自主返納などをするつもりの運転免許保有の高齢者、その理由の実情
高齢者の人口比率の増加や一人暮らし世帯数の増加などを主な原因とし、高齢者による自動車の交通事故が社会問題化している。その対応策の一環として進められているのが、高齢者に運転免許の自主返納などを勧める動き。その動きに沿う形で、運転免許を自主的に返納しようと考えている高齢者は、具体的にはどのような理由で返納しようとしているのだろうか。その実情を内閣府が2021年3月に発表した調査「高齢者の交通安全対策に関する調査(令和3年3月)」(※)の結果を基に確認する。
次に示すのは調査対象母集団のうち、現在運転免許を保有していて、将来には自主返納などをしようと考えている人に対し、具体的な返納理由を複数回答で尋ねた結果。
現在運転免許を保有する高齢者で、将来自主返納などをしようと考えている人における、その理由のトップは「高齢ドライバーが関連する重大事故のニュースを見た」。46.4%が同意を示している。それこそ毎日のように伝えられる、そして加害側の高齢ドライバーが事故の自覚をしていないことまでもあることを見聞きするに、自分も同じような事故を起こしかねないとする不安が強まり、それならば事故を起こす前に自動車の運転はあきらめようと考えているのだろう。
続いて多いのは「自身の運転に自信がなくなってきた」で32.2%。老化や病症などにより安全運転を確保し続けるだけの判断力や視力、体力などが確保できなくなっているとの自覚が、自主返納などをしようとの判断に結び付いているものと考えられる。実のところトップの理由と似たような話で、体力などの衰えで安全運転が難しくなり、それを原因として高齢ドライバーが関連する事故のようなものを自分も起こしかねないという図式である。第3位の「自身で運転するのが疲れるようになった」もほぼ同じ理由。
運転免許の自主返納関連の話では必ずといってよいほど出てくる、他人からの返納の勧めに関しては、第5位の「家族など周りの人に勧められた」で9.6%にとどまっている。
今設問は複数回答だから、メインではなく副次的な理由でも挙げられるはずで、それでも1割足らずでしかない実情を鑑みるに、家族からの返納の声はほとんど届いていないと見てよいだろう。無論「家族など周りの人に勧められた」が自主返納などを考えていない人もたくさんいるはずで、運転免許を保有する高齢者に対し、家族などから運転免許の自主返納を勧める声をかけているのは1割足らずでしかないという意味ではない。高齢者自身の自主返納への動きにはつながりにくいというまでの話である。
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※高齢者の交通安全対策に関する調査(令和3年3月)
2020年12月から2021年1月にかけて65歳以上の人に対してインターネット経由で行われたもので、有効回答数は1500人。免許保有者は832人、自主返納者などは668人。都市区分では都市部在住者416人・地方都市在住者416人・その他417人・過疎地251人。都市区分に関しては「都市部」は特別区や指定都市、「地方都市」は中核市や施行時特例市、「過疎地」は過疎地域自立促進特別措置法により過疎地域とされている市町村、「その他」は都市部・地方都市・過疎地以外の市町村。「自主返納者など」は運転免許の全部の自主返納者および一部の自主返納者、免許を更新せずに置いておき、そのまま自主的に失効させた人。
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