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花粉症で口がかゆくなる?花粉-食物アレルギー症候群って??

前田陽平耳鼻咽喉科専門医、アレルギー学会認定専門医
果物で口が腫れることと花粉症が関係する??(写真:アフロ)

いま、スギ・ヒノキの飛散が落ち着いてきて、イネ科などによる花粉症が目立つようになってきています。先日、こういったツイートをしたところ、多くの方から反響がありました。花粉症で口に症状が出るという話、少し解説してみます。

食べたすぐあとから口がかゆい、腫れる??

ある種の食品を摂取した後でアレルギー症状が口やのどから始まり、全身に波及したりすることもある、こういう症状を口腔アレルギー症候群といいます。その中でも、花粉症患者さんで見られる口腔アレルギー症候群を花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)といいます。(※1)

具体的には、食物を摂取した直後から出現する、唇、舌を含めた口やのどの急激なかゆみやチクチク感、腫れなどです。通常は軽いものが多いのですが、呼吸困難などの重症例の報告もあります

なぜこういった現象が起こるのでしょうか?それは「交差反応」という現象によります。

「交差反応」とはどういうことでしょうか。

花粉症患者さんではIgEと呼ばれる抗体が作られています。このIgEが花粉と結合することでさまざまなアレルギー反応が起こります。このIgEが他の似たたんぱく質と結合することがあって、それが食物の場合があるのです。これが花粉-食物アレルギー症候群です。

具体的にはどのような花粉症の場合に生じるのでしょうか?

シラカンバ(北海道に多い)、ハンノキ、カモガヤ、ヨモギ、ブタクサなどで起こることが知られています。ちなみにカモガヤは「イネ科」で、非常に長い期間(関東地方なら4月から10月ぐらいに多い)飛散することが知られています。(※2)

それぞれの花粉症の種類によって交差反応する食物がある程度わかっています。

シラカンバやハンノキなどの場合はバラ科(リンゴ・西洋ナシ、モモ)に加えてマメ科(大豆など)、キウイフルーツ、マンゴー、など様々なものに反応しますし、カモガヤなどのイネ科ではメロン、スイカ、トマト、キウイなどで反応します。ブタクサの場合もメロン・スイカなどのウリ科に反応します。

日本で最も多い花粉症であるスギ花粉症では、トマトの交差反応性が証明されていますが、アンケートではメロンやキウイフルーツに感作されているケースが多かったとされています。スギ花粉症患者でのPFASの合併は7-17%とばらつきがあります。(※1)

花粉-食物アレルギー症候群はどのように診断・治療されるのですか?

診断においてはまずは病歴(どのようなときにどのような症状があったか、など)の聴取や食物での反応の出方を参考にします。さらに、血中の特異的IgE検査も行われる場合がありますが、皮膚で実際に食物への感作を確認するprick-to-prick testなども行われます。確定診断には食物経口負荷試験、つまり実際に食物を口に入れる試験が行われます。

治療で一番重要なのは原因食物の除去です。加熱によって症状が出ないことも多いことが知られています。場合によって抗ヒスタミン薬などの頓服の対象になることがあります。全身症状、特にアナフィラキシーとなったことがある場合にはアドレナリン自己注射(エピペン)携帯を考慮する場合があります。

似たような病態でラテックス-フルーツ症候群というのもあります。ラテックス(天然ゴム)と果物・野菜が交差反応し、これも食物摂取後に口がかゆくなったりします。つまり、口腔アレルギー症候群として症状が出るのです。アボカド・クリ・バナナ・キウイなどが症状を起こしやすいとされています。

現在食べられている食材を除去しないようにしましょう。食材の除去は専門の医師とよく相談しましょう。
現在食べられている食材を除去しないようにしましょう。食材の除去は専門の医師とよく相談しましょう。

症状のない食物の除去は必要なし!

いずれにしても、重要な点として「症状のない食物の除去は必要がない」ということをよく覚えておいてください。食物アレルギーにおいては「安全性を確保したうえでの必要最小限の除去」が基本になります。

どの程度の検査や治療を行う必要があるか、というのは症状によって異なります。

まずはお近くのアレルギー科・耳鼻咽喉科・小児科などでご相談ください。

※1 食物アレルギー診療ガイドライン 2016<2018 改訂版>

※2 花粉症環境保健マニュアル環境省

https://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/manual/2019_full.pdf

耳鼻咽喉科専門医、アレルギー学会認定専門医

2005年大阪大学医学部医学科卒業。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医・指導医。日本アレルギー学会認定専門医・指導医。医学博士。市中病院勤務、大阪大学医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学助教を経て現在JCHO大阪病院院長補佐・耳鼻咽喉科部長。雑誌取材・メディア出演多数。臨床・研究の専門領域は鼻副鼻腔疾患・アレルギー疾患・経鼻内視鏡手術など。一般耳鼻咽喉科についても幅広く診療している。耳鼻咽喉科領域や診療に関わる医療情報全般の情報について広くTwitter(フォロワー4万人)などで発信している。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。

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