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地域再生プロデューサー・清水義次氏が語るまちづくりから見た吉本興業の可能性

中西正男芸能記者
建築・都市・地域再生プロデューサーの清水義次氏

 建築・都市・地域再生プロデューサーとして“まちづくりの達人”と呼ばれる清水義次さん。監修を務めた「まんが あなたもできる! 公民連携のまちづくり 岩手オガールで芽吹いたパブリック・マインド」も今月上梓するなど幅広く活動しています。吉本興業東京本社を廃校となった新宿の小学校に移転させたのも清水さんのプロジェクトの一環でしたが、まちづくりの観点から語る吉本興業の力とは。

吉本興業のポテンシャル

 今から十数年前、歌舞伎町で暴力団、海外マフィアが勢力を拡大していく中で「歌舞伎町をもう一回ちゃんとした街にするんだ」と新宿区が政策を掲げまして。それで、僕が突然呼ばれたんです。歌舞伎町を再生するんだということでぶちこまれまして(笑)。

 その動きの中で、性風俗のお店や違法な人たちを追い出していったら、街がガラガラになりまして。これをこのまま放置すると良くない。今でいうところのリノベーションをして、そこを使いこなすことをやってみようとなったんです。

 そのコンセプトとなったのがエンターテインメントを作って、発信するということ。いろいろな試みをやったんですけど、なんせ、歌舞伎町というところはもともとのエネルギーがすさまじいので、ちょっとやそっとのことをしてもダメだとなりまして。

 なにか、ドーンと大きなことができないか。そう考えた時に、大きな不動産で空いているものがある。それが廃校になっていた旧四谷第五小学校だったんです。

 そこに、笑いを作る会社の吉本興業さんに入ってもらう。それを進めて行く中で、驚くほど街も変わり、吉本というエンタメの会社のポテンシャルの高さを知り、私にとっては非常にありがたい体験をさせてもらいました。

 そこでお付き合いが生まれるまでは、エンタメの世界では実績のある会社であるという認識だったんですけど、吉本さんが新宿に来られて3年くらい経った頃でしょうか。食育をやろうという教育委員会の部署があって、その時に、吉本さんと相談して面白いやり方がないだろうかという話になったんです。

 そこで出てきたのが“食育漫才”。小学生が食育に関する漫才をすると。漫才のネタを作るためにはその話をしっかりと理解しないといけないし、それを人前で披露することで子どもたちにもいろいろな成長が期待できる。単に知識を教えるだけでない試みが評判になって、NHKでも特集が組まれるくらい話題になったんです。

 その時に、エンタメの企業、特に、吉本さんという会社が旗振り役をする意味を痛感したと言いますか。それを端的に知った気がしました。

地方創生と吉本興業

 今、吉本の大﨑洋会長ともお話をしているのが、吉本さんの力を使っての地方創生。これは、ほぼ無限大に可能性があると思っています。

 その軸になるのが、吉本さんが2011年から始めた“住みます芸人”というプロジェクトです。47都道府県にそこを拠点にする住みます芸人さんがいらっしゃる。これはすごく大きなことですし、さらに言うと、今の段階でも、まだこの住みます芸人という試みのパワーが完全には発揮されていないと思っています。もっとポテンシャルはあるはずです。

 それと、地方を再生する時に“新しい産業を興す”というのが、実は要求度が一番高いことでもあるんです。

 お給料がそこそこもらえて、やりがいがある面白い仕事が地方にあれば、それほど人口は流出しない。その“新しい産業を興す”というところで、僕は吉本さんの力にすごく期待をしているんです。

 もちろん、吉本さんが地方に力を貸す。この方向もあるんですが、逆にそれをやることによって、吉本さんにもプラスがあるというか、芸人さんの成長に繋がることが多々あると思うんです。

 「キングコング」の西野さんの存在なんかが代表例だと思いますけど、今は良い“二足のわらじ”を履くことが求められる時代でもあります。

 芸人さんが漫才などの本業をやる一方、地方を盛り上げる試みに参加する中で、もう一つの力を見出す。これも本当に大きなことだと思います。

 なので、まず芸人さんに今回私が監修した「まんが あなたもできる! 公民連携のまちづくり 岩手オガールで芽吹いたパブリック・マインド」を読んでもらって、ベースとなる知識を入れてもらうのが良いかもしれません。ごめんなさい、なんだか、最後は宣伝みたいになっちゃいましたけど(笑)。

(撮影・中西正男)

■清水義次(しみず・よしつぐ)

1949年生まれ。山梨県出身。建築・都市・地域再生プロデューサー。3331アーツ千代田代表。一般社団法人公民連携事業機構代表理事。東京大学工学部都市工学科卒業後、マーケティング・コンサルタント会社を経て、92年に株式会社アフタヌーンソサエティを設立。都市生活者の潜在意識の変化に根ざした建築のプロデュース、プロジェクトマネジメント、都市・地域再生プロデュースを行う。主なプロジェクトとして、東京都千代田区神田RENプロジェクト、CET(セントラルイースト東京)、旧千代田区立練成中学校をアートセンターに変えた3331アーツ千代田、旧四谷第五小学校を吉本興業東京本社に変えた新宿歌舞伎町喜兵衛プロジェクトなどがある。地方都市においても、北九州市小倉家守プロジェクト、岩手県紫波町オガールプロジェクトなど民間のみならず公共の遊休不動産を活用しエリア価値を向上させるリノベーションまちづくり事業をプロデュースしている。今月、監修を務めた書籍「まんが あなたもできる! 公民連携のまちづくり 岩手オガールで芽吹いたパブリック・マインド」が発売された。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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