高市早苗氏 ロシアから「経済制裁の反撃としてのサイバー攻撃」への対策呼びかけ
「特に、電力、ガス、水道、金融、医療、航空など、重要インフラ14分野」
ロシアのウクライナへの侵攻に伴い、岸田文雄首相は2022年2月25日に「力による一方的な現状変更の試みで国際法違反だ。断じて許容できない。厳しく非難する」と語り、ロシアへの追加の経済措置をとることを発表した。
ロシアへの経済措置の報復としてロシアからのサイバー攻撃が懸念され、日本政府や経済産業省はサイバーセキュリティ対策の強化を呼びかけていた。2022年1月から2月にかけてウクライナの金融や重要インフラに大規模なサイバー攻撃が行われ、社会が混乱していた。ロシアはサイバー攻撃を否定しているが、ロシアからのサイバー攻撃だろう。経済産業省では国内企業や業界団体に、本人認証の強化やデータのバックアップなどサイバー攻撃対策の強化を求めていた。
また自民党の高市早苗政調会長も、自身のツイッターで「経済制裁への反撃として、ロシアからのサイバー攻撃が増える可能性があるからです。特に、電力、ガス、水道、金融、医療、航空など、重要インフラ14分野の関係者の皆様には対策の徹底をお願い申し上げます」と呼びかけていた。
高市氏は2021年の自民党総裁選の出馬会見の中でも安全保障の観点からのサイバーセキュリティ対策、極超音速兵器対策、海外に最先端技術が流出してしまうことを回避するための経済安全保障の重要性を主張。高市氏は総裁選出馬前から明確な国家観をもってサイバーセキュリティや経済安全保障の必要性と重要性を常に訴えていた。
「消耗戦」からサイバー攻撃による「麻痺戦」へ
軍事介入といったいわゆるリアルな紛争が消耗戦で、サイバー攻撃は麻痺戦である。現代社会は軍事だけでなく民間の重要インフラもインターネットに依拠している。そのため重要インフラへのサイバー攻撃は直接的な攻撃による破壊と同様に影響を及ぼす。
サイバー攻撃による麻痺戦は「情報に依拠した武器や指揮系統」を麻痺させることが目的だ。重要インフラへのサイバー攻撃によって直接的および間接的に軍事、安全保障にも影響を与える。また社会混乱を引き起こすことで相手国へダメージを与える効果が大きい。情報通信技術がさらに発展し、電力、通信、金融、鉄道などの民間インフラもサイバースペースに依拠するようになった。大国になればなるほど民間インフラ、個人ともにサイバースペースへの依拠が高くなる。
また、戦時下や戦争前の状態だけでなく平時の際にも敵国のシステムに対して常時サイバー攻撃を行い続けることができる。相手のシステムの中枢や周辺の民間インフラ、関連組織などへサイバー攻撃を仕掛け、システム破壊や停止などを行うことによって敵国の社会や経済活動を混乱させたり、ダメージを与えることができる。サイバー攻撃はまさに相手を麻痺させる効果がある。そして消耗戦のように軍事介入しなくとも相手国にダメージを与えたりすることができるので、このような経済制裁の報復手段としてサイバー攻撃は有効である。ロシアは関与を否定しているが、ウクライナは大規模なサイバー攻撃を受けて社会インフラを麻痺させられ、経済活動は混乱し、市民の日常生活にも影響が出ていた。
サイバー戦争は「プログラミング戦争」である。システムやプログラミングのバージョンアップや、新たなシステムが追加される過程においても多くの未知のバグや脆弱性が入り込むことが多い。システムの脆弱性を突いてシステム内に侵入し、その組織の秘密情報を窃取したり、システムを破壊したりすることによって運用を麻痺させることがサイバー攻撃である。そしてサイバースペースの防衛は国家の秩序や安定にとって重要である。