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日本ハンドボールリーグ、激動の背景 未来に向けて果たすべき“最低限”の責任とは?

大島和人スポーツライター
宮﨑大輔選手兼監督が率いるアースフレンズBMは新リーグへの参入申請を済ませた(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

9月に大きく動いたハンドボール界

「スポーツの秋」という言葉がある。そんな季節にハンドボールに関する話題がスポーツ紙や全国紙で多く取り上げられている。ただし「分裂」「対立」というネガティブな切り口が多い。

9月には日本のハンドボールを巡る重要な記者会見が3つあった。9月1日には2024年秋の開幕を予定している「次世代型プロリーグ」に応募した男女19チームが発表された。ジークスター東京、湧永製薬、大崎電気といった男子の有力チームの応募がなかったことは、異変として受け止められている。

13日にはジークスター東京が会見を開き、新リーグの合意形成を巡るプロセスを批判。葦原一正代表理事と理事会の責任についても言及した。

21日の日本ハンドボールリーグ(JHL)葦原代表理事による会見は、これに対する“アンサー”となる要素も含むものだった。今回は代表理事の会見と、その後のインタビューを元に、JHLが直面している“こじれ”の背景と今後の展望について、他競技の事例と筆者独自の見解をまじえて述べていく。

新リーグに応募しなかった6チーム

葦原代表理事は21日の会見で、現JHLに所属しつつ次世代型プロリーグに応募しなかった6チームについて、「福利厚生志向」「財務基準未達」「財務計画の蓋然性」「複合型」の4分類に当てはめて個別に説明した。

トヨタ自動車東日本は「福利厚生志向」で、実業団チームとして活動継続を選択した。ザ・テラスホテルズは「財務基準未達」に相当するチームで、新リーグへの応募を断念した。

一方で湧永製薬と大崎電気、ゴールデンウルヴズ福岡は「財務計画の蓋然性(確からしさ)」に対する疑問から申請をしなかった。リーグの財務計画が、チーム側にとって不安の残るものであることは事実だろう。大きな焦点は配分金の額だが、現時点では参加チームや試合数が確定していない。「ニワトリが先か、卵が先か」の議論と似ていて、どのチームが乗るか見えない段階で収支を提示するのは難しい。

Jリーグの明治安田生命、Bリーグのソフトバンクに相当するパートナー探しもこれからだ。もちろんJHL側が「既にこれだけスポンサーが集まっている」「新体制でこれだけお客が増えた」という成果を先に示せればベストだが、それも十分にできていない。

新リーグへの応募を避けた6チームの中で、葦原代表理事が背景の込み入った「複合型」に分類したのがジークスター東京だ。ジークスターは13日の会見で法的プロセス、リーグとチームのコミュニケーション不足を指摘している。シングルエンティティ(リーグにスポンサー営業、チケット販売などのビジネス機能を集約する仕組み)の妥当性についても批判し、リーグ執行部の不信任と受け取られる発言も行った。

ジークスターの公式サイトで彼らの主張は参照できるが、「これまでの活動と実績は評価できる内容ではなかった」とした上でこう発信している。

「社員総会にて新リーグの『構想』に対して社員の決議賛同が得られていない状況で、『構想』への賛同を誓約することを条件に参入申請を迫る手法は納得できない」

「総会」の決議を得るべきタイミングは?

葦原代表理事はこう応えた。

「定款が公式ホームページにも出ていますが、社員総会は人とお金に関することを決議するものです。他の競技団体も将来構想、新リーグ構想は同様のステップを踏んでいきます」

JHL定款第14条で定められている社員総会の決議事項は下記の通りだ。

(1)入会の基準並びに入会金及び回避に関する事項

(2)社員の除名

(3)理事及び監事の選任又は退任

(4)理事及び監事の報酬等の額

(5)貸借対照表及び損益計算書(正味財産増減計画書)の承認

(6)事業計画及び収支予算に関する事項の承認

(7)定款の変更

(8)解散及び残余財産の処分

(9)その他社員総会で決議するものとして法令又は本定款で定められた事項

他競技の例だがBリーグは2026年秋に“新B1”を発足させる。競技力でなく経営力、集客、アリーナを基準にクラブを選考して、今のB1よりも強いカテゴリーを作る狙いだ。構想自体は2016年のリーグ開幕直後から実行委員会、理事会で議論されており、対外的に概要が発表されたのは2019年7月。「総会決議」として正式に採択されたのは2022年9月だった。つまり総会は最終決定後、定款変更のタイミングで行われている。

シングルエンティティを巡る議論

JHL、Bリーグ、Jリーグ、NPBはいずれも社団法人だ。所属チームが「社員」として1票を持つガバナンスで、総会は多数決で承認、非承認といった結論を出す。業務執行に関する決議機関が理事会で、これは企業の取締役会に近い。臨時の総会や理事会もあるが、基本的には総会が年1回、理事会は月1回の開催だ。

各チームの代表が参加する実行委員会で意見を集約して、それを踏まえて理事会が新リーグの構想を議論し、制度設計を進めていく。それが固まった段階で臨時総会にかけて承認を得る――。それが葦原代表理事の想定しているオーソドックスなプロセスだ。もっとも新リーグの発足は当然ながら「入会金、入会基準の変更」「定款変更」を含むもので、彼も2022年中の臨時総会を想定している。

リーグが権益、ビジネス面をすべて引き受ける「シングルエンティティ」については、こう強調していた。

「かなり丁寧に議論してきたつもりです。2021年7月に各チームに集まっていただいて、集中して議論しました。(JHLは)Jリーグ、Bリーグのように法人化(プロ化)を義務化して、チームに権益を任せてやっていくか、それともリーグがすべての権利を持って運営していくシングルエンティティか、究極的にはこの二択しかありません。真ん中はあり得ません。昔のバスケであった権利と責任が分散して上手く回らなかった事例も説明して『どちらにしますか?』と選択肢を提示しました」

チーム側のコンセンサスは「シングルエンティティ」だった。

「プロアマ混合」を避けるために

バスケットボールのJBL、NBLは2015-16シーズンまでプロアマ混合で運営されていた。ジャパンラグビーリーグも静岡ブルーレヴズなど独立法人化したチームが誕生したことで、昨シーズンからプロと実業団が同じリーグで戦っている。ただしリーグ運営は不可避的に混乱する。過渡期の仕組みとして仕方のない部分もあるが、プロチームと実業団は「思想」「利害」「意思決定スピード」が違うからだ。

実業団リーグのまま、ビジネスや集客を追求する発想もあり得る。とはいえ契約がないアマチュア選手の肖像権(パブリシティ)を利用してグッズを展開することはあり得ないし、権益がまとまってない状況では放映権も売りにくい。単純に企業も実業団リーグのスポンサーになるメリットは乏しい。選手のデュアルキャリア(兼業)を認め、チームのプロ化回避を受け入れつつ、ハンドボールビジネスの部分のみを切り分けてリーグが負う――。そんなシングルエンティティ方式は“ギリギリの線”を突いたものだ。

葦原代表理事が二択をチームに求めた背景は、そこにある。もちろんシングルエンティティの日本における成功事例は大相撲のみで、ハンドボールでどう機能するとは言い切れない。とはいえプロアマ混合の難しさは明確に証明済みだ。スポーツビジネスの常識から見れば、新リーグの骨子はロジカルに組み上げられている。

彼はこう続ける。

「ジークスターもスポンサー収入は基本的にフューチャーとその関連会社しかないし、その他の収入もそれほど無いので、シングルエンティティがいいというご意見でした。全チームの合意ができたのは2021年10月の実行委員会です。全チームの同意があったので、その後の理事会で決議しました。アリーナや財務のような入会基準はチームごとの損得が出てくるので、これに関しては理事会で決めます。1年半近く、20回以上議論をさせていただいた中で、急に『シングルエンティティに反対』と言われてしまって、驚いたというのが本音です。8月に入って急転してあのようにおっしゃってしまうのは、完全な想定外です」

“独裁批判”にどう答える?

ジークスターもプロ化志向のチームで、構想発表時のプロモーションに対しては協力的だった。昨年12月20日の構想発表会見には突出した人気選手で、東京オリンピックではチームの主将を務めた土井レミイ杏利が登壇。葦原代表理事やフェンシングの銀メダリスト太田雄貴理事とともに質疑応答やフォトセッションにも参加していた。土井はジークスターの所属選手だが、新リーグの顔として期待されている。

葦原代表理事は「ジークスター側に『土井選手を使わせてください』とお願いして、即答でOKもらった」と振り返る。当然ながらチーム側の承認、調整があったからこそ実現したコラボだった。

今のハンドボール界に、過去のバスケ界のような「プロvs.実業団」の対立軸はない。今回の新リーグ構想にも男子の大同特殊鋼、豊田合成や女子の北國銀行、オムロン、ソニーといった“堅い企業”が応募している。「新参者vs.古参」という対立でもない。ジークスターは2019年からこのリーグに参入した新興チームだ。

葦原代表理事は言う。

「異論が23チームの大半から出ているのならばしっかり受け止めるべきだけど、私の認識においてジークスターしかそういったご発言をされていない。女子は同じように進めて、円滑に進んでいます」

“独裁批判”に対してはこう反論していた。

「外部理事に関して代表理事の独断で選ばれたというご指摘もあるようですが違います。昨年春に法人化されたリーグの役員候補者選考委員会を開いたとき、委員の方々に推薦をお願いして、50名近いリストの中から議論して4名が選ばれました。私が推薦した4名にはなっていません」

実行委員会、理事会というプロセスも丁寧に踏んでいる。

「(意思決定の中で)特に大事なのは実行委員会です。チームの方が集まって、実務的なことから高いレベルまで話をしています。議論が割れるときは、必ず各チームにアンケートをお送りして、法人としての意思を出してもらっています。チームの意向を聞いて数字を見た上で、理事会が決議しています。実行委員の皆さまが右と言って、理事会が左と決議したパターンは基本的にありません」

インタビューに応じた葦原一正代表理事:筆者撮影
インタビューに応じた葦原一正代表理事:筆者撮影

審査結果発表は“転機”に

次世代型プロリーグ構想に対して一線を画しているチームはジークスター東京、湧永製薬、大崎電気の3つ。ジークスター東京は実業団から次々に有力選手を引き抜いて短期間で強化に成功していて、Jリーグ開幕前の「読売クラブ」に相当する存在だ。湧永製薬は現日本ハンドボール協会の会長、大崎電気は前会長を輩出している古豪で、Jリーグ開幕前の「古河電工」「三菱重工」に相当する。

意思決定の瑕疵は無いように見えるし、実際に19チームが新リーグへ応募している。一方で決定的に重要なのは「これからのハンドボールリーグ、ハンドボール界をどうするか?」だ。名門に相当する3チームが乗り気とはいい難い状況下で、立ち上げを進めることは容易でない。パートナー、スポンサーの獲得を進める上で、内紛や分裂と受け取られる状況が新規契約の足を引っ張ることも間違いない。

10月21日には、次世代型プロリーグの審査結果が発表される予定だ。新規参入チームが確定すれば、スケジュールの策定や試合会場の確保といった動きが始まる。その後の臨時総会における承認は大前提だが、新リーグは良くも悪くも後戻りできない局面に移る。10月はリーグ側が“決断”を求められるタイミングだ。

妥協もあり得ないわけではない。ただしその前提は開幕や審査結果の発表を繰り下げて冷却、再調整の期間を置くことだ。体育館の予約、リーグの組織構築、IT系の整備といった実務には相応の時間がかかる。もし冷却期間を設定するなら、開幕も繰り下げる必要が出る。

しかし仮に審査や開幕を1年遅らせたとして、その間に対立を解消させる予兆は見出せない。ジークスター側や湧永会長のコメントを見ると理事会そのものへの不信感が漂っていて、おそらく生産的な議論は難しい。

葦原はなぜ「怒らない」のか?

筆者が葦原を知ったのは2015年に法人が発足し、16年秋に開幕したBリーグの取材だ。バスケはJリーグのいわば“創設者”にあたる川淵三郎が陣頭に立ち、大河正明チェアマン(当時)や葦原が実務を担った。川淵は理にも優れたリーダーだが、サッカー時代から喜怒哀楽を敢えて出しつつ社会に“熱”を伝えるスキルがあった。

「川淵さんなら記者会見で怒ってみせたでしょう?」。葦原代表理事にそう振ると、彼はこう返してきた。

「本音の部分では、今回の火消しがロジックだけで解決できる可能性が高いとは思っていません。ただ私が川淵さんみたいな豪腕型だったら別ですけど、そういうタイプではない。寄り添って何とか変えていこうというタイプのリーダーです。ハンドボール界全体を見ても、今まで内資でやってた人が急に外資系のルールで働けと言われているのに等しい状況です。そうなると、もう少し寄り添ってあげないといけません。バスケでも社員総会と理事会と実行委員会があって……という仕組みに対するハレーションは15年、16年のBリーグでもありました。そこはもう忍耐強くやるのが大事だと思います」

課題はオーナー系経営者との向き合い

対決構図の“分かりにくさ”について、一応の説明は可能だ。葦原代表理事に同調していない有力3チームには、違いと共通点がある。ジークスターはプロに近く、湧永製薬と大崎電気は実業団なので、チームの運営体制は対照的だ。一方で3チームはいずれもオーナー企業が「トップダウン」のスタイルを取っている。ジークスターのオーナー企業「フューチャー」の金丸恭文氏は創業経営者で筆頭株主。湧永製薬の湧永寛仁社長は創業者から数えて3代目で、大崎電気なら渡辺家の影響が強い。

葦原はBリーグ時代に「企業チームを離脱させず引き込む」ための向き合いを経験している。当時のNBLに参加していた実業団はトヨタ自動車、日立製作所、東芝、アイシン、三菱電機の5社。そういった大企業は「ボトムアップ」の傾向が強い。言葉を選ばずに評するなら“典型的な日本企業”だ。

リーグの実行委員会で話し合われたことが、チームの担当者を通じて会社に上げられ、然るべきルートで権限者のところに届く。社内で必要な議論を行い、担当者に戻されるプロセスが、そのような大企業にはある。意思決定の時間がかかるし、思い切った判断の出にくいガバナンスだが、組織的に物事と向き合うカルチャーがある。念のため付記するとトップダウン、ボトムアップのどちらが勝っている……ということではない。

葦原代表理事が苦しんでいるのが“オーナー系経営者”との向き合いで、彼もそれを率直に認める。

「トップの影響力が強いチームに対してのケアは必要でした。現場に任せるだけでなく、私もそこはケアしなければと思ってやっています。しかしケアが行き届いてないものもありました」

彼はどこの社か明かさなかったが、オーナー企業のトップとアポを取ろうとしても、チーム関係者に止められたケースがあったという。一般社員のメンタリティとして自分の頭越しに話が進むことは喜ばしくない。またオーナー社長に対して「悪い報告を上げる」となれば勇気が必要で、これもなかなか難しい。理事会から届けたい情報がオーナー経営者に届かず、相手の不満にも気づかず今年の8月を迎えていた。そんな推測もできる。

ジークスターへの訴え

とはいえ時間は巻き戻せない。日本協会や湧永会長が今からリーグ法人化の方針、代表理事の選考要件を修正しても間に合わない。彼らは既に“賽”を投げてしまった。そこはハンドボール界全体が受け入れるべき“不都合な真実”だろう。

また葦原代表理事の提示した構想をアテにして新規参入を決めたクラブ、2024年秋の開幕を前提にアリーナ確保やスポンサー集めを進めているチームもある。上記の3チームと折り合ったとしても、他のチームに不利益が及ぶとなれば芳しくない。そこは明白なジレンマだ。

彼はこう強調する。

「私がBリーグの事務局長時代からずっと言ってたことですけど、正直者が馬鹿を見る、損する社会になった瞬間が不幸の始まりです。だから『デカい声に引っ張られるな』と、常に言ってきました。別にジークスターを非難するつもりもないし、こっちの落ち度もきっとあったと思います。一方で前に動きだそうという19チームがあるから、そこにしっかり向き合わなければいけない。その思いが今は強いです」

そしてこう訴える。

「リスクがある中でチャレンジしようとした人たちがいる中で、チャレンジしない選択肢も当然あります。ただチャレンジしない人が、チャレンジする人を止めるのだけはやめてほしい。太田(雄貴)さんが将来構想の発表した12月に、『批判をするなら提案を。批判をするなら代替案を出さないとダメ』と強くおっしゃっていました。何が課題かをまずやはり明確に教えてほしいし、それが分かるなら、こっちもこうやろうという議論になっていくはずです。今はそのキャッチボールがまだできていません」

選手やファンに伝わらない熱

意思決定を行うのはリーグの理事会と総会……、つまり会議体に参加する理事やチームだ。ただしその背後には選手がいて、ファンがいる。プロ野球は球団再編(チーム数削減)問題が起こったときに選手会の古田敦也会長が先頭に立ち、ストライキを起こして流れに逆らった。それが世論を刺激してプロ野球の縮小を押し留め、新規参入とその後の成長を呼び込んだ。

葦原代表理事は先日、このようなツイートをしている。

「今こそ選手たちは少しずつでいいので声を上げてほしいと率直に思う。肯定でも否定でもいいので。最後は自分たちに返ってくる話なので。2004年の球界再編騒動しかり、プロ野球もアスリートの熱い叫びで最後は歴史を創ってきた」

もっともハンドボール界を見ていると、選手たちが「由らしむべし知らしむべからず」の状況に長く置かれていた印象も受ける。ハンドボール協会では2017年に渡辺佳英会長、蒲生晴明副会長兼専務理事の失職という“政変”も起きているが、そういった経緯が外部にほとんど可視化されなかった。人は自分が理解できないものに当事者意識を持てない。選手やファンに議論の背景、熱気が伝わらないもどかしさはJHLの“中の人”も感じている部分だろう。

早く明確な判断と、情報公開が必要

筆者個人の意見だが結論は早く、明確に出したほうがいい。仮に次世代型プロリーグ構想が頓挫した場合、ハンドボール界は2年を空費したことになる。しかも“リセット”ではなく、明らかに後退した状態から再スタートだ。そして結論を先送りしたからといって「より良い結論」が出るとは思えない。頓挫した場合の空費期間は短いほうがいい。

葦原を批判する意見にも利はある。しかし彼が今の職から外れたとして、問題はその後だ。それ以上の手腕を持つリーダーを引っ張ってこられるならば問題はないが、JHLの支払える報酬、ミッションの困難さを考えれば明らかに難しい。過去にもハンドボール界と喧嘩別れした外部人材がいるという経緯を併せて知っていれば、なおさら他競技他分野の人材は警戒するだろう。

JHLの定款変更を決議する臨時総会の日取りはまだ決まっていないが、どんなに遅くとも今年度中の開催。制度設計への賛否、理事会の信任に関する採決も行われるはずだ。その結果がどうなるかは各チームの意思で、私のような部外者がとやかくいうべきではない。

ただし総会の議事進行を可能な限りオープンにして“過程”を見せることは、リーグが果たすべき責任の最低線だ。メディアへの公開でも、Webを介した配信でもいい。どんな人間がどう議論をしているのか、そこが伝わらなければ選手やファンは判断のしようがない。仮に妥協が成立したとしても、密室や裏取引で決まったものならば、それはいい未来を生まない。

次世代型プロリーグを巡る議論ではジークスター、湧永会長、葦原代表理事がそれぞれ取材に応じてそれぞれの意思を表明している。結果として対立構図が可視化されたわけだが、それはポジティブな現象でもある。ハンドボール界の危機は残念ながら事実だが、危機意識は再生のエネルギーになる。ハンドボールを愛する人の思いが集約され、一致点を見出す日が来ることを願いたい。

スポーツライター

Kazuto Oshima 1976年11月生まれ。出身地は神奈川、三重、和歌山、埼玉と諸説あり。大学在学中はテレビ局のリサーチャーとして世界中のスポーツを観察。早稲田大学を卒業後は外資系損保、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を始めた。サッカー、バスケット、野球、ラグビーなどの現場にも半ば中毒的に足を運んでいる。未知の選手との遭遇、新たな才能の発見を無上の喜びとし、育成年代の試合は大好物。日本をアメリカ、スペイン、ブラジルのような“球技大国”にすることを一生の夢にしている。21年1月14日には『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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