公立図書館の閉館時間は延びているのか否か(2023年公開版)
図書館への需要の高まりに連れ、利用希望者のライフスタイルに合わせる形で閉館時間を延長してほしいとの意見がある。特に就業者にとっては昼間のみの開館では訪館が難しいため、夕方以降も開館しているとありがたい。その要望にどこまで図書館側は応えているのか。文部科学省の社会教育調査(※)の公開値を用い、閉館時間の推移から確認する。
次に示すのは公立図書館の閉館時間別の図書館数推移。もちろん開館時間もまた図書館別に異なるが、人口の多分を占める就業者には何時まで開館しているかが大きな問題となることから、いかに図書館が利用されやすい状況かを判断する指針の一つとして、閉館時間を抽出精査する。
公立図書館の全体数も年度毎に変化を示しているが、それを差し引いても、17時台かそれより前に閉館してしまう図書館は漸減し、それより後に閉館する図書館が増えているのが分かる(2017年度以降は「18時台かそれより前に~」となりつつあるようだ)。「特に定めず」はイレギュラーな回答だろうが、21時以降の閉館図書館も相当数に上っている。例えばグラフでは一つにまとめてしまった21時以降閉館部分の詳細データを見ると、直近の2020年度では、閉館が22時台の図書館数は17館となっている(23時以降はゼロ)。
これを各年度における図書館数全体に占めるシェアを算出した結果が次のグラフ。こちらは閉館時間別館数が取得可能な1974年度以降につき、すべて算出している。明らかに閉館時間が夜遅くにシフトしている実態が確認できる。
18時より前に閉館してしまう図書館は、1974年度時点ではほぼ2/3だったが、2020年度では1/4足らずでしかない。また19時以降の閉館図書館は1974年度は2割足らずだったのが、2020年度では4割強を示している。それだけ図書館が夜遅くまで開館している、夜の来館者にも対応する姿勢を示していることになる。就業から帰りがけに図書館に立ち寄りたい人にはありがたい話に違いない。
図書館における環境改善の動向は、例えばコンピュータの導入度合いや蔵書数、受動喫煙防止のための対策実施状況、開館日数などの変化でも推し量ることができる。文化的な憩いの場としての図書館の立ち位置がより重要性を増しているとすれば、これほど喜ばしい話はない。
それとともに、状況の維持、さらなる改善のため、より多くの関係者の地位確保と、リソース投入が望まれるところではある。
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※社会教育調査
文部科学省がほぼ3年おきに実施している、「社会教育行政に必要な社会教育に関する基本的事項を明らかにすることを目的とする」調査。原則的に全数調査によるもの。調査開始は1955年。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
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