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ストライクゾーンを制す者はゲームを制す。NPB新記録も狙えるヘイグの選球眼

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年

開幕6試合で早くも6打点。阪神・ヘイグは18打数8安打で打率.444と助っ人として申し分ない働きを見せている。二塁打3本に本塁打1本と長打力も併せ持ちOPSは1.370と抜群に高い。しかしそれ以上に驚異的なのが選球眼。ボール球にほとんど手を出さず、ここまでに投じられたボール球65球のうち58球を見極めている。しかも開幕5試合、21打席を終えた段階では空振りによるストライクが1つも無かった。昨日の試合の第2打席で来日初の空振り三振を喫したが、依然としてボール球の見極め率は89.23%と非常に高い。オープン戦10試合で四球はわずかに1つだけだったが、すでに7つの四球を選んでいる。3AでMVPに輝いた広角に打てる中距離打者は三振の少なさと四球の多さでも好成績を残していた。

セイバーメトリクスでは四球に対する評価が高い。その理由は得点との相関関係が打率よりも高い出塁率に大きく影響することに加えて、年度によっての変動が小さく成績が安定しやすいためだ。チームにはヘイグ以外にも選球眼の良い打者が揃う。昨季、四球を1つ選ぶのに要した打席数の少なさはリーグトップ10に鳥谷、ゴメス、福留の3人がランクインしている。昨日のヤクルト戦では同点の延長11回、ルーキー・高山の安打の後にヘイグ、ゴメス、鳥谷が四球を選び、押し出しにより一時は勝ち越しに成功。現在チーム安打数49に対し被安打は68、相手より安打数の多かった試合は2試合だけだが2位に8差をつけるリーグトップの32四球の甲斐あって3勝2敗1分とまずまずのスタートを切っている。

リーグ屈指の安打製造機だったマートンは、打てる球が来れば積極的に打ちに行くタイプで昨季の四球は約19打席に1つとかなり少なかった。そのため鳥谷、ゴメス、福留の3人が打率よりも出塁率が8分から1割高いのに対してマートンは4分しか変わらない。ヘイグでマートンの穴は埋まるか、というのが今季の阪神のポイントの1つだが、このタイプの違いも鑑みれば、ヘイグの打率がマートンを少々下回ることになろうとも十分に埋まると考えられる。ヘイグは現在、3.86打席に1つの四球を選んでおりフル出場して600打席に立つとすれば年間155四球ペースだ。仮にこのペースでシーズンを終えると歴代2位の記録を樹立することになる。四球のシーズン記録は

1位 王貞治 158個 (1974年)

2位 王貞治 142個 (1966年)

3位 王貞治 138個 (1965年)

4位 王貞治 130個 (1967年)

5位 金本知憲 128個 (2001年)

さらに6~11位までも全て王貞治だ。そびえ立つ壁は果てしなく高いがヘイグが世界の王に近づくほど、金本阪神が優勝に近づくことは間違いない。

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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