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世界トップのパラアスリートがひしめく横浜パラトライアスロン。土曜日6時50分レーススタート!

佐々木延江国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表
記者会見が行われ4人のアスリートが登壇した。写真・PARAPHOTO/内田和稔

 5月13日に始まる横浜トライアスロンの開幕を飾るレース「ワールドトライアスロンパラシリーズ横浜大会」に世界から70名のパラトライアスリートが出場する。

 パラリンピックのトライアスロンはリオ大会(2016年)で正式種目となったスプリントディスタンス(25.75km/スイム0.75km、バイク20km、ラン5km)のトライアスロンで、横浜では2012年より毎年行われている。特徴は、男・女のクラス分けのほか、車いす(=PTWC)、立位(=PTS2〜5)、視覚障害(=PTVI)のクラスがあり、障害の程度によってさらに分かれていること。さまざまな障害のあるアスリートがオープンエアの会場で競い合う姿を、ぜひ生で観戦し、その魅力・迫力を感じてほしい。

トップ選手の記者会見が開催された

 今回の横浜大会には、来年のパリパラリンピックへ向けたトップ・クラスのアスリートがモチベーション高く集まった。

スザナ・ロドリゲス(スペイン/PTVI)

昨年の横浜大会でバイクパートを走るスザナ・ロドリゲス 写真・PARAPHOTO/山下元気
昨年の横浜大会でバイクパートを走るスザナ・ロドリゲス 写真・PARAPHOTO/山下元気

 5月11日、記者会見に参加した東京パラリンピック金メダリスト、過去横浜の大会で何度も優勝した女王スザナ・ロドリゲスは次のように語った。

「日本はとても遠いしお金がかかるので躊躇するところもあるんですが、今度のパリに向けて今シーズン初めてのレースを横浜からスタートさせたのは、この大会が素晴らしい大会であること、ホスピタリティーがとても素敵だということで、日本も大好きなので、良い形でスタートしたいなというところから日本に来ました。なので、すごいモチベーション上がってますし、楽しみにしているところです。

記者会見で話すスザナ・ロドリゲス 写真・PARAPHOTO/内田和稔
記者会見で話すスザナ・ロドリゲス 写真・PARAPHOTO/内田和稔

 来年のパリのイベントも大切ですが、今年のワールドパラシリーズの最終戦が自国(スペイン)であるので、まずそこに向けていく。そしてそれが来年につながっていくというところなので、とにかく一個一個大切に試合を頑張っていくというところにフォーカスしています」

マルティン・シュルツ(ドイツ/PTS5

ドイツのマルティン・シュルツ(PTS5) 写真・PARAPHOTO/内田和稔
ドイツのマルティン・シュルツ(PTS5) 写真・PARAPHOTO/内田和稔

 ドイツのマルティン・シュルツは、「今年の夏にある(パリでの)テストイベントは来年のコースを知ることできる大切なイベントになる。まず走ってコースを見るところにもポイントを置いておきたいが、一番大切なのは、今年のグランドファイナルに向けてどう一つ一つのレースをクリアしていくか。一つのプレイスをどうやって戦っていくか、自分でステージをクリアしていくのか?というところにフォーカスを置いています。準備を一個一個する、それがちゃんと来年のパリにつながっていく。フランスはドイツからとても近いので、それも楽しみにしています」と語った。

注目の戦いは、男子PTS4、アレクシVS宇田

 東京パラリンピック銀メダリスト・日本の宇田秀生(PTS4/NTT東日本・NTT西日本/滋賀)のライバルは、来年のパリパラリンピック開催国フランスからくるアレクシ・アンカンカン。東京パラリンピック金メダル、昨年の横浜大会でも優勝し、つねに宇田の前を行く。二人の戦いが今回一つのハイライトといって良いだろう。

宇田秀生(PTS4/NTT東日本・NTT西日本/滋賀 写真・PARAPHOTO/内田和稔
宇田秀生(PTS4/NTT東日本・NTT西日本/滋賀 写真・PARAPHOTO/内田和稔

「僕の目標は、パリ大会でまた表彰台に上がること。計画的にトレーニングを積んでいるのが今の僕の生活です。自分の成長に喜びを感じながら、しっかりこれから一つ一つとレースを楽しんで精一杯走っていけたらなと思います。東京以降、僕のカテゴリーには選手が増え、新しいライバルとのレースもこれから楽しんでいけたらなと思っています。

昨年の横浜でスイムアップするフランスのアレクシ・アンカンカン 写真・PARAPHOTO/秋冨哲生
昨年の横浜でスイムアップするフランスのアレクシ・アンカンカン 写真・PARAPHOTO/秋冨哲生

(フランスの)アンカンカン選手は、本当に強いので、スイム・バイク・ランと現状一つも勝てないっていうのが今の実力です。そんな中でもスイムで彼の背中を見れる位置に上がってくるっていうのが、ポイントになってくるのかなと思っています。東京では全く見れなかったので。スイム上がった時点で彼の背中を見ることさえできれば、強い気持ちでバイクランで追い上げていける自信がある。近々のレースだと東京の時よりは僕のスイムのタイムは縮まっている」と宇田は話していた。

PTS2女子に秦由加子がレース復帰戦

 見応えのあるクラスとして人気のある立位最重度障害のPTS2(大腿切断)では、女子の顔ぶれが圧巻であり、東京パラリンピック金メダリスト、横浜でも首位を重ねてきたアリッサ・シーリーほか、東京2位のヘイリー・ダンズ、ベテランで昨年横浜1位のメリッサ・ストックウェルらのアメリカ勢が出場する。

 このクラスでは、日本の秦由加子(PTS2/キヤノンマーケティングジャパン・マーズフラッグ・ブリヂストン/千葉)が今シーズンからレースに復帰した。彼女たちによるファンを魅了するレースが見られることだろう。

 秦由加子(PTS2/キヤノンマーケティングジャパン・マーズフラッグ・ブリヂストン/千葉)は今シーズンからレースに復帰 写真・PARAPHOTO/内田和稔
秦由加子(PTS2/キヤノンマーケティングジャパン・マーズフラッグ・ブリヂストン/千葉)は今シーズンからレースに復帰 写真・PARAPHOTO/内田和稔

秦は記者会見で次のように話していた。

「私は昨年横浜大会を応援に来て、(ライバルの)選手たちがみんな頑張っている姿を見て、私自身すごい刺激になりました。一昨年足の手術をして昨年1年間はレースに出られない時期を過ごして、そうこうしている間にもうパリが来年に迫ったというところで、この一年間はすごく大事な一年間になる。世界ランキングを一つづつ上げていくことが今回の目標になります」

車いす女子のトップ争いも見逃せない

 女子のPTWC(車いす)での注目は、東京パラリンピック1位のケンダル・グレッチ(アメリカ)、2位のローレン・パーカー(オーストラリア)が出場し、ハンドサイクル、車いすのトップ・クラスが揃い、熱い競争が期待できる。

昨年のPTWC優勝マグリット・アイデマ(NED)のバイクパート 写真・PARAPHOTO/内田和稔
昨年のPTWC優勝マグリット・アイデマ(NED)のバイクパート 写真・PARAPHOTO/内田和稔

 ただし、レーススタートが朝6時50分と早朝のため見逃さないよう注意が必要だ。

 翌日の5月14日(日)には、エイジグループ1,740名が参加するレースも開催され、パラトライアスロンには40名がエントリーしている。このレースは、パラリンピックに向けたカテゴリーではないが全国のさまざまな障害の選手が目標にしているレースであり、この2日間でパラトライアスロンの見どころが堪能できることだろう。

(取材編集協力・そうとめよしえ 校正・地主光太郎)

国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表

パラスポーツを伝えるファンのメディア「パラフォト」(国際障害者スポーツ写真連絡協議会)代表。2000年シドニー大会から夏・冬のパラリンピックをNPOメディアのチームで取材。パラアスリートの感性や現地観戦・交流によるインスピレーションでパラスポーツの街づくりが進むことを願っている。

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