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【徹底解説】幼児期のピーナッツ摂取と食物アレルギー予防の関係

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【幼児期のピーナッツ摂取とアレルギー予防の関係性】

英国で行われたLEAP試験という大規模な研究では、生後4〜11ヶ月の乳児を対象に、ピーナッツを食べる群と避ける群に分けて5年間追跡調査を行いました。その結果、ピーナッツを早期に与えた群では、5歳時点でのピーナッツアレルギーの発症率が大幅に低下したことが明らかになりました。

具体的には、ピーナッツを食べていた群のアレルギー発症率は約2%だったのに対し、避けていた群では約14%と、7倍以上の差が見られたのです。この結果から、アレルギーのリスクが高い乳児に対しては、生後早期からピーナッツを与えることが予防に有効である可能性が示唆されました。

この研究結果は、従来の「アレルギー食品は控えめに」という考え方を覆すものであり、非常に画期的だと言えるでしょう。ただし、実際に乳児にピーナッツを与える際は、家族の食物アレルギー歴や子どもの月齢なども考慮し、医師に相談しながら慎重に進めることが大切です。

【ピーナッツ回避後もアレルギー予防効果が持続】

LEAP試験の参加者を対象に行われた追跡調査(LEAP-On試験)では、5歳から6歳までの1年間、両群ともにピーナッツを避けるよう指示されました。その結果、1年後もピーナッツを早期に食べていた群のアレルギー発症率は約5%と低く、避けていた群の約19%との差は維持されていました。

つまり、乳児期にピーナッツを一定期間食べることで獲得した耐性は、その後の回避期間を経てもある程度持続することが示唆されたのです。ただし、さらに長期的な予防効果については、今後の研究の蓄積が待たれます。

【ピーナッツアレルギーと皮膚疾患の関連性】

食物アレルギーを持つ子どもは、アトピー性皮膚炎など皮膚疾患を合併していることが少なくありません。皮膚のバリア機能が低下している部位から、ピーナッツなどのアレルゲンが体内に侵入しやすくなるためと考えられています。

したがって、ピーナッツアレルギーのリスクがある乳児に対しては、皮膚の状態にも十分配慮することが大切です。保湿剤の使用や適切なスキンケアを行い、皮膚バリアの強化を図ることで、アレルギー発症のリスクをさらに下げられる可能性があります。

以上、幼児期のピーナッツ摂取とアレルギー予防の関係性について解説しました。アレルギーの発症メカニズムはまだ十分解明されていない部分も多く、今後のさらなる研究の進展が期待されます。一方で、現時点でのエビデンスを踏まえつつ、専門医の指導のもと適切な予防法を実践していくことが肝要だと言えるでしょう。

参考文献:

1. Du Toit G, et al. (2015) Randomized Trial of Peanut Consumption in Infants at Risk for Peanut Allergy. N Engl J Med. 372(9):803-813.

2. Du Toit G, et al. (2016) Effect of Avoidance on Peanut Allergy after Early Peanut Consumption. N Engl J Med. 374(15):1435-1443.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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