脱北者「3万人時代」が目前…金正恩体制は「拷問・監視」で対抗
脱北者数の増加に、拍車がかかっている。
7日、韓国統一省の集計として報じられたところでは、1月から6月末までに韓国に入国した脱北者は749人で、前年の同じ時期に比べ22%増加した。先月、5月末までの統計が明らかにされた時点では、前年同期比16%増(約590人)とされていたから、その後の1カ月でかなり加速したことになる。
「美女脱北」で虐待激化
韓国に入国する脱北者の数は2009年には2914人に達したが、金正恩政権になって以降、減少傾向が顕著で、2012年に1502人、2013年に1514人、2014年に1397人、昨年は1276人となっている。北朝鮮当局による、脱北の厳罰化が効いている模様だ。
だが、今年は現在のペースが続くと、年間の脱北者数は約1500人となる。また、韓国に居住する脱北者の数は6月末で2万9543人だが、10月には3万人を突破する可能性がある。
増加に転じた背景として考えられるのは、核実験・ミサイル発射に対する国連制裁の影響だ。制裁により、海外に赴任している外貨稼ぎの担当者たちが、ノルマ未達で下されるペナルティーに負担を感じ、逃亡の道を選んでいるのだ。
そんな中、北朝鮮当局は国民に対する締め付けをますます強めている。最近では、秘密警察である国家安全保衛部(以下:保衛部)が、スパイ事件に関与した疑いで300人の住民を逮捕したとのニュースが伝わっている。
4月に発生した北朝鮮レストラン従業員らの集団脱北のような出来事が繰り返されるのを警戒し、海外に派遣した労働者の監視も厳しい。中国に300人もの保衛部員を急派したとされているほか、ロシアでは、逃亡を試みた派遣労働者に保衛部員が凄惨なリンチを加えている。
(参考記事:金正恩氏に「指名手配」された脱北美女たちの運命)
(参考記事:アキレス腱切断、掘削機で足を潰す…北朝鮮労働者に加えられる残虐行為)
一方、米国政府が金正恩氏を「人権犯罪者」として名指しして制裁指定するなど、脱北者を含む北朝鮮国民への人権侵害は国際的関心を集めている。
金正恩体制は、人権侵害への責任追及を何よりも嫌っており、それが核とミサイルの暴走につながっている側面もある。
(参考記事:北朝鮮「核の暴走」の裏に拷問・強姦・公開処刑)
今後、北朝鮮と欧米などは、人権問題をめぐりいっそう対立を深めていくだろう。