FWの主軸候補は上田綺世?細谷、鈴木唯人らパリ世代の台頭は?【2026年W杯へ新戦力を探る:攻撃編】
今は若手発掘に重点を置く森保監督
「今は力のあるベテランを外して若手を使っていますが、2024年アジアカップ(1月12日~2月10日・カタール)までが1つの区切りになるのかなと。アジアカップは優勝を目指す大会。結果を求める分、選手選考もシビアになりますからね」
日本代表の森保一監督がインタビューでこう語った通り、3月にスタートした新生ジャパンは、若い新戦力の発掘にまず重点を置いて活動をスタートさせている。
ウルグアイ・コロンビアと対戦した先の2連戦でも、指揮官は代表初招集の中村敬斗(LASKリンツ)、バングーナガンデ佳史扶(FC東京)らを思い切って起用。若い世代の急激な成長に期待を寄せた。
確かに、2022年カタールワールドカップ(W杯)までの4年間を振り返っても、チーム発足当初からチャンスを与えた堂安律(フライブルク)がドイツ・スペイン撃破のキーマンになり、2019年のコパアメリカ(ブラジル)などで積極起用した板倉滉(ボルシアMG)、上田綺世(セルクル・ブルージュ)らも重要な戦力になっている。3年後の2026年北中米W杯に向けても同様のトライは必要不可欠なのだ。
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カタール組がひしめく2列目は狭き門。パリ世代の鈴木はチャンス
そこでアタッカー陣の新戦力を考えてみると、2列目はカタールW杯の絶対的主力だった伊東純也(スタッド・ランス)を筆頭に、鎌田大地(フランクフルト)、三笘薫(ブライトン)、堂安、久保建英(レアル・ソシエダ)と欧州で実績を積み重ねる面々がズラリと並ぶため、新顔にとっては狭き門。オーストリアで13ゴールを挙げ、欧州市場で評価が急上昇している中村敬斗でさえも、ウルグアイ戦で後半44分からピッチに立つのが精一杯なのだ。
とはいえ中村が有力候補の1人なのは間違いない。勝負は今夏、新天地に赴いてからになるだろう。本人は「どうなるか分からない」と話していたが、欧州5大リーグに移籍して、そこでコンスタントに出場し、ゴール・アシストなどの目に見える数字を残せば、状況は一変する。これまでトウェンテ、シントトロイデン、ジュニアーズ、LASKと回り道してきた分、タフさと粘り強さがあるのは大きな魅力。今こそギラギラ感を押し出すべき時だ。
4月16日のアジャクシオ戦でフランスデビュー&初ゴールを挙げたパリ五輪世代のエース・鈴木唯人(ストラスブール)も、注目の存在だ。彼も2022年1月の日本代表国内組合宿に参加した経験があり、森保監督から熱視線を送られている。
「唯人はフランスではちょっと苦戦していますが、3月のU-22代表のドイツ・ベルギー戦では攻撃のいいアクセントになっていたと思います」と名指しで絶賛する21歳のアタッカーは同代表で10番を背負い、ベルギー戦でゴール。トップ下でチームをけん引していた。指揮官は2月の欧州視察時にわざわざストラスブールに足を延ばしてチェックしたほど、大きな期待を寄せている。
アジャクシオ戦の得点を見ても、右からドリブルで持ち込んで左足を一閃。豪快な一撃をお見舞いした形だったが、フィニッシュのパンチ力が彼のウリ。それを昨季の清水エスパルスではなかなか発揮できず、ゼ・リカルド監督には全くと言っていいほど使われなかったが、「先輩の乾(貴士)君からも『海外へ行けばいろんな監督がいる』と言われたけど、そこに適応していけるかが大事。去年の清水で外国人監督の下、試合に出られない経験をしたこともプラスに捉えています。サッカー選手をやっていれば、どこにいても出られる保証はないし、海外に行けばなおさら。それをしっかりと認識してやっていきたい」と、とにかく前向きだ。
鈴木唯人の代表定着も中村敬斗同様、去就次第という部分がある。ストラスブールに完全移籍できればいいが、そうならなかったとしても欧州に残ることが先決。「できるだけ高いレベルのリーグでプレーしてほしい」と多くの選手に要望する森保監督の信頼を勝ち取ろうと思うなら、やはり欧州5大リーグに残り、チャンスをつかむことが成功への近道。それを強く意識して今季終盤戦に挑んでほしい。
FW陣で抜け出しつつある上田綺世、パリ世代の細谷も急成長中
一方、FW陣の方は、大迫勇也(神戸)が離れて以来、大黒柱と言える存在がいない状態が続いていると見ていい。
「前で起点になれて、背後にも走れて、ゴール前に飛び出していける選手が現れるのを待ちたい」と指揮官もコメントしているが、誰が突き抜けるか非常に興味深いところだ。
目下、筆頭は今季初参戦のベルギー1部ですでに18ゴールを奪っている上田。「彼には才能があると思ったから、法政大学の頃から追っている」と指揮官も認めている。セルクル・ブルージュでも3月頭までは2シャドウの一角でプレーすることが多かったが、ここ最近は最前線に陣取る機会も多く、そのうえで結果も残している。「タメや起点を作る仕事には課題がある」という森保監督の注文に応えようと本人も必死に取り組んでいるのは確か。あとはその成果を発揮し、代表戦ノーゴールという壁を破ることができれば、目指すべきところが見えてきそうだ。
それ以外にも町野修斗(湘南)、サイド併用型の前田大然(セルティック)、浅野拓磨(ボーフム)らを森保監督は重用しているが、今後の成長株として存在感を高めているのがパリ世代の細谷真大(柏)。すでに2022年E-1選手権にも招集され、3月のU-22ドイツ戦でもゴールを挙げているが、最近のJリーグでの一挙手一投足は目を見張るものがある。
とりわけ、インパクトが大きかったのが、4月9日の鹿島アントラーズ戦。決勝点を奪った際の裏への抜け出しのタイミングや鋭さは一級品で、起点になる動きも非常に効いていた。ここまでボールを収められる選手は今の日本の若手にはそうそういないといっても過言ではなさそうだ。
3月の代表活動でパリ世代の半田陸(G大阪)をあえてA代表に招集するというトライをした森保監督だけに、6・9・10月のインターナショナルマッチデー(IMD)のいずれかで細谷や鈴木らを上のカテゴリーに入れる可能性もある。そこはU-22日本代表の大岩剛監督との調整になるが、ハイレベルの経験を積ませられるように仕向けてほしい。
彼ら以外にも、ドイツ5部から1部に飛躍するというシンデレラストーリーを地で行った上月壮一郎(シャルケ)、今季オランダ1部で4得点5アシストと絶好調の斉藤光毅(スパルタ・ロッテルダム)など2000年以降生まれのアタッカーが躍動している。そういう面々も含め、誰が出てくるか分からないという状況になれば、日本も多彩な陣容を揃えられる。この1年間で一気にブレイクする若手アタッカーが次々と出てくることを楽しみに待ちたいものである。
【この記事は、Yahoo!ニュース個人のテーマ支援記事です。オーサーが発案した記事テーマについて、一部執筆費用を負担しているものです。この活動は個人の発信者をサポート・応援する目的で行っています。】