日本の長期金利が上昇しても円安が進む理由
これを書いている29日の10時17分現在、日本の10年債利回りは1.065%と2012年3月以来およそ12年ぶりの水準に上昇した。それにもかかわらず、外為市場ではドル円もじりじりと上昇しており、157円40銭近辺を付けてきた。
どうして日本の長期金利が上昇しているにもかかわらず円安が進むのか。
そもそも29日に日本の国債が売られてたのは、28日に米国債が売られたことが大きな要因となっていた。
27日の米国市場はメモリアルデーの祝日のため休場となっていた。24日の米10年債利回りは4.46%であり、そこから0.09%の上昇となっていた。
これに対し24日の日本の10年債利回りは1.005%であり、29日の10時現在は1.065%と0.06%の上昇となっている。日米の長期金利差は縮小するどころか拡大しており、これもドル高円安の要因となっていた可能性がある。
28日に米債が売られたのは、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が、利下げが適切になるには「さらに多くの月にわたる(インフレ鈍化を示す)ポジティブなデータ」が必要との考えを示したことも影響していた。
これを受けて、米景気の底堅さを背景にFRBの利下げが遅れるとの観測が強まったことで米債は売られた。
これに対して日銀は正常化に向けて歩を進めようとしているが、具体的な今後の正常化に向けたロードマップを示しているわけではない。市場参加者による日銀の利上げ予想もまちまちであり、早くても7月かとの観測が強いようである。このあたりも円を売りやすくしている要因となっているのではなかろうか。
三菱UFJフィナンシャル・グループの関浩之市場事業本部長が日本経済新聞の取材に応じ、日本国債について「金利上昇が本格的に進めば、利回りの最高水準を見極めながらポジション(持ち高)を復元していく方針だ」と運用の見通しを明らかにした。日銀が「早ければ7月にも政策金利を0.25%程度へ引き上げる可能性がある」とも述べた(29日付日本経済新聞)。
これまでの動きから、日銀は正常化に向けては慎重に行うとの見方は当然あろう。しかし、5月に入ってからの日銀の金融政策を巡る動きには変化が起きていたように思われる。
長期金利が1%を超えて上昇してきても、日銀はそれにブレーキを掛ける気配はいまのところない。長期金利コントロールは解除しているので当然といえば当然ながら、ここでもしブレーキを掛けようものなら円安の動きを加速させかねないことも事実である。
日銀は今後はこれまでのように過度に慎重ではなく、「今回こそはこれまでと違う」と考えているのであれば、もう少し積極的に正常化に向けた動きを押し進めることをアピールしても良いのではなかろうかと思う。また、今後の金利観の不透明要素を軽減させるためにも、今後金融政策の行方、ロードマップを示すことも必要ではないかと思う。