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中国でも森友決裁文書改ざんを大きく報道

遠藤誉中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
森友学園問題 麻生財務相が文書書き換えを謝罪(写真:ロイター/アフロ)

 全人代会期中であり、習近平礼賛に燃え上がっている中国の中央テレビ局CCTVが、日本の森友決裁文書改ざんを報道。中国政府系や共産党系のネットも大きく扱っている。日本留学の中国人留学生の声も聞いた。

◆CCTV:森友学園スキャンダル再燃 安倍内閣総辞職を求める声が高まっている

 3月5日に始まった全人代(全国人民代表大会)は、3月11日に国家主席の任期を撤廃する憲法改正を可決し山場を迎えている。中国共産党が管轄する中央テレビ局CCTVは、連日連夜、習近平国家主席と党の指導を礼賛することで真っ赤に染まっている。

 全人代会期は例年になく延長され、3月20日に閉幕するというほどの審議内容(可決事項?)満載だ。

 だというのにCCTVも党や政府系の紙ベースあるいは電子版のメディアも、全人代開幕式の3月5日から始まって、日本の森友決裁文書改ざん問題を報道することに余念がない。

 まず近いところで、3月13日の報道を見てみよう。

 3月13日のCCTVニュースは全国ニュースで、森友学園スキャンダルにより安倍政権総辞職を求める声が日本で高まっていると報道した。その動画をリンクさせたいが不安定なので、CCTVニュースを文字で報道しているネット情報をご紹介する。情報源は中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」電子版「環球網」で、タイトルは「森友学園スキャンダル持続的に再燃 日本与野党の安倍内閣総辞職を求める声が高まっている」

 リンク先にアクセスしていただくと、CCTVで報道した写真が少なからず貼り付けてあるのが分かる。写真から推測いただける内容は日本で報道されている情報を、ほぼ全て網羅しているので、ご説明するのは避ける。

 中国ではこの事件を「地価ゲート」と称しており、随所に「地価門」の簡体字があることにお気づきになるだろう。「ウォーターゲート事件」以来、中国では大きな国家的疑獄に対して「ゲート(門)」を使うようになった。

 報道は、日本の自民党内からも批判の声が上がっていることに触れているが、中国ではそのようなことは起きえないという独裁ぶりが顕著な中、よく他国の文書隠蔽や改ざんを報道できるものだと、興味深くチェックした。

◆「安倍謝罪、党首三選は絶望か?」と新華網や環球時報

 同じく3月13日付の中国政府の通信社「新華社」電子版「新華網」が「安倍、森友学園文書改ざんに関して謝罪  党首三選は絶望か(党首三選の希望は破滅か)?」というタイトルで報道。情報は紙ベースの「環球時報」に基づいている。

 ここでは日本の朝日新聞をはじめ共同通信社や読売新聞社、フジテレビあるいはロイター社などの情報を主たる情報源として報道している。

◆3月5日から報道開始

 筆者が知っている限りにおいては、CCTVは3月5日から森友決裁文書改ざんを報じている。3月5日と言えば、中国歴史上の大きな分岐点となる全人代が開幕した日だ。それでも扱うのは、2017年3月20日の本コラム「中国、森友学園問題をトップニュース扱い!」でも触れたように、中国は安倍政権が倒れるのを希望しているからだ。その原因は中国が安倍政権を「軍国主義に向かおうとしている」と非難したいからである。非難の対象があった方が反日戦略により求心力を高めることができるので都合いいのではないかと思われるが、それでも非難の継続をすることを、先ずは短期的目標としているせいだろう。

 その証拠に3月3日付の環球時報は「いいだろう!安倍は承認した、中国は準備を整えよう」として、日本の海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」に関して報じている。CCTVもお昼の国際ニュースで報じた。

 それを受ける形で、3月5日付の環球時報は「日本財務省森友決裁文書書き換え疑惑 安倍政権責任を問われる」を掲載。決裁文書改ざん報道の幕を切った。

 3月5日のCCTVのリンク先「日本森友学園スキャンダル再燃 日本財務省国有地払下げ文書を改ざん」も、ご参考までにお知らせする(アクセスできるか否かは保証できない)。

 また3月7日付の新華網も「森友学園決裁文書書き換え 日本政府答弁を回避」というタイトルで同問題を報道している。ここでは朝日新聞が3月2日に疑義報道をしたことから始まった一連の動きを詳述している。

◆日本留学の中国人留学生は

 中国におけるネットユーザーのコメントは全て削除されているので、念のため日本に留学している中国人留学生たちに取材してみた。日本のアニメや漫画に憧れて来日したこの留学生たちは、同時に日本の民主主義体制にも深い興味を持っていた。しかし、森友問題の推移を見て、激しい失望を吐露している。

 以下は取材した回答の概要だ。

 ――日本のアニメや漫画が大好きで留学先に日本を選びました。こんな素晴らしいサブカルチャーを生み出すことができる日本という国は、どのような政治を推進しているのだろうという興味もあったのです。中国も早く、こういう文化を生み出せる国になって欲しいという、憧れの気持もありました。

 でも、こんなモリトモ問題とかカケ問題など、結局「一強への忖度」で動いているのを見ると、中国と大して変わらないと感じるようになりました。特に今般の決裁文書改ざんに対する財務大臣や政府側の弁明を見ると、「こんな小学生でも分かるような見え見えの自己弁護をするなんて、これで日本国民を騙せると思っているのか」と呆気にとられます。結局、部下のせいにして自分たちの責任を逃れるつもりでしょう。

 これが民主主義だとすると、果たして民主主義がいいのかという疑問さえ、抱かずにはいられません。中国と大差ないんじゃないですか?来日して学んだのは、「民主主義って、そんなに良いものじゃない」ということになったのは、非常に残念です。私たちの希望を砕きました。

中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『中国「反日の闇」 浮かび上がる日本の闇』、『嗤(わら)う習近平の白い牙』、『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』、『 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

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