえているお客さんが多数。
80年代から続く激辛ブームも進化を遂げ、今は超激辛の「ストロング系」の時代とも言われる。
「蒙古タンメン 中本」が大ブレイクし、セブン-イレブンのカップ麺、冷凍麺などでもおなじみの存在に。辛さだけではなくシビレ成分である「麻(マー)」が注目され、新商品も多数出てきている。刺激のある激辛系のメニューが次々生まれる中で、「味仙」の台湾ラーメンもパワーアップしているに違いない。
台湾料理 矢場味仙
愛知県名古屋市中区大須3丁目6−3
052-238-7357
※写真はすべて筆者による撮影